組み込み向け自動テストソリューション

テストの自動化により、お客様の作業効率化と品質の高い評価を実現いたします

テスト自動化とは?メリットや導入の仕方、ツールを詳細解説

テスト自動化とは? 公開日:2024年11月18日
更新日:2025年4月1日

システム開発におけるソフトウェアテスト等の行うテストフェーズはいうまでもなく重要なステップであり、バグの見逃しなど、ミスによる後々の損害の大きさを考えるとある意味、最重要のフェーズの1つでもあります。このテストフェーズが、昨今のIT業界における変革にあわせ、様々な課題を提示しはじめています。

膨れ上がるコスト、テスト自体の高度化、人材不足、ミスしたことにおけるリスクの重大化など、品質保証やプロジェクト管理上はもちろん、経営上もこのフェーズの改善なくして、成り立たなくなってくる可能性もでてきています。
完全な解決策がない中で、RPA技術の進化にあわせ、テスト自動化がその処方箋になるかもしれないと、期待を集めはじめています。

本記事では、そのテスト自動化について、自社での導入はもちろん、様々なクライアントへの導入支援をしてきた富士ソフトが、その基本から、導入の流れ、費用対効果やツールの選び方まで、そのノウハウをお伝えします。

目次

テスト自動化とは?その定義を確認する

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テスト自動化とは、ソフトウェアの品質を確認するためのテスト作業を自動化するプロセスです。通常、ソフトウェア開発の工程では、多数のエンジニアの時間と労力を必要とする手動のソフトウェアテストが行われますが、テスト自動化はその工程を効率化し、より迅速かつ正確な正誤判定とバグの早期発見などのテスト結果を得ることを可能にするものです。実際には、UiPath™ Test Suiteのようなツールやスクリプトを利用して、事前に設定した様々な条件や動作をシミュレーションしたテストケースやシナリオ作成し、それを自動で実行させて正誤判定を行うことで、効率的にエラーやバグを早期発見することができます。

また、自動化されたテストケースやシナリオは一度構築すれば何度でも再利用可能であり、開発サイクル全体を通じて繰り返し行われるテスト作業を効率的に運用することができます。その結果、人為的なミスに由来するバクを減らし、開発者は本来の業務であるコーディングや設計など、付加価値を生む開発業務に集中でき、全体的な生産性や品質を向上させつつ、結果としてプロジェクトの収益向上にも貢献していくものになります。

テスト自動化はなぜ必要なのか、その背景を知る

現代のソフトウェア開発は、短期間で高品質の製品を市場に投入することが求められています。特に、アジャイル開発(agile)やDevOpsといったソフトウェア開発手法が普及する中で、継続的な開発・デプロイが重要視されています。こうした場合、ソフトウェアのアップデートが、既存のシステムに悪影響を及ぼしていないかをチェックする回帰テスト(リグレッションテスト)といわれるソフトウェアテストが実施されます。アジャイル開発の環境下では、頻繁なリリースを実施するため、回帰テスト(リグレッションテスト)も頻繁に行われ、しかも迅速かつ正確なテストの実行が求められます。しかしながら人材リソースが不足しがちな今のソフトウェア開発環境下では手動によるソフトウェアテストだけで、このニーズを満たすのは困難です。

また、ソフトウェアが複雑化する中で、テストケースの数も増加傾向にあります。このような状況下で、手動によるソフトウェアテストに頼るとテストの抜け漏れや人為的ミスが発生しやすく、結果として品質低下や開発遅延につながるリスクがあります。そのため、テスト工程を自動化し、効率化と精度向上を図ることが必須となってきています。

テスト自動化のメリット。手動テストと比べ、どういった利点があるのか

効率化と高速化、コスト削減

テスト自動化の最大の利点は、 ソフトウェアテストにおける効率性の向上と高速化、それを受けてのコスト削減です。一度テストケースやテストスクリプトを作成すれば、原則、同じテストを何度でも実行可能であり、人手をかけずに大量のテストを短時間で完了できるため、手動によるソフトウェアテストに比べてテスト時間や大幅に短縮するなどの工数削減が可能です。

人的ミスの削減・正確性の向上

自動化されたテストは正確性が高く、人がテストを行うことによる見逃しなどのリスクを減らすことができます。手動テストでは、特に複雑なシナリオや大量のテストケースを実行する際にこの手の人為的ミスが発生しやすいですが、自動化することでこの問題を解決できます。

リリースサイクルの短縮

夜間や週末などの非稼働時間にもテストを実行することによるバグの早期発見と開発スピードの向上にも貢献することができ、結果としてリリースサイクルの短縮化を実現することができます。

テストカバレッジの向上

前述のように、人的リソースにも時間にも縛られず大量のテストを実行することができるため、テストカバレッジが向上し、結果的に製品の品質向上に貢献することができます。

つまり、手動ソフトウェアテストであったら、膨大な時間がかかっていたところに劇的な効率化と高速化を実現し、同様に手動ソフトウェアテストだと、コストと時間の問題で実現できなかったソフトウェア開発現場における幅広い範囲の品質保証を実現することができます。

テスト自動化のデメリット。決して万能薬でない、その欠点を把握する

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テスト自動化には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。まず、自動化スクリプトの作成には初期コストと時間がかかります。特に、複雑なテストシナリオをカバーするスクリプトやシナリオの構築は高度なスキルを必要とし、ソフトウェア開発チームのエンジニアに追加の負担を与えることがあります。ただし、これらの問題のうち、スクリプトの構築に関しては、UiPath®などのローコードのツールを使用することで、極力低減することも可能です。

また、すべてのテストが自動化できるわけではありません。特に、ユーザビリティテストなどユーザーエクスペリエンスに関する部分では人間の判断が必要な場合が多いため、手動テストが不可欠です。

さらに、自動化スクリプトはソフトウェアの変更に対して敏感であり、頻繁にメンテナンスが必要です。これにより、長期的にはコストが増加する可能性もあります。テスト自動化ツールによっては、ソフトウェアの更新に対応したものもありますが、テスト自動化の導入を進める際は、自社のシステムを踏まえつつ、メリットだけでなくデメリットもしっかりと考慮することが重要です。

テスト自動化に向いたテスト

リグレッションテスト(回帰テスト)

リグレッションテストは回帰テストとも呼ばれ、テスト自動化に最適な分野の一つです。このテストは、新しいコードや変更が既存の機能に、デグレードなどの悪影響を及ぼしていないことを確認するために行われるため、リリースごとに繰り返し、ほぼ同じ内容が実行されることにもなるため、自動化することで大幅な効率化が可能です。

テスト自動化に不向きなテスト。すべてが自動化できるわけではない

1. 探索的テスト

探索的テストは、テストスクリプトに頼らず、テスターが自由にアプリケーションを操作しながら問題を見つけるテスト手法です。このプロセスには創造性や直感が求められ、人間の判断力が重要な役割を果たすことになるため、規定の動作を繰り返すことに強みのある自動化ツールで対応することは困難です。

2. ユーザビリティテスト

ユーザーエクスペリエンスに関連するいわゆるユーザビリティテストでは、画面デザインや操作性などを確認する必要があります。これらも人間の感覚や直感に依存するため、自動化では評価が難しい分野です。

3. 一回限りのテスト

一度しか実行しない特殊なケースのテストでは、自動化スクリプトを作成するコストが無駄になる場合があります。このような場合、手動テストで効率的に対応する方が現実的です。

テスト自動化の用途。どういったことにテスト自動化は活用できるのか?

テスト自動化とは」コラムイメージ画像3

テスト自動化は様々な用途、シチュエーションで活用されています。

単体テスト(ユニットテスト)

単体テストは、ソフトウェアの最小単位である関数やメソッドが期待通りに動作するかを確認するテストです。自動化することで、開発の初期段階から継続的に品質をチェックできます。JUnitやCypressなどのツールがよく使用されています。

APIテスト

APIテストでは、アプリケーション間のデータ通信や機能を検証するものです。PostmanやSoapUIなどのツールを使用して、リクエストとレスポンスの正確性を自動的にチェックします。

E2Eテスト(エンドツーエンドテスト)

E2E(End-to-End)テスト は、システムの入口から出口までの全体の動作をユーザー視点で検証するテストです。実際の使用環境を再現し、UIやデータフロー、統合機能の動作を確認するものです。E2Eテストでは、UiPath™ Test SuiteやSeleniumやPlaywrightなどのツールがよく使われています。

UIテスト

UIテストは、E2Eテストと同義と見られるケースもありますが、基本的にはユーザーインターフェースの動作やデザインを検証するテストです。特に、ボタンのクリックやフォームの入力など、基本的な動作確認の際にテスト自動化ツールが活用されます。

GUIテスト

GUI(Graphical User Interface)テストは、視覚的な要素の動作を確認します。GUIは頻繁に変更されることが多いため、メンテナンスコストを考慮しつつ自動化する必要があります。

スマホアプリ

スマートフォン向けアプリのテストも自動化が進んできており、Appium™やShiratesのようなオープンソースのアプリケーションから、AutifyやMabl、Ranorex®などの有料ツールまで幅広いツールが提供されています。

Windowsアプリ

デスクトップ向けアプリケーションのソフトウェアテストでも、UiPath®や Ranorex®などのツールを利用することでテスト自動化が可能です。

Webアプリ・Webページテスト

Webアプリケーションのテストでは、SeleniumやCypressがよく使われます。ブラウザ間の互換性やレスポンス速度など、多岐にわたるテストを効率化できます。

組み込みシステムテスト

組み込みシステムは、ハードウェアや限定的なOSや環境に依存するもので、テスト自動化が難しい領域ですが、この領域でもテスト自動化の導入は進んでいます。

CI/CDパイプラインの一部としてのテスト

テスト自動化ツールとJenkinsなどのCI/CDツールを連携も進んでいます。システムにおける機能追加やアップデートなどでコードの変更が問題を引き起こしていないかを即座に確認し、問題があった場合は開発者にチケットを発行するところまでを自動化することができます。

テスト自動化の8原則

ソフトウェアテストの自動化技術に関する情報交換や研究を目的とした「テスト自動化研究会」(STAR: Software Testing Automation Research Group Jp)というコミュニティがあります。

そこでは、

ソフトウェアテスティングにおける重要な実践技術である「テスト自動化」(特に上層、システムテスト/受け入れテスト)について、技術領域の定義と啓蒙、およびそれを主たる価値とする「テスト自動化エンジニア」(Automator)という職業の国内における創造を推進
【参照元】テスト自動化研究会 Webサイト

するという目的のもと、具体的な活動として、システムテストの自動化に関するハンズオンやイベントやカンファレンスを開催し、最新の情報や事例の共有を行っています。
そのテスト自動化研究会が、テスト自動化における原則を、「テスト自動化の8原則」として発表しています。非常にわかりやく端的にまとめられているため、ここでご紹介させていただきます。

1.手動テストはなくならない

前述のように探索的テストやユーザビリティテストなど、人間の判断が必要なテストは自動化できない。また、初めて実行されるテストは手動で行ったほうが品質が高いケースが多い。そのため、手動テストは依然として重要な役割を果たす。

2.手動で行って効果のないテストを自動化しても無駄である

手動テストで有効性が確認できないテストを自動化しても、効果は期待できない。自動化の対象は、手動テストで有益と判断されたものに限るべきである。

3.自動テストは書いたことしかテストしない

自動テストは、スクリプトに記述された操作や検証のみを実行します。そのため、予期しない動作や未定義のケースは検出できません。

4.テスト自動化の効用はコスト削減だけではない

テスト自動化は、コスト削減だけでなく、リグレッションテストの効率化やバグ修正期間の短縮など、開発プロセス全体の品質向上に寄与するものである。

5.自動テストシステムの開発は継続的に行うものである

システムの変更や追加に伴い、自動テストも継続的なメンテナンスや更新が必要。一度構築しただけで完了するものではない。

6.自動化検討はプロジェクト初期から

プロジェクトの初期段階から自動化を検討することで、設計や開発プロセスに自動化を組み込みやすくなり、後の手間やコストを削減することができる。

7.自動テストで新種のバグが見つかることは稀である

自動テストは、既知の動作や仕様の確認に適しており、新たなバグの発見は主に手動テストや探索的テストによるものが多い。

8.テスト結果分析という新たなタスクが生まれる

自動テストの実行結果を分析し、失敗の原因を特定する作業が必要であり。これにより、テストの信頼性と品質が維持できる。

【参照元】テスト自動化研究会「テスト自動化の8原則

テスト自動化の導入の流れ

テスト自動化導入の流れ

テスト自動化の成功には、明確なプランニングとステップに沿った導入が必要になります。以下は、テスト自動化を導入する際に富士ソフトが意識しているプロセスです。

1. 目的の明確化

社内での導入でも、お客様への導入支援の場合でも、富士ソフトの場合、まずは、「何に困っていて」、「テスト自動化をした結果どうなっていたいのか」、つまり、テスト自動化の目的を明確にすることから始めています。テスト自動化で解決したい課題は一般的には以下のようなものがあります。

  • 製品のリリースが多いが、テスト工数がかかり、人手も必要。
  • 人手が足りていない。テストにかかる工数を他の作業かけてしまっている。
  • ソースの更新のタイミングで、不具合を早期発見したい。
  • 膨大なテストケースがテスト資産として流用出来ていない。
  • テスト結果が一部にしか共有されず「いつ」、「誰が」、「どういった」テストを行ったのかをトレースすることが出来ていない。

このような形で課題を明確すると、テスト自動化の結果、どのような成果を得たいのかが明確になり、それによって、例えば、

  • テスト作業にかかっていたエンジニアの工数を削減する。
  • テスト時間の短縮。
  • テスト精度の向上。
  • リリースサイクル短縮。

など具体的なゴールを設定することができます。当然に、これらのゴールはすべて実現したいものではありますが、一度にすべてのゴールを実現することは現実問題として難しいので、優先度を整理していくことになります。
これにより、テスト自動化で対応する範囲の適切な設定やツールの選定の基準がつくられていきます。

2. テスト対象の確認

次のステップとして、テスト対象の確認を進めていきます。
例えば、以下の点を確認し、どのようなツールがプロジェクトに適しているのかをさらに絞り込んでいきます。

  • プラットフォームは? PC or タブレット or お客様製品か?
  • OSは? Windows or iOS or Android?もしくはすべてまとめてか?
  • どんなシステム構成? Webシステム or アプリケーション or 複数のアプリケーションでの連携か?
  • そもそもで、自動化できる環境なのか?物理的なハードウェアの操作(メモリカードの抜き差し等)や音声の確認、視覚での確認については自動化できない。

3. 適用範囲の選定

前述のようにE2EテストやUIテスト、ユーザビリティテストなど「テスト」が必要なものは多種多様で、すべてのテストが自動化できるわけではありません。先に述べたようなことを念頭に置いて、プロジェクト全体の中で、自動化に適したテストケースを選定します。リグレッションテストや単体テストなど、繰り返し実行されるテストを優先するのが一般的かと思います。

4. テスト自動化ツールの選定

テスト自動化ツールも多種多様な選択肢があり、テスト自動化で成果を上げるためには 適切なツールの選定が欠かせません。ツール選びは、プロジェクトの規模、要件、環境、チームのスキルセットなど、多角的な視点から検討する必要があり、詳細は別章でお伝えしたいと思いますが、重要なポイントとして、先ほどの対象プラットフォーム加えて、チームの技術力、ツールのサポート体制などがあります。

5. スクリプトやツールを活用したテストケースの作成と実装

テストケースを作成する場合、Seleniumなど、選定したツールによっては、テストスクリプトを作成することになります。テスト自動化を実装する場合のネックとして、ここでプログラマーの工数がかかることがありましたが、最近では、ノーコードツールを活用することで、効率的かつ簡単に自動化の実装を進めることが可能な環境が整ってきました。UiPath®のようなローコードツールは、プログラミングスキルがなくても直感的にテストケースの作成が可能なため、非エンジニアでもテスト自動化の実装に参加でき、結果として開発者をより開発業務に専念させられる環境が整ってきました。

6. テスト環境の構築

環境構築として、選定した自動化ツールのインストールと初期設定を行います。例えば、Seleniumではブラウザドライバの設定、UiPath®ではロボットの作成を行い、テストデータの準備やスクリプトの試験運用を行い、動作確認をしていきます。さらにテスト対象アプリケーションのビルド環境やCI/CDツール(例: Jenkins、GitLab)の統合などを進めていくことになります。

7. スモールスタート

初めは小規模な範囲で自動化を導入し、その結果を評価します。これにより、問題点を早期に特定し、改善してきながら大規模な展開を進めていきます。

8. 本格導入と運用

スモールスタートで得たフィードバックを反映し、自動化を全体に展開します。運用フェーズでは、システムの更新や使用の変更に合わせて、スクリプトのメンテナンスやローコードでもロボットの修正などアップデートを継続的に行うことが求められ、テスト自動化を継続的に実施していくためには、これらのコストも踏まえる必要があります。この場合でもローコードのツールであれば、エンジニアの稼働を抑えることができるため、コスト面、リソースの確保の面では有利に働くケースが多いです。

9. パフォーマンス評価

定期的に自動化の効果を評価します。テスト実行時間の短縮、バグ発見率の向上、コスト削減など、目標に対する達成度を確認します。 ROIの考え方などは章を改めてご説明します。

テスト自動化のROI(費用対効果)について

テスト自動化を導入する際、最も重視されるのが費用対効果(ROI)です。自動化を成功させるためには、初期投資とランニングコスト、そして得られる利益をしっかりと計算する必要があります。

1. 初期投資

テスト自動化には、ツールの購入費用やスクリプト作成のための人件費が発生します。テスト自動化における最もコストがかかる部分です。

2. ランニングコスト

自動化スクリプトのメンテナンスやツールのアップデートには、継続的なコストがかかりますが、手動テストと比較すると、長期的にはテストにまつわる人や時間の削減が可能で、テスト自動化が最もROIを発揮できる領域です。

3. 利益の計算

初期投資とランニングコストを、テスト自動化ツールと手動テストを実施した場合とで、それぞれのコストを算出します。一般的に初期投資はテスト自動化ツールが、ランニングコストは手動テストが不利になるため、回数を重ねるほどにテスト自動化ツールのほうが有利となり、一定のところで、手動テストに対する自動テストツールの損益分岐点を超えることになるため、自社のケースでは、それがどのくらいで可能になるのか、できる限り正確に算出していきます。一般的には、3~4回で損益分岐点を超えるケースが多いかと思います。

テスト自動化のROI

テストケースを作成する場合、Seleniumなど、選定したツールによっては、テストスクリプトを作成することになります。テスト自動化を実装する場合のネックとして、ここでプログラマーの工数がかかることがありましたが、最近では、ノーコードツールを活用することで、効率的かつ簡単に自動化の実装を進めることが可能な環境が整ってきました。UiPath®のようなローコードツールは、プログラミングスキルがなくても直感的にテストケースの作成が可能なため、非エンジニアでもテスト自動化の実装に参加でき、結果として開発者をより開発業務に専念させられる環境が整ってきました。

テスト自動化の導入イメージ

テスト自動化ツールは、どういったプロジェクトで、どのように使われているのか。「こういったケースでは、こんな形で活用できる」といった導入イメージをお伝えします。

事例1:ECサイトのリグレッションテスト

ECサイトでは、競争環境上、新しい機能の追加やUIの変更が頻繁に行われることになります。同然、その都度、テストが必要で、今までは手動でリグレッションテストをすることが多かったかと思いますが、サイトの成長に伴い、テスト範囲も拡大し、それに伴いコストと時間が増加していくことになります。このようなケースはテスト自動化が威力を発揮しやすいもので、テスト時間を70%程度削減することやリリースサイクルを半減させることもケースによっては十分可能です。

事例2:テスト自動化の DevOps、CI/CD統合

最近ではDevOps、CI/CD環境にテスト自動化が組み込まれるケースが出てきました。富士ソフトの場合、テスト自動化ツールのUiPath™ Test Suiteに、Jenkins、Git,Redmineを組み合わせることで、プログラムが変更されたタイミングで自動的にテストが実行され、テスト結果に不具合が含まれると、自動で開発者にチケットが連携され、開発者は、問題があった部分のみ確認することが可能になるような環境を構築しています。

事例3:金融業界のAPIテスト

金融系の企業では、APIの機能確認を高頻度で行うケースなども、テスト自動化が最適なパターンです。Postmanや最近ではUiPath®のようなローコードなツールでも使用してAPIテストを自動化することが可能になっています。

テスト自動化ツールは何を基準に選べばよいか。失敗しない選び方

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テスト自動化ツールを選ぶ際には、以下の基準を考慮することが重要です。

1. プロジェクト要件への適合性

ツールが対象アプリケーションやプラットフォーム(Web、モバイル、デスクトップなど)に対応しているかを確認します。場合によっては、モバイルやテスクトップのデバイスから、Webシステム、バックヤードのシステムまで一度に連携するテストを行う必要があるため、E2Eテストに対応しているのかを確認します。

2. 学習コストと操作性

チームのスキルセットに合ったツールの選択をします。プログラミング経験が少ないチームへの導入には、ノーコードまたはローコードのツールが適していますが、開発者が手動で進めるにはテストスクリプトを作成しながら進めるツールを選択します。学習のためのリソースの充実度なども重要になります。

3. 拡張性と統合性

CI/CDツールやその他の開発環境と容易に統合できるかを確認します。これにより、テスト自動化のみならず、開発プロセス全体を効率化することができます。

4. エビデンスの作成

通常、テスト結果を報告書としてまとめる必要がありますが、UiPath™ Test Suiteのような一部のツールでは、期待値の画像とテスト結果の画像を自動でキャプチャするなど、テスト結果報告書の一部までも自動化することが可能です。これらの機能は初期導入コストとも関わってくるので、現在エビデンスの作成でかかってる工数を勘案していきながら、機能の要不要を検討します。

5. コスト

ツールのライセンス費用だけでなく、導入後のメンテナンスやトレーニングのコストも考慮します。

6. オートヒーリング、自己修復機能の有無

システムを運用、更新している中でテストスクリプトを書き直す必要があるのが一般的で、少なからずエンジニアの工数を圧迫することになります。

それを解決するのがオートヒーリング(自己修復機能)です。オートヒーリングとは、要素のIDやClassなどのようにシステムに修正が加えられた場合、自動テストツールがテストケースを自動で修復して、次に進めるようにする仕組みです。これにより、小さなUI変更によるテスト失敗が減り、スクリプトのメンテナンスコストを下げることができます。

テスト自動化ツール概要

テスト自動化ツールには、目的や用途に応じた様々な種類が存在します。以下に、主要なツールとその特徴を紹介します。

UiPath™ Test Suite

UiPath®は、主に業務プロセス自動化(RPA)に使用されるツールですが、テスト自動化にも対応しています。ローコードで操作可能なため、プログラミングスキルが不要で、非エンジニアでも使いやすい点が特徴です。特に、GUIテストやバックオフィス業務の自動化に適しています。UiPath™ Test Suiteは、UiPath®を包括的にサポートするプラットフォームとして纏め直したものです。ServiceNow、SAP Solution Manager、Jira、Azure DevOpsとも連携することができます。

Selenium

Seleniumは、Webアプリケーションの自動化に特化したオープンソースのツールです。様々なプログラミング言語(Java、Python、C#など)に対応しており、広範囲のブラウザで動作します。特に、リグレッションテストやクロスブラウザテストにおいて、非常に高い人気を誇ります。

Playwright

Playwrightは、Microsoftが開発したオープンソースのテスト自動化フレームワークです。クロスブラウザ対応やスピードの速さが特徴で、最新のWebテクノロジーに対応しています。Seleniumと比べてセットアップが簡単で、モダンなテスト環境を求めるプロジェクトに最適です。

Jenkins

Jenkinsは、継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)をサポートするオープンソースのツールです。テスト自動化ツールと組み合わせることで、コード変更ごとにテストを自動実行し、問題を迅速に検出できます。

Postman

Postmanは、APIテストに特化したツールです。簡単なインターフェースでリクエストを送信し、レスポンスを確認できます。スクリプトを記述して自動化することも可能で、APIの機能確認やパフォーマンステストに広く利用されています。

Chrome for Testing

Google Chromeが提供する開発者向けブラウザで、テスト自動化に最適化されています。高速で軽量な特性を持ち、特にWebアプリの自動化に適しています。

Autify

Autifyは、ノーコードでWebアプリケーションのテスト自動化を実現するツールです。AIを活用してテストケースのメンテナンスを自動化し、非技術者でも簡単に操作できます。

mabl

mablは、AIを活用したローコードのテスト自動化プラットフォームで、Web、モバイル、API、アクセシビリティ、パフォーマンスにわたるテストを最適化します。統合型プラットフォームとして、チームが自信を持ってより早くリリースできるよう支援します。

ATgo

ATgoは国産のローコード型テスト自動化ツールです。UI・APIテストをノーコードで作成・実行可能で非エンジニアでも扱いやすいツールになっています。画面比較、エビデンス取得、レポート出力も自動化されています。

Cucumber

Cucumberは、仕様駆動型開発(BDD)を支援するツールで、自然言語に近いフォーマットでテストを記述でき、技術者と非技術者が共同でテストケースを作成しやすくなる特長があります。

JUnit

JUnitは、Javaプログラミング言語で記述された単体テストフレームワークです。軽量で使いやすく、Javaアプリケーションの単体テストに使われます。

Cypress

Cypressは、フロントエンドエンジニア向けに設計されたテスト自動化ツールです。リアルタイムでテスト結果を確認できる特徴があり、特にUIテストやエンドツーエンドテストに適しています。

T-Dash

T-Dashは、バルテス株式会社が提供するローコードのテスト自動化ツールで、シンプルで直感的なインターフェースを提供するテスト管理ツールです。テストケースの管理と結果の可視化に特化しており、特に小規模プロジェクトにおいて適しているようです。

Panaya

Panayaは、エンタープライズシステム向けのテスト自動化ツールで、特にSAP環境に強みを持ちます。クラウドベースのため、導入が簡単で、テスト結果の分析も可能です。

UWSC

UWSC(User Windows Script Control)は、Windowsアプリケーションの操作を自動化するツールです。シンプルなスクリプトで、デスクトップアプリのテストや業務プロセスの自動化が可能ですが、最近では更新がとまっています。

Eggplant

Eggplantは、AIを活用したテスト自動化ツールで、ディープラーニング技術で、カバレッジとバグ(欠陥)検出を目的にしたテストケース作成の生産性を大幅に向上させることができます。

MagicPod

MagicPodは、日本発のテスト自動化ツールで、モバイルアプリやWebアプリの自動化に特化しています。AI技術を活用した保守性の高いテストスクリプトが特徴です。

Appium

Appium は、モバイルアプリのテスト自動化を行うためのオープンソースツールです。iOS・Androidのネイティブアプリ、ハイブリッドアプリ、Webアプリのテストに対応し、Selenium WebDriverのプロトコルを使用してテストを制御します。プログラミング言語はJava、Python、Rubyなど複数に対応し、実機やエミュレーター上でテスト可能です。アプリのソースコードを変更せずにテストできるのが特徴で、CI/CDと組み合わせることで効率的なモバイルテストが可能になります。

【2025年の展望】生成AIのテスト自動化への活用

近年、生成AIの進化によりソフトウェア開発・品質保証の現場に変革が起きています。特にテスト自動化の領域では、テストケースやスクリプトの自動生成、UI変化への柔軟な対応、バグの分類や優先順位付けなど、従来手作業で行っていたプロセスがAIによって大幅に効率化されています。自然言語からのテストケース生成も進み、専門的知識がなくても自動化が可能になる環境が整いつつあります。

UiPath™ Test Suiteにおいても、生成AIを活用した「Autopilot for Testers」機能が注目を集めています。これは要件からテストケースやコードを自動生成し、テスト実行・レポート作成までを支援するもので、エージェント型の対話的なテスト設計を可能にします。技術者はもちろん、非エンジニアでも自然言語での指示によりテスト自動化が行えるため、組織全体の品質保証力を底上げする効果があります。

今後は、AIが仕様理解からテスト設計・実行・評価までを自律的に行う「AIテストエージェント」の実現が期待されており、DevOpsとの統合や継続的テストの強化が加速すると考えられます。生成AIは、テスト現場において効率と品質の両立を実現する新たなパートナーとして、今後ますます不可欠な存在となるでしょう。

まとめ

肥大化の一方をたどる昨今のシステム環境において、テスト自動化は、ソフトウェアテストの効率化によって、アウトプットの品質保証を強化するものであり、ソフトウェア開発全体の効率化を実現する強力な手段でもあり、経営的な視点で見ても不可欠な手法となっています。本記事では、テスト自動化の概要からメリット・デメリット、具体的な導入手順や活用例、ツールの選定基準までを解説しました。特に、目的の整理やプロジェクトのニーズに合わせた適切なツール選びが、テスト自動化の成功の鍵となります。

導入を検討する際には、目的や範囲を明確にし、少しずつスモールスタートで進めることをお勧めします。最終的には、開発チーム全体の生産性向上と競争力強化につながることでしょう。

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