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IoTは製造業の要!スマート工場実現のための基礎のキソ

ものづくり大国・日本では今、多くの製造業が生き残りをかけ、IoTを導入したスマート工場の実現を図っています。スマート工場なしに製造業の未来はない…といっても言い過ぎではないのかもしれません。

ものづくり大国・日本では今、多くの製造業が生き残りをかけ、IoTを導入したスマート工場の実現を図っています。スマート工場なしに製造業の未来はない…といっても言い過ぎではないのかもしれません。これからの時代、生存競争に乗り遅れないためには、IoTの上手な活用が必須となるでしょう。というわけで今回は、IoTの導入に乗り気な方もそうでない方も、とりあえず知って損はない基礎中の基礎知識を紹介してみたいと思います。

IoT=“スマート”であること!?

スマートフォン、スマート家電、スマートウォッチ、スマートハウスなど、私たちが何気なく「スマート」と呼んでいる製品たち。これらには、IoT(モノのインターネット)、つまり「インターネットを介して高度な機能を提供するモノ」という共通点があります。一見難しそうに思えるIoTですが、実はずいぶん前から身近な存在になっているのです。
スマート工場も、IoTを活かした仕組みを持つモノのひとつ。その存在意義は、IoTによって工場内に自律的なシステムをつくり、生産効率の向上を実現することにあります。

IoT導入に際して知っておきたいスマート工場の定義と製造業におけるメリット

スマート工場に欠かせないのが、CPS(サイバーフィジカルシステム)の構築です。CPSとは、現実(フィジカル)空間にあるビッグデータをセンサーネットワークから収集し、仮想(サイバー)空間で分析・解析したものを知見に変えて、今後のサービスやソリューションに役立てていく一連のシステムのことです。スマート工場とは、CPSを構築し、こうした生産システムの最適化・自律化を実現した製造現場のことをいいます。工場のスマート化は人的コストの削減や、課題の抽出・稼働状況の管理・異常時に備えた保全の効率化をはじめ、製造だけに止まらないソリューションサービスの提供にもつながっていて、製造業に「新たな利益の創出」というメリットをもたらしました。

ドイツのインダストリー4.0(第4次産業革命)以降、ドイツと国家レベルの協力関係を結んでいる日本でも、あとを追うように2015年8月、「新産業構造ビジョン」の策定に向けての検討が進められ、製造工場のスマート化が広がってきました。しかし、コスト問題や理解不足などから、思うようにIoTの導入が進まない現場も少なくありません。一方で、蓄積されたノウハウやアイデアを駆使して、少ないコストでIoTによるスマート工場化を実現し、大成功をおさめた事例もあります。中小製造業のIoT導入事例については、「IoTは低価格でできる。中小企業で始まるIoTへの取り組み。」に詳しく書いてあります。

IoT導入でスマート工場を実現した製造業の事例

では実際に、製造を営む企業はどのような形でスマート工場を実現し、どのように競争力を高めたのでしょうか。経済産業省が2017年3月にまとめた『中小ものづくり企業IoT等活用事例集』から、いくつかの事例を見てみましょう

事例1:新たな生産管理システムの考案 – 株式会社三友製作所(茨城県常陸太田市)

●企業概要
医療用分析機器関連製品の製造、電子顕微鏡関連の付属品の製造、半導体故障解析用ツールの製造

●課題
他社に先駆け、3DCADの活用に取り組んできた同社では、設計の際には当たり前のように3DCADを使用しています。しかし、一方の生産現場では新たな取り組みを久しく行っておらず、競合他社との競争を勝ち抜くための打開策として、生産設備のIoT化に踏み切りました。

●具体的な解決策
まず、工場に設置された生産設備をネットワークに接続し、稼働状況を可視化(見える化)できるような仕組みを構築しました。稼働状況の把握は、工場の中だけでなく、遠隔地にいてもパソコン上で確認することができるものです。また、工作機械などから得られた蓄積データを分析することで、加工計画の作成や予実比較、稼働日報の出力ができる機能や、管理側のPCから機械に対して必要なデータを送信する機能も搭載しました。

●効果
遠隔地にいても工場の稼働状況が把握できるようになったことで、各工場に対しての業務の振り分けなどがスムーズに行えるようになりました。また、これまで見えていなかった現場の問題点が一目瞭然となり、改善活動に役立てることができました。結果、約25%も設備の稼働状況を向上させています。

事例2:ネットワークの活用で生産量1.5倍に – 株式会社土屋合成(群馬県富岡市)

●企業概要
ボールペン等文房具、自動車部品、時計や事務機器等部品のプラスチック成形の受託製造

●課題
同社では単価の安い製品を製造しているため、効率的な大量生産で売り上げを拡大する必要がありました。そのため、工場を24時間365日稼働させていましたが、少人数の企業であることもあり、夜間や休日に人員を割けず、管理業務やトラブル回避が大きな負担となっていました。

●具体的な解決策
IoTを活用して、混在する複数メーカーの成形機全49台の稼働状況のデータを取得し、管理用のPCで稼働状況(正常に稼働しているのか停止しているのかなど)を一覧表示できる仕組みを構築。この仕組みには、トラブルの有無をすばやく把握する機能も搭載しました。また、工場や事務所に40台ものネットワークカメラを設置。工場のどこにいても、トラブルが発生した成形機をタブレットやスマートフォンで確認できるシステムも構築しました。

●効果
人員の少ない夜間や休日でも、ネットワークカメラを通じての機械の状況把握や稼働データの取得が可能になりました。結果、人員を増やすことなく、より多くの成形機を稼働させることができ、生産量1.5倍増を実現しました。

事例3:自社ニーズにマッチしたIoTシステムを独自に開発 -長島鋳物株式会社(埼玉県川口市)

●企業概要
昭和20年創業、国内唯一のマンホール蓋専業メーカー。

●課題
マンホールの蓋は、一品一品の仕様が異なる特性を持っているため、同社では多品種少量生産の方式を採っています。そのために欠かせないのが、熟練技術者の経験と勘。課題は、その経験知やノウハウをいかに継承していくかと、マンホール蓋を製造する際に必要な多種多様な金型の管理作業に費用と労力がかかり過ぎていたことでした。

●具体的な解決策
電気関係の資格を持つ社員や、IT関連企業に在籍していたことのある社員など、IT・IoTに精通した人材がヒアリングを行い、現場のニーズを把握。必要とする機能だけに絞り込み、ニーズに特化したシンプルなIoTシステムを自社開発することに踏み切りました。PLC(プログラマブルロジックコントローラ)から各生産設備などのデータを取得し、生産管理上の情報と紐づけることで一元管理できる仕組みを開発。モバイル端末や大型ディスプレイなどで生産履歴や注文状況、機械の稼働状況がリアルタイムで把握が可能に。さらに、人力で行われていた各種入力も自動化することに成功しました。

●効果
独自開発した仕組みのおかげで、注文から製造がダイレクトにつながり、タイムロスや作業員の負荷を軽減することができました。具体的には、これまで作業後に手入力を行なっていた生産数などの情報を自動化したことで、労働環境が改善されたなどです。また、これまでは人手で行なっていた電気炉の温度測定は、危険なため頻繁に行うことができませんでした。それが、遠隔から、しかもリアルタイムに温度監視できるようになったため、各工程の状況に応じた細かな温度設定が可能になりました。そのため、無駄な電気代の削減や、電気炉を過度に高温に保つ必要がなくなり、炉にかかる負担や損傷も減らすことができました。
さらに、蓄積したデータを分析することで、「この製品ならこの温度で製造するべき」といったような熟練作業者の経験知を導けるようになり、たとえ製造を自動化しても安定的に製品の品質維持ができています。

これらのほかにも、IoTの導入によって成果を上げた企業は少なくありません。特にものづくりの現場ほど、IoTがもたらす変化が大きく表れやすい傾向にあります。

「いざ、スマート工場!」の前に、何が必要か

それでは、スマート工場の実現に向け、一歩踏み出そうと奮起された方のために、スマート工場に必要なコト・モノについて基本的なところを整理しておきましょう。
インダストリー4.0の中核となるスマート工場を実現するためには、前提としてICTシステムが欠かせません。ICTシステムとは、情報通信技術を活用したシステムのことで、現代の工場ではさかんに構築が進んでいます。
といっても、従来型の工場にすでに備わっているICTシステム(「ERP」「MES」「PLC」)では十分ではありません。以前からあるICTシステムというのは、生産管理や経理など、企業にとって不可欠な業務を効率化するシステム「ERP」、製造の現場で作業管理を行うためのシステム「MES」、そして、ベルトコンベアのような自動機器の制御などに使われる装置「PLC(商品名であるシーケンサと呼ばれることが多い)」が代表的です。
これらに加え、スマート工場には「無線ネットワークによって必要な情報をリアルタイム送信できる製造機器(←IoTによって実現)」、「その製造機器から送り込まれるビッグデータを蓄積・分析できるサーバー」、そして「人工知能(AI)」という新たな機能を持つ必要があります。

■スマート工場に必要な仕組み

まず、スマート工場とは、次の3つの仕組み(概念)を備えた製造現場のことです。

①見える化
IoTの意義は、集約されたデータを分析し、知見として役立てることです。そのためには、分析されたビッグデータを数値やグラフで表し、状況や状態を視覚化する必要があります。

②制御
①によって得られた結果をもとに、モノがより効率的な動作をするための制御を行います。

③自動化
AI(人工知能)によって制御そのものを自動化し、システムが自律的に効率化を行えるようにします。

■スマート工場に必要な設備・環境

さらに、上記のような仕組みを構築するためには、次のような設備・環境が必要です。

・モノ
当然のことながら、IoTの始まりとなる「モノ」、つまりデータの発信源が必要です。工場の場合、センサーを取りつけた機械・設備などがこれにあたります。センサーは、気温・温度・湿度・気圧・明るさ・傾き・速度…などあらゆる情報を感知し、リアルタイムに発信します。

・ネットワーク網
モノやセンサーから発信されたデータは、有線または無線の通信網を経由します。データが多くなればなるほど、ネットワーク回線上でスムーズにさばく技術が求められます。

・クラウド
モノからネットワークを通じて収集されたデータは、仮想化されたハード領域であるクラウドに集約されます。データを円滑に処理するためには、クラウドは高度な処理技術や分散処理技術を持っている必要があります。

・IoTプラットフォーム
リアルタイムで収集されたビッグデータを円滑に処理する基盤は、IoTプラットフォームと呼ばれています。このプラットフォームは、多くのITベンダーやIoTサービス提供者によって開発され、提供されています。

・人工知能
IoTでは、膨大なデータをリアルタイムに“自動分析”し、そこから得られた結果をモノあるいは人間にリアルタイムに“返す”必要があります。これをプラットフォーム上で忠実に行えるのが、人工知能に代表されるアナリティクス・ソフトウェアです。ビッグデータを機械的に分析・学習・判断・最適化制御することが求められるIoT時代に、人工知能は不可欠といえるでしょう。

あのGEですら採用!IoT導入の勝敗を分ける「業務提携」

とはいえ、こうしたIoTシステム一式をすべて自前で揃えよう、と言いたいわけではありません。というより、そのようなことは不可能と言ってもいいでしょう。
あの有名なアメリカのコングロマリット企業であるゼネラルエレクトリック社(以下GE)ですら、IoTシステム構築には業務提携を採用しているのですから。

たとえば、GEが主催する高速ネットワークの実証実験では、以下のような分業が行われています。
・広域分散したインフラ設備(モノ)→GEが担当
・ネットワーク→シスコが担当
・ビッグデータのリアルタイム処理および自動制御→アクセンチュアが担当

自前にこだわりすぎて中途半端なシステム構築になってしまうと、リスクが大きくなる可能性があります。自社の強みを発揮できる箇所はどこか、他社と協業すべき点はどこか、などを見極め、柔軟な思考で投資戦略を立てることもIoT導入の勝敗を決める重要ポイントのひとつではないでしょうか。

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