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生成AIはテスト自動化をどう変えるのか? 品質管理の未来を拓く最新トレンド徹底解説

生成AIはテスト自動化をどう変えるのか? 公開日:2025年5月1日

ITサービスが大規模化、複雑化するのに合わせ、システムテストの負荷と複雑さも急激に増しています。テスト自動化がその処方箋として期待されていますが、様々な事情で期待通りの成果を上げきれていないケースもあります。その中で、解決策として今注目を集めるのが「生成AIとテスト自動化ツールのコンビネーション」です。なぜ、テスト自動化領域で生成AIが注目されているのか、具体的にどのように使われ、どのような成果が期待されているのか、その実情について解説していきます。

目次

テストプロセスは進化を必要としている

開発現場のリアル:増え続けるテスト負荷と複雑化するシステム

今、システム開発の現場では、モバイルアプリ、クロスブラウザ(クロスプラットフォーム)、マイクロサービスやクラウドネイティブアーキテクチャの普及、DevOpsやCI/CDの浸透等により、開発とリリースのスピードは飛躍的に向上しましたが、その分だけ、品質保証のためのテストの負荷も飛躍的に増加しています。

QAエンジニアにとって、リリースサイクルの短縮が、テストの質や対応能力に悪影響を与えかねないほど、彼らの負荷は大きくなっています。もはや従来のテストプロセスではスピードと品質の両立が困難な時代に突入しており、彼らの工数の削減を検討することは、生産性の話のみならず、ソフトウェア品質の話にもなってきています。

しかも対象となるシステム自体も複雑化する一方で、Webとモバイルの両対応は当たり前、さらにIoTデバイスやAPI連携、SaaS間の統合など、テスト対象のバリエーションは拡大の一途をたどっています。こうした状況において、テスト工程の手動対応やスクリプト手書き中心の自動化では、とても追いつかないというのが開発現場のリアルな状況になっています。

Seleniumのような従来型のテスト自動化ツールに加え、ノーコード(nocode)、ローコードに対応した高機能なツールによるテスト自動化が昨今注目を集めていますが、そのツールを使いこなすまでには、それなりの学習コストがかかり、使いこなしたとしても、システム改修に際して、テストケースを修正する作業はなくならず、QAスタッフの負荷軽減が限定的になるケースもあります。

品質管理のジレンマ:コスト、時間、網羅性の壁

テスト工程では、コスト・時間・網羅性という3つの要素の中で、常にトレードオフが発生しています。より多くのテストケースを網羅しようとすれば、当然ながら人的リソースやテスト時間が膨らみます。一方、時間や予算を優先すれば、テストの網羅性や品質担保を妥協せざるを得なくなります。

加えて、近年はソフトウェア品質に対する期待値も高まっており、ユーザー体験(UX)の低下やバグの影響は、SNSなどを通じて企業ブランドに直接ダメージを与えるリスクさえあります。つまり、企業は「より速く」「より安く」「より確実に」品質保証するという、極めて高い要求を同時に満たすことが求められています。

救世主としての生成AI:テスト自動化の新潮流

このようなテスト現場のジレンマに対し、いま注目されているのが生成AIを活用したテスト自動化です。OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなどがリードするLLM(大規模言語モデル)の発展は、自然言語の理解とコンテンツ生成の精度を飛躍的に高め、従来の自動化ツールでは困難だったテスト設計やスクリプト生成の領域にまでAIが入り込む素地を作りました。

後述するように、実際に生成AIを使いテストケースの作成や、そのテスト結果の分析を行うことは現実に行われていますし、それにより省力化や生産性向上はもちろん、テストカバレッジの向上などの品質向上の効果も生まれています。

また、UiPath Test Suiteのような自動化基盤と生成AIを連携させれば、設計・実行・分析といった一連のプロセス全体を、より迅速かつ高精度に運用できます。これは、単なる効率化にとどまらず、品質保証そのものの在り方を根底から変える可能性を秘めています。

テスト自動化への生成AIの導入は、単にテストの「実行効率」を上げるだけでなく、テスト設計や分析、テストカバレッジを効率的に増やす、メンテナンスといった作業領域を効率化し、エンジニアにとっての創造的な時間を増やすことが期待されています。

生成AIが実現するテスト自動化の革新【具体的なメリットと活用方法】

テストケース設計の自動化:AIが仕様書を「理解」し、最適なテストを提案

従来、テストケースの設計は仕様書をもとに手作業で行われており、時間と労力を要する作業でしたが、生成AIを使うことで、仕様書から自動的にテストケースを生成することが可能となりました。生成されたテストケースの有効性の精度は100%ではないのが現状ですが、それは人間が行う場合も同様であり、人間が行うのと変わらない精度で、それよりもはるかに早い時間で、大量の作業を行うことができます。要件仕様からテストケースをAIで生成することは、もはや実用段階に入っていることに加え、人が行った場合だと気づけなかったようなテスト観点を発見できることも少なくありません。当然それにより、テストカバレッジの向上も実現できます。

テストスクリプトの自動生成とメンテナンスの劇的な効率化

生成AIは、テストスクリプトの自動生成とメンテナンスにも革新をもたらしています。従来、UIの変更や機能追加に伴うテストスクリプトの修正は手作業で行われていましたが、生成AIを活用することで、これらの作業を自動化し、メンテナンスの効率化が図れます。 AIが、UIのモックアップをスキャンして自動的にテストスクリプトを生成することなどが行われています。

テスト実行と分析の高度化:AIが見逃さない潜在的な問題を発見

生成AIは、テスト実行中のログや結果をリアルタイムで分析し、潜在的な問題やバグの兆候を検出する能力も持っています。属人的な従来の職人的な手法では見逃されがちだった問題点を早期に発見し、安定した品質を早期にリリースすることに寄与しています。元々、テスト自動化ツールは、リグレッションテストの自動化に強みをもつものとして始まりましたが、今やリグレッションテストのみならず、ソフトウェアテスト工程やソフトウェア品質向上に寄与できるものになってきました。

UiPath®と生成AIのインテグレーション

富士ソフトが導入しているUiPathにテストのための生成AIを搭載したものを、UiPath Autopilot™ for Testersといいます。テストのライフサイクル全体を通じてテスターの生産性を向上させるように設計されたもので、2024/7に一般公開されました。現在までに大きく 2024.6と2025.4の2つのバージョンがリリースされており、UiPath® Test Suite の 2 つの主要コンポーネントである、デスクトップ版の UiPath® Studio と UiPath® Test Manager に統合されています。主な機能についてご紹介します。

【参考】
生成AIでテスト作業(要件の品質評価→テストケース抽出→コード生成→実行→洞察)まるっと自動化がスゴい
https://qiita.com/Jun96427231/items/8edc9fcc754396dbe2fb

グローバルイベント「UiPath FORWARD + TechEd」参加レポート—生成AIで加速するテスト自動化の最前線
https://www.fsi.co.jp/blog/11457/?utm_source=chatgpt.com

UiPath Autopilot for Testersの全体像

テスト実行フェーズで機能することが多かった以前のAI対応テスト自動化ツールと違い、UiPath Autopilot for Testersは、 テストケースの検討、設計、作成、実行、そして結果を分析して、洞察を得るところまで一貫して自動化することが可能です。

これにより、テストプロセス全体の効率化と品質向上を図ることが可能になり、ソフトウェアテストの工数を下げ、今まで以上に開発サイクルの短縮にも寄与できるようになりました。また、UiPathの強力なワークフロー機能と生成AIの柔軟な自然言語処理能力を組み合わせることで、より高度なテスト自動化が実現可能となります。

1.多角的に要件の品質評価を行う

生成AIがUiPath Test Managerに登録された要件を分析し、要件の不備や不適切な仕様を指摘するなどソフトウェアテスト段階での要件の品質評価を行うことで、上流工程での品質向上を図ることができます。セキュリティやアクセシビリティなどのガイドラインをアップロードすれば、それに基づいた整合性チェックも可能です。アップロード形式も幅広く、一般的な開発資料(DOCX、XLSX、PDFなど)に対応しています。ただし、ファイル中にある画像部分の内容解析は未対応です。

2. 要件からのテストケース自動生成

要件ドキュメントや仕様書から直接テストケースやテストシナリオを自動生成します。自然言語で記述された要件を解析し、必要なテストステップを抽出することができ、ソフトウェアテストにおける設計段階の作業を大幅に効率化することができます。テストケースやテストシナリオの網羅性やテストカバレッジも向上し、抜け漏れのリスクを低減することができます。

3. テストコードの自動生成と実行

生成されたテストケースやテストシナリオは、UiPath Studioと連携してテストコードとして自動生成されます。オブジェクトリポジトリに登録されたUI要素を活用し、コードの一貫性と再利用性を確保します。生成されたコードは即座に実行可能です。

4. テスト結果のAIによる分析と洞察

蓄積されたテスト結果を分析し、ソフトウェアテスト全体の失敗率や、最も失敗率の高いテストケース・テストシナリオ、さらに、改善のための具体的な推奨事項を提示してくれます。ソフトウェアテストを積み重ねるほど、テストプロセスの継続的な改善と品質向上が可能になります。

5. 合成テストデータの生成

自然言語のプロンプトをつかって、自分のテストニーズに合わせた合成テストデータを自動生成することができるため、データ準備の時間を大幅に短縮し、迅速なソフトウェアテストの実行が可能になります。

6. シフトレフトの実現とDevPos、CI/CDとの統合

開発段階からソフトウェアテストが実施可能になり、シフトレフトのアプローチが実現します。また、UiPath Orchestratorとの連携により、テストのスケジュール実行やCI/CDパイプライン、DevOpsへの統合が容易になります。これにより、継続的な品質保証と迅速なリリースが可能となります。

そのほか、以下のような様々な機能がリリースされています。詳細は参考ページをご確認ください。(https://www.fsi.co.jp/blog/11457/?utm_source=chatgpt.com)

  • SAPトランザクションテストケースの生成
  • ファジー検証
  • 式の生成
  • コード化されたテストオートメーションのリファクタリング
  • APIオートメーションコードの生成
  • 自然言語によるプロジェクト検索
  • 手動テストケースのインポート
  • ローコードテストオートメーションの生成
  • UiPathドキュメンテーションの検索
  • テストオートメーション内検証エラーの修正
  • 更新が必要なテストを特定
  • 廃止テストを検出
  • PDFファイルの比較&UIの比較
  • テストレポートの反復生成
  • 負荷テストシナリオの計画、構築、分析

その他のAIに対応したテスト自動化ツール

最後に、UiPath Test Suite以外のテスト自動化ツールのAI活用例をご紹介します。

Autify

Autifyは、Webやモバイルアプリに対応した、ノーコード(nocode)でUIテストを自動化できるクラウド型ツールで、以下のようなAI機能に対応しています。

  • UI変更を自動検知しテストスクリプトを修復するセルフヒーリング機能(画像解析とDOM構造分析を併用)
  • クロスブラウザテストで、複数ブラウザ/OS環境で並列実行し、AIがレイアウト差異を自動調整機能
  • ノーコード(nocode)で自然言語入力からテストシナリオを自動生成機能

mabl

mablは、AIを活用した自動E2Eテストが可能なノーコード(nocode)、ローコードに対応したクラウド型テストツールで、保守性にも優れており、一例として以下のような機能に対応しています。

  • 生成AIによるテスト作成、生成AIアサーションによる検証
  • Autifyと同様、mablもセルフヒーリングを備えており、AIによる動的修復でアプリ変更時にテストステップを自動更新

MagicPod

MagicPodは、「AIテスト自動化プラットフォーム」として、ノーコード(nocode)操作でWeb・モバイルアプリのUIテストを自動化できる日本発のクラウド型ツールです。AIによる保守性の高いテスト作成・実行が可能な様々な機能を備えています。

  • セルフヒーリングによる変更されたUI要素の自動修復機能
  • AIエンジンがアプリケーション画面から項目を検出、ユーザーは項目を選ぶだけで、ノーコード(nocode)でテストケースを作成可能

TestComplete

TestCompleteは、アメリカのSmartBear社が提供する自動UIテストツールで、Web・デスクトップ・モバイルアプリケーションのUIテストを、ノーコード(nocode)とスクリプトの両方で、自動化できる統合型テストツールです。

  • AI技術を取り入れたスマートオブジェクト認識により、画面変更に強く、保守性の高いテストスクリプトを構築可能

Functionize

Functionizeは、AIによるテスト自動化と自然言語テスト設計を特徴とするクラウド型E2Eテストツールで、クロスブラウザおよびクロスプラットフォームテストに対応しています。

  • 自然言語によるテストケース記述(NLP)
  • CI/CDパイプラインとの統合によりエラーハンドリングとセルフヒーリングが可能(自己修復機能)

脱・限界。生成AIが描く自動テストの未来地図

テスト工程の複雑化と負荷の増大に直面する現代の開発現場において、生成AIは単なる補助的な技術ではなく、品質保証のあり方を根底から変える革新の鍵となりつつあります。

従来のテスト自動化では困難だった、テストケースの設計、スクリプトの保守、実行結果の分析といった領域に、生成AIは自然言語処理や機械学習を駆使して深く入り込み、劇的な効率化と精度向上を実現しています。

特に、UiPath Test Suiteのようなツールと生成AIを統合することで、テストの上流工程から下流工程までを一気通貫で支援できるようになり、開発サイクル全体の生産性を高めることが可能になっています。

AIによる自動テスト生成やセルフヒーリング機能、合成データ生成などの最新機能は、もはや先進事例ではなく実用フェーズに入りつつあります。今後は、生成AIの導入がテストの標準的なプロセスとして広がることで、品質とスピードを両立するソフトウェア開発がより当たり前のものになっていくでしょう。

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