今どきのIoT考察

IoTはアイドルの新ビジネスを切り開くか!?(後編)

コンサートを盛り上げるサイリウム

皆さまはアイドルのライブコンサートに足を運んだことはあるだろうか。おそらく多くの人は実際に行ったことがなくても、テレビや動画などのメディアでコンサート会場の光景は見たことがあると思う。

ステージがよく見えるよう、照明が落とされたライブ会場。
その暗闇の客席一面に広がる、さまざまな色の光の海。
このカラフルな光を作り出しているのが、ケミカルライト(ファンは通常サイリウムという)である。

最近のトレンドではアイドルグループ、または各々のメンバーでイメージカラーが設定されており、ファンはお気に入りのメンバー(業界用語:推し、推しメン)のカラーサイリウムを振って、各々の推しメンを全力で応援する。

さまざまな色が焚かれている暗闇の会場…、それはもう幻想的な世界である。
サイリウムは会場のファンの一体感を高め、コンサートを盛り上げる必需品なのだ。

サイリウムは、過酸化水素水とシュウ酸化合物が混ざり合うことで化学反応を起こし、発光するという仕組みである。

通常スティック状のものが多く、スティック内にこの2つの液体が分離して入っており、軽く折って内部の筒を割ることで液体が混ざり合い発光する。

「手軽・安価・電源がいらない・鮮やかな発光」という便利なケミカルライトであるが、発光力が強い反面、10~15分程度しか持続しない。通常のライブコンサートは2時間程度のものが多く、コンサート最後まで使おうものなら何本も途中で持ち替えなければならないのが難点である。

サイリウムからペンライト(IoTデバイス)

こういったデメリットのあるサイリウムに代わり、昨今利用されつつあるのがペンライトである。
ペンライトにはLEDライトが搭載されており、乾電池数本で作動したり、USB充電できたりする。主流はボタンで色を切り替えられるペンライトで、先に説明した通り、それぞれの推しのイメージカラーへ簡単に変色できる。

最近ではそんなペンライトに、最新IoT技術が使われるようになってきている。
ペンライトに無線通信機能を搭載し、管理端末側でペンライトをコントロールできるというようなIoT技術だ。特定の客席ブロックだけを指定した色に変化させたり、映像やパフォーマンスに合わせて色変え・点消灯したりと、新たなステージの演出が施されている。
こうなればもう、ペンライトも「IoTデバイス」である。

また、あるアイドルのコンサートでは、衣装に心拍が計測できるセンサが取り付けられており、そのアイドルの心拍データを無線で管理端末に送信している。そのデータを元にペンライトの色を判断し、ファンのペンライトの色を変化させているのだ。
さらに、アイドルの心拍データと連動した振動を、ファンが所有しているスマートフォンにリアルタイムで送信し、さらにコンサートを盛り上げるような演出も出てきている…。

VRで臨場感のあるライブコンサートを体験

少し話は変わってしまうが、2015年に静岡のエコパスタジアムで開催された、『ももいろクローバーZ』のライブコンサートの映像が、VR映像として公開された。私はこのライブコンサートに実際に行っていたのだが、後日、新宿の家電量販店で見たVR映像のできに驚いた。本当によくできており、感動モノだった。

360度の全方位から、全身でライブを体感することができ、会場にいるのと変わらない感覚だった。さらに、ステージ最前の“神席”の視点もあり、アイドル本人たちから直接レスをもらえるような体感もできたのである(私の実際の席はスタンドで、良席ではなかった…)。

このようなVR映像をリアルタイムで配信することができれば、遠方の、それこそ海外のファンたちも気軽に、あたかも現地にいるような臨場感でライブコンサートに参加できるだろう。そして「IoTはアイドルの新ビジネスを切り開くか!?(前編)」で記述した、握手券と類似のビジネス展開もできるのではないか、と感じている。

エンターテインメントの世界でも、今までインターネットに接続できなかった、色々なモノがIoT化されている。今後、さまざまなデバイスがIoT化されれば、ライブコンサートも劇的に変化していくだろう。

ご存じのとおり、私たちの身近なところでもIoT化は進んでいる。エンターテインメントだけでなく、日常でも新しい世界がすぐ目の前まできているのだ。
私は、そのような未来、そして新しいコンサート演出の予感に心を躍らせている。