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解像力向上化システムの使いみち #2 ~4K時代の要請に答える~

第1回目のコラム「解像力向上化システムの使いみち #1 ~特性と効果~」では、解像力向上化技術SPIDERの特徴と効果の概要を説明しました。本稿では、解像力向上化技術が期待される実際の現場に沿って、具体的なアプリケーションについて述べていきたいと思います。

前回でも述べましたが、解像力向上化技術SPIDERの特徴を一言でいうと、映像を「くっきり」「はっきり」させる技術です。様々な理由で低下した解像力を、SPIDERが取り戻します。解像力とは、写真撮影において、被写体の鮮明な像を再現できるレンズ・フィルム・イメージセンサーなどの総合的な能力を示す指標です。

映像を扱う市場の変化

解像力向上を必要とする分野は様々ですが、我々がこの技術をシステム化に採用したのは、映像を扱う市場の変化が背景にあります。
映像系の展示会などに行くと、もはや4Kは当たり前、一部の放送局や映像機器メーカーでは8K技術のPRもはじまっています。しかし、実際の我々の家庭では、ようやく4Kテレビが普及価格になりましたが、4K放送も4Kコンテンツもまだほとんど見る機会がありません。
また、今年(2019年)は、世界中で華々しく5G通信が開始されていますが、日本ではさほど盛り上がっていません。国内の通信行政の問題、通信キャリアの方針、シェアNo.1のスマートフォンメーカーが未採用など様々な理由がありますが、5Gを積極的に採用するメリットをユーザーにアピールできないという問題もあります。論理上の通信速度はLTEの10倍とうたえますが、実際はシステム容量の関係で、3Gや4Gの時のように体感的な通信速度が劇的に上がるわけではないからです。

映像市場共通の課題

このように、技術の進化と普及のギャップがある背景には、映像市場共通の課題があります。
カメラは放送機器からスマートフォンまで高解像度化し、家庭用ディスプレイは4Kが標準となりましたが、それに耐えうる容量の伝送路が実現できていません。インターネットの大容量化は進んでいますが、地上波・BS・ケーブルテレビといった放送網や、5G通信の普及はまだまだ先です。
さらに、問題は肝心のコンテンツが圧倒的に不足しているということです。新規に撮影・制作されるコンテンツは当然4K画質以上となっていますが、放送・配信される大多数は過去に撮影・制作された映像なのです。そして、需要のある過去の映像はHDどころかSDが相当な割合をしめるのが現実です。

これらの問題を、我々は解像力向上化技術SPIDERを使った映像処理システムを使って解決してきたいと考えています。

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これらの問題を、解像力向上化技術SPIDERを使ってどのように解決できるのかを見ていきましょう。

SPIDERによるデータ量・帯域削減効果

É}2まずは、データ容量の肥大化とネットワーク帯域不足についてです。
SPIDERによる解像力向上化処理は、映像を「くっきり」「はっきり」させる技術で、様々な理由で低下した解像力を取り戻すことができると述べました。SPIDERの解像力向上処理は、何らかの理由で劣化した解像力に対して有効に働きます。これを図示すると以下のようなイメージになります。

É}3映像の劣化は、記録してデータ化する場合だけでなく、データを小さくするためにエンコードする際にも発生します。当然、SPIDERはこの場合でも、できるだけ元の解像感に近づけることができます。

では、エンコードする前にSPIDERで解像力を向上させるとどうなるのでしょうか。
エンコード前にSPIDERによって向上させた解像力からエンコードされるので、元の映像から見ると、解像力の低下は最小限に抑えられます。つまり、エンコードする前にSPIDERを用いることで、エンコード時の劣化を抑制することになります。

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ここから、さらにもう一手。SPIDERで前処理したエンコードは、SPIDERを使用しないエンコードに比べて解像力は高いですが、これは同一の圧縮率での比較です。
エンコードの圧縮率を上げると、解像力も下がります。これはSPIDERを使用しても同じです。ただし、SPIDERによる事前の解像力向上が行われているので、その分は劣化が抑えられます。
SPIDERを使用しない場合と同等の解像感を目指した場合は、SPIDERを使用した場合の圧縮率のほうが大きくすることが可能です。言い換えると、SPIDERによって、より高い圧縮率(低いビットレート)を実現することができるのです。

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これは、例えば映像伝送に20Mbpsの帯域が必要だったのが、10Mbpsに抑えられるという意味です(帯域の削減率は、映像の解像度や内容、コーデックの種類によって異なります)。この効果は、同じ帯域でも2つの映像を流すことができるようになる、とも言えます。
また、10Mbpsの帯域の通信網に、もともとは20Mbpsのデータを流すことができるという意味でもあります。前者はマルチストリーム配信、後者はHD向けに構築された配信網に4K映像を流すなど、放送・配信業界の現在の課題に強く請求できるものと考えています。

このように、SPIDERによる解像力向上化処理は、高画質化した映像市場の伝送帯域不足という課題を解決する1手段となりえるものなのです。

紙面が尽きてまいりましたので、もう一つの課題であるコンテンツの不足については、次回にお話します。

関連製品:
解像力向上化技術「SPIDER

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