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ミリ秒待たない高品質H.264/H.265ビデオコーデック

富士ソフトが日本における販売店として取り扱っている、カナダ・オンタリオ州にあるSystem-On-Chip Technologies社(以下、SOC社と称します)の高品質H.264/H.265に対応したMPEG規格(形式)のコーデック製品群についてご紹介します。
H.264(MPEG-4 AVC)は、最も主流な動画コーデックであり、「低ビットレートでも高画質をキープする」という用途で作られたコーデックです。圧縮率の面から見ると、VP9、H.265/HEVC、AOMedia Video 1などに比べて劣っているものの、エンコード・デコードの速さや、互換性の高さ、中型のデバイスに搭載可能なコードサイズで実現できる、などに定評があるため、現在一番普及しているコーデックです。
H.265/HEVCは、H.264/MPEG-4 AVCの後継コーデックとして作られたコーデックで、「H.264」の半分のファイルサイズ(半分のビットレート)で、H.264と同等の画質を得られるコーデックで、すでにBS 4K/8K放送にも利用されています。再生の負荷は高くなりますが速度と画質から考えると、今後の主要コーデックとして期待できます。

1.SOC社について

SOC社は、公立大学のウィルフリッド ローリエ大学(WLU)の教授である、Dr. Shaowen Song氏が1995年に大学の研究室からスタートし、2005年に独立の研究所を立ち上げ、2008年に設立されました。現在の社員数は20名で、その他中国に5名の社員がいます。Song氏は今でも同大学の教授として、週2日、専門のコンピュータサイエンスの授業を持ち、175名の生徒に教えています。
SOC社は、MPEG規格のコーデック技術をFPGAに特化して実装し、MPEG2、H.264AVC、そして最新規格のH.265HEVCのコーデック(エンコーダ、デコーダ、トランスコーディング)に対応しており、そのコーデック技術は日本を含む世界中の22カ国にお客様のクリティカルで要求の厳しいビデオベースのアプリケーションで利用され信頼を得ています。

2.SOC社製品の特長

SOC社のコーデック製品の特長は、ビデオ品質を犠牲にすることなく、超低遅延、小フットプリント、および低消費電力を実現している点です。そして、FPGAの特長である「後からでも回路の書き換えが可能なロジック・デバイス」によって、マルチストリーム対応、複数コーデックの実装など、様々なお客様の要求を柔軟に対応することが可能です。SOC社の製品の特長これらを実現できるのは、FPGAの特長だけでなく、FPGAに特化したコーデックとしてデザインされていること、そして他のデバイスのための無駄なコードを持っていないことも理由としてあります。以下、SOC社のコーデック製品の種類を紹介します。

3. SOC社コーデック製品の種類

SOC社コーデックは、お客様のニーズによって4種類の製品、IPCores、Chipsets、ModulesそしてEvaluation Kitを提供しています。これらの製品は、同じコーデックIP技術を使っていますが、お客様の使用目的とハードウェア、FPGAの開発経験の有無によって、以下のような製品群から選択可能です。

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IPCores

IPCores製品は、リアルタイムでビデオをエンコーディング、デコーディング、トランスコーディングする高性能なH.264 IPCores、H.265 IPCores、およびMPEG-2 IP Coresを提供します。これらは、低遅延、低消費電力、および小規模なシリコンフットプリントを実現し、プロセッサを使用せずに高度に並列な全ハードウェアアーキテクチャで構築されています。IPCoresは暗号化されたNetListで提供され、デザインの柔軟性を最大限に高め、ミッドレンジのIntel社およびXilinx社の FPGAもしくはARM搭載のFPGAに適しています。
以下にIPCoresの特長を記します。

①高画質の実現

ビデオ品質に重点を置いて設計されたSOC社のMPEG規格コーデックIPコアは、幅広い品質、レイテンシ、パフォーマンスベンチマークを使用して厳しくテストしています。

②低遅延の実現

SOC社の全ハードウェアアーキテクチャは、クロックサイクルごとに多数のステージを並列に実行するため、ゼロ遅延のCapture to Display Latency(CDL)、キャプチャーtoディスプレイソリューションが可能になります。SOC社の0.25msのレイテンシはとても低く、プロセッサベースおよびDSPベースのコーデック技術に比べて優れています。

③省電力の実現

省電力の実現は、太陽光/遠隔監視、ポータブルHD映画撮影、FPV無人機/車両制御などのワイヤレスアプリケーションのバッテリ寿命を延ばすことができます。またはクラウドビデオ処理操作の電力コストを大幅に節約できます。

④少ないフットプリントの実現

IPCoresは、中規模のIntel社やXilinx社のFPGAおよびSoC(ARMコア搭載FPGA)をターゲットに設計されています。リソースが制約されたシステムのロジックリソース使用率をさらに低減するSlimバージョンというIPCoresを提供可能です。

⑤APIレジスタによるリアルタイム設定の実現

img02エンコードパイプラインの実行時パラメータを制御する200以上のAPIレジスタにアクセスできます。プロファイル設定、ビットレート(bps)、ピクチャグループ(GOP)、H.264/H.265規格固有の設定など、エンコーダエンジンを非常に細かく調整することが可能です。

Chipsets

SOC社は、ChipsetsというMPEG規格コーデック(エンコーダ、デコーダ、トランスコーダ)を提供しています。これは、SOC社が持つMPEG規格に準拠したH.264、H.265およびMPEG-2ビデオエンコーダおよびデコーダIPを特定のFPGAのプレインテグレーションしたASICライクな製品としてPCB上に配置可能な製品です。このMPEG規格コーデックChipsetsは、AACやMPEG2 Layer-2をサポートすることも可能です。

①容易なインテグレーション

Chipsetsは、従来のASICと同じように機能するように設計され、ピンを接続してユーザPCBに容易に統合できる、完全にプレインテグレーションされたFPGA向けのビットストリームを提供します。

②柔軟性とアップグレード可能

ChipsetsのI / Oインターフェースは、ほぼすべてのお客様の仕様に合わせてカスタマイズすることが可能で、最も柔軟性の高いコーデック搭載のChipsetsになります。お客様のシステムが非標準I / Oインターフェースを必要とする場合に特に便利です。従来のASICとは異なり、Chipsetsのファームウェアは、必要に応じてその機能またはI / Oインターフェースを変更、更新することが可能です。

③高いパフォーマンス

img03Chipsetsは、SOC社の超高性能コーデックIPと周辺IPコアのポートフォリオを使用して構築されています。高品質、高速、低レイテンシ、および低消費電力を期待できます。
(以下、Chipsetsのエンコーダとデコーダのイメージになります。)

Modules

SOC社のコーデックModules製品は、SOC社のエンコーダ、デコーダ、トランスコーダIPをプレインテグレーションしたFPGA(またはARM搭載のFPGA)とSPIフラッシュを備えた小型システムオンモジュール(SOM)になります。Modulesの主な利点は、DDRメモリとオーディオコーデック機能が組み込まれていることです。

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Modules上記のModulesは、204ピンSODIMMソケット(Parts:2013310-1)のインターフェースを持っており、インテグレーションのためにピン配置テーブルとインターフェースガイドを提供します。お客様がボードを開発する場合は、以下のように取り付けするイメージでボードを開発していただくことになります。

①Modulesの種類

モジュールの種類は、以下の図のように、現在4種類存在します。(H.265 Docoderは、2018年9月に発表予定です。)

エンコーダモジュールに関しては、マルチチャネルに対応しており、総ピクセルレートがレート制限(Encoder max.)を超えない限り、複数のチャンネルを処理することが可能です。

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②拡張性とカスタマイズ性

SOC社は、FPGA /SPI Flashのリコンフィグレーションを可能にするJTAGインターフェースを公開しており、Modulesをファームウェアでアップグレード、変更、カスタマイズすることができます。Modulesに搭載のEEPROMとのセキュリティハンドシェイクにより、未ライセンスのボード上にあるIPの動作をプロテクトすることが可能です。

Evaluation Kit

SOC社の評価キット(Evaluation Kit)は、最もシンプルな方法でSOC社のコーデック技術を提供します。Evaluation Kitは、コーデックIPの品質/機能の評価、製品デモンストレーション、製品開発の評価に使用できます。このキットには、コーデックエンジンを搭載したModule、すべての必要なI / Oポートを備えたキャリアボード、およびボードを使うために必要なすべてのケーブルとドキュメントが含まれています。
(以下、H.264エンコーダとデコーダのEvaluation Kitの概要図、ボード写真になります。)

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Other IP

img08SOC社は、IPCores、Chipsets、ModulesおよびEvaluation Kitの開発とともに、コーデックシステムの機能とインターフェース機能を拡張する一連の高性能なサポートIPコアを提供します。
コーデックIPCoresは、ネットワークを介して他のデバイスにデータを送信できるようにするために、通常、ネットワーク用IPなどとともに使用されます。場合によっては、ネットワークやその他の要件を満たすために、ビデオデータを異なる解像度にリスケーリングしたり、トランスポートストリームに変換したりするIPを提供可能です。
(以下、ネットワークIPの概要図になります。)

4. SOC社製品の製品分野

SOC社のコーデック製品は、多様な分野で利用されています。
・Professional Broadcasting (プロ用放送機器)
・Cloud Video Hosting (クラウド映像ホスティング)
・Aeronautics (航空機)
・Defense (防衛)
・Digital Cinema (デジタル映画)
・OTT (Over The Top)
・Automotive (自動車)
・Surveillance Camera (監視カメラ)
・Medical(医療)
・Gaming(ゲーム)
特に監視カメラ、OTT、クラウド映像ホスティング、航空機(ドローンなど含む)での利用が大幅に増えています。また、解像度も4K、8Kへの対応もしており、今後の高速無線技術での利用が期待されています。

5.最後に

FPGAのニーズの増大に伴う大量生産により、今日のFPGAは、新しい10nmシリコンクラスなどのコンピュータCPUに使用される最新のシリコンテクノロジを使用して製造されています。その結果、FPGAベースのSOC社のコーデック技術は、ASICでのMPG規格コーデックと比べても、パフォーマンス、特に消費電力、スピード、およびコストの面で優れています。

System-On-Chip Technologies社製品の詳細はこちら
https://www.fsi-embedded.jp/product/system-on-chip/

※動画コーデックには、
「AOMedia Video 1」「H.264/MPEG-4 AVC」「Xvid」「Divx」「VP9」「MPEG-1」「MPEG-2」「MPEG-4」「H.265/HEVC」「WMV9」「Motion JPEG」「DV」「可逆圧縮系コーデック」があります。これらの動画コーデックは、ファイルフォーマット(拡張子)、画質、ファイルサイズで比較することができます。

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