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当たり前の携帯電話。実はこんな歴史があったことを知っていますか?~コーデック技術の遷移~

このコラムでは現代では学生から大人までひとり1つは持っている携帯電話・スマートフォンにおけるビデオコーデックについて語っていきます。

まずは序章として、ビデオコーデックの話題から脱線し、日本企業の技術とサービスがどれだけ世界の携帯ビジネスに多大な影響を与えてきたか、さらにはどのような過程で携帯電話(モバイル端末)での映像コンテンツが扱えるようになっていったかを、私自身が携帯電話・スマートフォンのソフトウェア開発で関わっていた当時を思い出しながらお話していきます。

私が携帯電話関連のソフトウェア開発に関わり始めたのは、英国ロンドン駐在を終えた2001年頃になります。ちょうど、日本で3Gサービスが始まった時期であるのと同時に、この前後に日本の携帯電話史上において世界初と言える技術革命が2つあったと思っています。

1つ目が、NTTドコモ社によるiモードの開始です。1999年にインターネットメールやインターネットブラウジングを可能にしたサービスとして始まりました。このサービスによって今では当たり前のものとして生活やビジネスに組み込まれているアプリケーションや、PCとのメール送受信がパケット通信料のみで実現できるようになりました。(それ以前のメッセージ機能といえば、送受信に一定の費用がかかり、なおかつ同じ通信キャリア間でしかやりとりできませんでした。)
その当時の携帯電話は、モノクロ画面、LCD画面はQCIF(横176x縦144 pxs)サイズ程度で、CPUも16~32ビット100~200MHz程度のRISC(Reduced Instruction Set Computer)と呼ばれるアーキテクチャーのCPUでした。このようなハードウェア資源の中、インターネットがCompact HTML(cHTML)という記述言語(マークアップ言語)によってブラウジングを実現させ、JAVAというプログラミング言語の中の携帯端末向けのJava platform, Micro Editionによって、天気予報やネットバンキングなどの生活用のアプリケーションやゲームが提供されるようになったおかげで急激にアプリケーション数も増えていきました。通信キャリアが端末ユーザ向けに自社のアプリケーションの提供だけでなく、外部アプリケーション作成者(会社)のコンテンツを提供し、代わって代金を回収するビジネスを成立させたことで、コンテンツベンダーと呼ばれる開発会社が出現し、新しいITビジネスが始まりました。

2つ目は端末の画面カラー化とカメラの搭載です。2000年に初めてカメラ付き携帯電話がシャープ社より発売されました。そして、当時のJ-フォン社(現:ソフトバンク社)が実現した「写メール」と呼ばれたサービスは、今までのテキストだけのコミュニケーションに対して画期的な変化をユーザに与え大ヒットとなりました。これは、現在の携帯電話・スマートフォンにカメラがほぼ標準搭載されるきっかけとなり、そしてSNSが出現する環境が構築されたきっかけでもあったと思っています。

これらサービスの実現は、通信キャリア主導の技術によるもので、共に通信キャリアが推進したことで、世界初のビジネス展開ができたものでした。2001年海外では、WAP(Wireless Application Protocol)という技術規格上にWMLというマークアップ言語によって情報閲覧を実現していましたが、日本の通信キャリアの努力によって日本の携帯電話の技術およびサービスが一歩先行していたと感じていました。事実、当時は欧米の通信キャリアがパケット通信と写メール両方のサービスを取り入れようと日本の携帯電話サービスに注目し、同様なサービス展開を開始したキャリアが存在しました。
(その当時、国際iモードという欧米や台湾でのサービスの実現や、VodafoneによるJ-フォンの買収などがありました。)

3Gのサービスが本格的になると、インターネットブラウザの用途も変化していきます。携帯電話のLCD画面のカラー化と大画面化(QVGA)や、搭載のCPUの性能が飛躍的にアップしたことで携帯電話端末が進化していきました。その結果、PCと同じHTMLで記述されたWebサイトにもアクセスできるようになり、Webサイトの制作側も携帯端末向けのコンテンツ制作を行うなど、様々な表現ができるようになりました。そしてアプリケーションもJAVAで作成できるアプリケーションのサイズが拡大し、携帯ゲーム機に匹敵するゲームアプリケーションの動作は可能となり、生活やビジネス向けのアプリケーションにも機能が増えていきどんどん変化が起きました。

このような進歩により、画像や音声の保存だけでなく、映像を携帯電話で再生・記録できるようになりました。1997年にReal Networks社がストリーミングビデオ技術となったRealVideoをリリースしました。日本の3Gへの移行は世界的に見ても早いもので、更に端末の性能が進歩したこともあり、RealVideoなどの技術を使った映像配信サービスを携帯電話で実現、搭載する動きがはじまり、様々なストリーミング技術の検討や実装が行われるようになりました。そして日本における携帯電話の通信網が3GからLTEとなり、WiFiも普及したことによって、通信キャリア主導のビジネスから、米国企業主導のビジネス(GAFA)に移行することになります。その中で、重要な役割を果たしたのは、スマートフォン、SNS、そして映像音声配信の実現であり、ビデオコーデックはそれらと強くかかわりを持ち、進化を遂げてきました。

続く

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