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プロセッサの過去・現在・未来 ~プロセッサ界隈に新しい風~

2016年、ソフトバンクは英国企業ARMホールディングス(以降、ARM社)を買収し、その傘下に収めました。

巨額買収のARM

その年のArm TechConで孫正義社長がIoT時代の将来を展望しつつ、シンギュラリティを熱く語ったのはまだ記憶に新しいです。現在でこそIPベンダーやEDAツールベンダーなどのチップを作らない半導体業界企業は多々ありますが、ARM社がその決断をした時代では圧倒的な少数派だったのではないでしょうか。スマートフォン向けCPU市場では今でも寡占を続けている、ARM社について、私なりにその生い立ちをごく簡単にご紹介します。

ARM独自の成功ビジネスの確立

1978年12月に物理学者のHermann HauserとエンジニアのChris CurryはイギリスのケンブリッジでARMの前身であるCambridge Processing Unit社を設立し、翌年Acorn Computerに社名を変更しました。Acorn社はCPUの開発に注力し、1985年自社の初代32ビット、6MHzのCPUを開発しました。この製品はRISC(Reduced Instruction Set Computer)の概念に基づいて設計されたため、Acorn RISC Machineと呼ばれ、ARMと略され、後にモバイル向けCPUの王者へと成長していきました。1990年、Acorn社とApple社に加えてチップベンダーのVLSI社が共同出資を行い、Advanced RISC Machines Ltd.を設立しました。偶然か意図的か、ARMの略称はそのまま残す形となりました。ARM社のCPU命令セット自体はRISCベースで、高い技術力はあるが、革命的な意味を持つとは言い難いが、その反面、新会社が設立されてから下した、IPライセンスに特化し、チップを作らないというビジネスモデルの実現は革命的な意味を持った。半導体チップを作るのは、大変な労力と資金が必要な上に、それに伴うリスクも高いです。そのリスクを避けることで自社の専門分野に注力し、より優れた製品開発ができるようになったと考えられます。ARM社の成功の一因はこのビジネス判断にあり、その成功によりIPビジネスが注目され、ARMと同様にチップを作らないビジネスを目指す業界企業は後を絶ちません。この点において言うと、このビジネス判断は半導体業界のさらなる分業とエコシステムの再構築のきっかけになったと言っても過言ではありません。

ARMが掴んだ市場はモバイルデバイス

しかしながら、高い技術力がと斬新なビジネスモデルがあったにせよ、ARMはすぐに今日の地位を確立できたわけではありませんでした。ARMの大きな成功は21世紀に入って、様々なモバイル機器が現れてからのことでした。特に2007年の初代iPhone発売以来、スマートフォンを代表としてモバイルデバイスはCPUにおけるニーズは従来から普及しておりPCと異なっていたため、この分野でARM社はIntel社の弱点を突き、一気にシェアを拡大することができました。優れた技術、優れたビジネスモデル、加えて大きな時代背景がARMにとって、成功を手にするための三種の神器だったのではないでしょうか。

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