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技術コラム_組み込み向けビデオコーデックの遷移(製造業)

2020年は、新型コロナウィルス、その影響による緊急事態宣言により、日本企業のテレワークが進みました。日本は、海外と違い、日本国憲法上、国家緊急権が規定されていないことなどから、厳格なロックダウンが実施できないのですが、オフィスや工場に出勤して業務するスタイルからの改革が必要な状態になっていると感じています。

製造業は、IT技術の普及により、以前より監視カメラシステムやマシンビジョンを導入が進んでいます。マシンビジョンとは、ソフトウェアとカメラやそれらを制御するボードなどハードウェアとソフトウェア、ネットワークを組み合わせた製造業や他の産業分野にも適用可能なソリューションを言います。これには映像や画像をカメラからの入力データをボードにて処理を行い、各種機器を動作することを可能にします。これらは、工場の自動化、無人化、省人化に利用が始まっており、今後更に普及すると思われます。その技術を推進には、コーデック技術と5Gの普及が重要と思っています。

1.コーデック技術
コーデック技術は、以前のコラムにも記載しましたが、主にMPEG規格のMPEG2/H.264 AVC/H.265 HEVCと、AV1(AOMedia Video 1)1、JPEG規格(JPEG2000など)があります。
話は本題からそれますが、AV1の歴史について少し私の経験を含めた話をしたいと思います。AV1ビデオコーデックは、元々On2テクノロジー社(On2社)が開発したVP8ビデオコーデックをGoogle社がOn2社を買収後にリリースしたVP9をベースになっています。On2社の前身は、Duck Corporationいう会社で、前回のコラムにも記した家庭用ビデオゲーム機のSEGA SATURNやDreamcastで使用されていたTrueMotionというビデオコーデックを開発していました。当時のビデオゲーム機のCPUは、SEGA SATURNはSH2、DreamcastはSH4)という現在では小中規模CPUに該当するものになっていますが、これらのCPU上でTrueMotionのデコーダエンジンが動作していました。
MPEG規格の技術も、SEGA SATURNではMPEG1系デコーダ、DreamcastではMPEG2系デコーダエンジンが動作していました。解像度は、当時のTVの規格であるNTSC(480i)やPAL(576i)でしたが、その当時ではゲームのアドバタイズ映像2や映像ベースのゲームに利用されるなど、2つの技術は家庭用ビデオゲームに無くてはならない技術でした。


1AV1(AOMedia Video 1)は、インターネット上での動画配信を目的として非営利団体のAlliance for Open Mediaが開発したオープンかつロイヤリティフリーな動画圧縮コーデックである。(Wikipediaより引用)
CD-ROMなどの光メディアのゲームソフトの場合、ゲームプログラムをロードするのに時間がかかるので、その待ち時間に流すビデオ映像


話を戻すと、MPEG規格は、MPEG2→H.264 AVC→H.265 HEVCと進化しています。MPEG2は、その前の規格、MPEGで元々メディア・ストレージからの再生で利用されていたものが、MPEG2となりTransport Stream(TS)という映像や音声、文字などのプログラムをまとめて1つの流れとして扱うことを可能としてリアルタイムに映像を配信できるフォーマットが現れました。これは地上波デジタル放送で利用されている技術ですが、H.264 AVCになると4K解像度の映像を扱えるようになり、そして、H.265になると8K解像度の映像が扱えるように高圧縮できるようになりました。
右下の図は、同じ映像品質を非圧縮データと比べてどのくらいの映像量に削減できるかを示したものです。高圧縮できることで、ネットワークで配信するデータ量を削減することや、ストレージに保存するデータ量を削減することが可能です。
一方、その圧縮するためのプログラムのコード量は、H.264はMPEG2と比べると1.2倍程度ですが、H.265になるとH.264の1.8倍程度増えることとなり、使用するCPUやFPGAの集積などの能力を増やすこととなります。

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図1:2K、4K、8Kの各映像の比較 出典:総務省

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図2:MPEG-2、H.264、H.265の圧縮率の比較

製造業の場合、監視カメラシステムおよびマシンビジョンに求められる要件として、リアルタイム性、低コスト、高温度にならない、常に安定した性能が保てること、使用する半導体を長期間手配できること、があげられます。H.265 HEVCは確かに高圧縮できますが、H.264と比べてもハードウェア要件が大幅に増えることから、どのビデオコーデックを使うかは上記の要件も含めて検討すべきかと思われます。

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2. 5Gについて
製造業に影響を与えるものとして5Gの整備があります。5Gは以下の図のように社会的なインパクトを与える超低遅延と多数同時接続の実現によって、例えば工場内に専用の5G網(ローカル5G)を構築する大容量でかつ超低遅延のネットワークを構築することが可能となります。

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図3:(総務省)新世代モバイル通信システム委員会 における5G技術的条件に関する検討状況

3. まとめ
以上のことから、コーデック技術と5Gは製造業の自動化・無人化・省人化に大きな影響が与えると思われます。そして、製造業においては製造コストと長期間の同じ半導体の供給が必要であり、それに合わせたコーデック技術の選択が必要です。例えば、リアルタイム性が必要なコーデック技術は、H.264を利用し、データを貯蔵する場合にH.264からH.265へトランスコーディングして高圧縮データとして保存するなどの手法も検討すべきことではないかと思っております。

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