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組み込み向けビデオコーデック技術~携帯端末における過去・現在・未来~

2019年10月、携帯電話の3Gにおけるデータ通信技術とビジネスを切り開いたNTTドコモの「FOMA」「iモード」のサービスを2026年3月31日に終了するアナウンスがありました。

iモードは海外展開も図られ、欧州ではフランスのブイグテレコム、スペインのテレフォニカ、イギリスのO2、アジア圏では台湾の遠傳電信公司(Far EasTone Telecommunications)、香港のHutchison Telecommunicationsなどで採用され、日本主導の技術が展開されたものでした。

筆者は、iモードのサービス展開に国内外で関わった経験を持っているため、個人的見解にもなりますが、本サービスは携帯電話の歴史に大変革をもたらしたと思っていたため、一時代の終焉だと感じています。携帯電話の小さい画面の世界でインターネットブラウジングを実現、カラー化、画像・動画配信、そしてゲームなど今ではあって当たり前の機能を全世界で初めて実現したものでした。

iモードにはiモーションという動画配信サービスも実現しておりました。これはメールにURLを添付するもので、ビデオコーデックにはMPEG4が採用されていました。但し、初期はストリーミング技術ではなく限られた秒数でかつ15fps(1秒間に15フレーム)ほどという品質もあまり高くない動画でしたが、音声があることから当時は画期的なサービスと好評を得ていたことを記憶しています。

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Real Network社(※1)がReal Videoにておそらく世界で商用として初のストリーミング対応のビデオコーデックを欧米に展開しました。

次に2006年4月に「ワンセグ」と呼ばれる、携帯機器向けの地上デジタルテレビ放送サービスの本放送が始まりました(※2)。現在では、以下のような利用もされています。

É}出典:https://www.apab.or.jp/1seg/このビデオコーデックとしてH.264/AVC、オーディオコーデックとしてAACが採用されています。一方、デジタルテレビ向けの地上デジタル放送(略して地デジ)は、2003年に一部の都市で、2006年12月に全国で開始されました。しかしビデオコーデックにはMPEG2が採用されています。何故、地ワンセグと地デジでは違うビデオコーデックが利用されたのでしょうか?

地デジは、「ワンセグ」と対抗して「フルセグ」と呼ばれることがあり、地上デジタル放送の仕組みからきています。日本ではISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)と呼ばれる規格を採用していて、1つのチャンネルに13のセグメントを使って映像・音声を配信しています。「フルセグ」では12セグメントを、「ワンセグ」では1セグメントを使っていることでこのように呼ばれています。
地上デジタル放送は、全国で放映開始する10年近く前から検討されていたものでしたので、MPEG2で検討する以外選択肢が無かったのではと筆者は推測します。

ワンセグは、1つのセグメントで送る必要があること、当時の携帯電話も液晶ディスプレイの解像度から「ワンセグ」の解像度は320×240(QVGA)、または320×180で問題なかったはずですが、それでもMPEG2よりも圧縮率を上げる必要があったことから、H.264/AVCが採用されています。

携帯端末は、半導体や液晶などの電子部品、コーデックやプレーヤーなどのソフトウェア・ハードウェア、ネットワークの進化によって多種多様な面で進化を遂げています。以前のコラムで2000年にゲーム機でテレビ電話を実現したことを記しましたが、現在では携帯端末でSkype、FaceTime、Hangoutなどのアプリの利用でも実現しています。これのコーデックにはH.264やVP9が利用されており、また米国スタンフォード大学で開発したSalsify(※3)は、高品質・低遅延を謳ったコーデックとして注目されています。

2020年は5Gの本格的な実証実験が始まります。オリンピック・パラリンピックにおいては5Gを使った各種配信サービスの検討がされており、コーデックはH.265/ HEVCが利用される予定です。5Gなどの次世代無線技術により、今後も新たなビジネスが生まれると思っています。

ここから私の想像でもありますが、例えば、スポーツやコンサートなどの会場に入れない人たち向けにその会場周辺に5Gなどの次世代無線通信技術による高画質の映像を配信することも出来る様になります。これは、5Gの利用により現在のパブリックビューイングで必要な有線ケーブルや専用回線網や衛星回線を利用することなく、個人のスマートフォンやタブレットでもリアルタイムの映像配信を可能になるからです。会場周りで見るとなれば、会場の歓声が漏れて聞こえるため、その歓声が起こるシーンと配信される映像とのずれが生じない様、リアルタイム性はとても重要な要求事項になり、5G技術がカバーできるものと考えます。

また、バーチャルリアリティ(VR)では、立体映像を使ったサービスも可能となり、スポーツやコンサート映像を遠隔地から立体的に視聴を可能にすることや、映画「スターウォーズ」のホログラム投影(※4)(立体映像)を携帯端末でも実現するため、フルカラー3Dディスプレイが携帯端末に搭載されるのも近いと思われます。これらの実現にはコーデック技術は不可欠なものになります。

以上のように、ビデオコーデックのニーズは、ますます増えていくと筆者は考えており、映像技術の更なる発展にも期待ができます。

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参考文献:

「総合マルチメディア選書MPEG」:映像情報メディア学会編、オーム社出版局

「H.264/AVC教科書」:大久保 榮監修、株式会社インデックスジャパン社発行

「H.265/HEVC教科書」:大久保 榮監修、株式会社インデックスジャパン社発行

引用:
※1:Real Networks社の歴史(Real Video)
http://www.fundinguniverse.com/company-histories/realnetworks-inc-history/

※2:一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)
https://www.apab.or.jp
https://www.apab.or.jp/1seg/faq.html

※3:スタンフォード大学 Salsify
https://snr.stanford.edu/salsify/

※4:スター・ウォーズ」 でのホログラム投影

1977年公開「エピソード4/新たなる希望」にてR2-D2が映し出したレイア姫のホログラム投影。

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