FSI DMS/EMS(電子機器 設計及び製造受託サービス)

開発から製造まで一貫した工程におけるDMS/EMS(設計・製造受託)を提供します

製造業におけるOEM徹底解説:事業成長を加速する戦略的活用術

製造業におけるOEM徹底解説 公開日:2025年9月19日

いま、製造業の競争力を支える鍵として注目されるのがOEM(相手先ブランド製造)です。製造者に委託することによる単なるコスト削減手段としてだけでなく、場合によっては設計・開発・調達・品質管理までを担う“共創パートナー”として進化を遂げつつあるOEM。その最新動向と、事業成長を加速させる実践的な活用法をわかりやすく解説します。

目次

製造業OEMとは?基本から多様な形態まで

ここではOEMの定義に加え、似たようなサービス形態であるODMやPB、EMSとの違いや契約形態、業界別活用事例までを体系的に解説します。

製造業OEMとは?その定義と広がる活用領域

OEMとは「Original Equipment Manufacturing」の略称で、日本語では「相手先ブランド製造」と訳されます。自社ブランドを展開する企業(委託元)が販売者として製品の企画・設計・販売を主導しつつ、製造工程を外部の受託企業(受託先、製造者)に委託する分業型のビジネスモデルです。

OEMを活用することで、設備投資や人員確保にかかる負担を軽減しつつ、商品形態の多様化、小ロット生産や短納期対応が可能になります。販売者が社内リソースを開発やマーケティングといった戦略領域に集中できる点も大きな利点です。医療機器、家電、自動車部品、IoT機器、精密機器など多様な分野で広く普及しており、海外市場向けの製品にも対応しやすいのが特徴です。また、製造品質の標準化やトレーサビリティの確保にも貢献します。製造者に「製品製造を委託する」という点ではODMやEMSと共通しますが、対応範囲に明確な違いがあります。

製造業OEMと混同しやすい用語との違い

ODM(Original Design Manufacturing)との境界線

OEMと混同されがちなODM(Original Design Manufacturing)は、「設計の主導権」の所在が異なります。OEMは原則、販売者である委託元が設計・仕様を定め、製造のみを外部に委託するのに対し、ODMは受託先が設計から製造までを一貫して製造者として担います。ODMは開発リソースが限られる企業や短納期での市場投入を目指す場合に有効で、コストやリードタイムの削減に寄与しますが、製品の独自性が薄れる傾向もあります。ODMと類似したDMS(Design and Manufacturing Service)も、設計・開発・試作・量産を包括的に提供するモデルで、おもに電子機器を対象にしたものですが、OEM・ODM・EMSと並ぶ選択肢として、複雑化する開発体制に対応しています。

PB(プライベートブランド)との関係性

PB(プライベートブランド)は、小売業者や流通業者が販売者として自社ブランド名で販売する商品のことで、製造をOEMメーカーに委託します。小売業者や流通業者によるPB商品の多くはOEMメーカーに製造を委託しており、たとえばスーパーマーケットのPB(プライベートブランド)冷凍食品や即席麺、ドラッグストアのPB(プライベートブランド)化粧品・日用品などが代表例です。製品パッケージにも受託者が製造者として記載されています。PB(プライベートブランド)では、委託元が仕様や品質基準を定め、製造は製造業者のOEMに任せることで、製造設備や技術がなくてもブランド力のある商品展開が可能になります。販売データを活用した商品改良や短サイクル開発も実現しやすく、近年は環境配慮型や高付加価値PB(プライベートブランド)の開発も進んでいます。差別化や競争力強化に有効な手法として、流通業界で広く普及しています。またPB(プライベートブランド)は、ODMで行われることもあるようです。

EMS(電子機器受託生産)の役割と特徴

EMS(Electronics Manufacturing Service)は、製造業者が電子機器の製造を専門に請け負う受託生産サービスです。OEMやODMと異なり、EMSはその名の通り、電子機器を範疇としており、顧客から提供された設計図や仕様書に基づき、EMS受託先である製造業者が実装・組立・検査・量産までを実行します。プリント基板(PCB)実装や電子部品の搭載、完成品の組立から出荷まで一貫対応できる体制をもつEMSメーカーもいます。中には高い生産技術と自動化設備を武器に、IT機器、通信機器、車載機器、医療機器、産業用制御装置など、品質とスピードが求められる分野で広く採用されているEMSメーカーもあり、量産だけでなく、多品種小ロットや短納期対応の柔軟性も評価ポイントになります。

富士ソフトのDMS/EMSソリューション

富士ソフトのDMS/EMSソリューションは、設計支援から部品実装、筐体組立、出荷検査までを一貫して行う受託生産サービスです。多品種少量・量産への柔軟性を持ち、医療機器や車載機器、産業用制御装置など高い信頼性が求められる分野にも対応可能です。仕様検討の初期段階における設計提案や試作支援、国内製造拠点を活用した供給体制により、製品開発を総合的に支えるパートナーとして機能します。

ファブレス企業とOEMメーカーの関係性

ファブレス企業は自社工場(生産設備)を持たず、企画・設計・販売に専念し、製造は外部のOEM/EMSメーカーに委託します。ファブレスの機動力とOEMの生産技術・品質管理を掛け合わせることで、設備投資などの初期投資を抑えつつ短期間での市場投入や需要変動に柔軟に対応します。ファブレス企業とOEMメーカー、双方の強みを補完し合う関係が現代の分業体制を支えています。

OEMからOBMへ

OBM(Original Brand Manufacturing)とは、受託者だった製造者が、メーカーとして自社ブランドで設計・製造・販売まで一貫して担う事業形態です。自社ブランドを自社で製造する「一般的なメーカー」の形態ともいえますが、OEMやODMで経験をかさねた製造者が販売者も兼ねる形でOBMに進むケースも多いようです。OEMやODMと異なり、価格決定力や顧客接点を自社で握れるため、粗利とLTV向上、事業資産の蓄積に直結します。一方で、販売者となるためブランド構築・販路開拓・アフター対応などの投資と運営負荷、既存取引とのチャネル/価格競合などOEMやODMにおける製造者にはなかったリスクが伴います。自社のコア技術と市場ポジションが明確な企業に適した戦略です。

製造業OEMにみる二つの契約形態

OEM製造には、委託元が設計や仕様を定める「委託元主導型」と、受託先が製品開発まで担う「受託先提案型」という二つの契約形態が存在し、製品の独自性や技術的主導権、コスト構造などが大きく異なります。ここでは両形態の違いと、現場での使い分けを具体的に見ていきます。

委託元主導型OEM:設計・仕様提供から製造を依頼

委託元主導型OEMとは、製品の設計や仕様を委託元が決定し、その内容に基づいて受託先が製造だけを請け負う形態です。技術や開発の主導権を維持できるため、自社ブランドの品質や設計思想を反映しやすい点が特長です。医療機器や精密機器など、品質管理や安全基準が厳しい製品で多く採用されています。生産設備や人員リソースを外部に委託できる一方、ノウハウ流出や製造トラブルには契約面での対策が不可欠です。OEM製造を検討する企業にとって、主導権を握りつつ効率的に量産化を実現できる手段といえます。

受託先提案型OEM:開発製品をブランドに提案

受託先提案型OEMとは、製造者が自社で企画・設計・試作した製品を、販売力やブランド力を持つ企業へ提案し、そのブランド名で製品化される契約形態です。開発・生産の主導権は製造側にあり、委託元はマーケティングや販売に専念できます。中小メーカーにとっては、技術力を武器に市場展開を図る機会にもなり得ます。大量生産前提でなく、小ロットや試作段階からの柔軟な提案も可能なため、ブランド側にとってもリスクの低い外部製品調達手段です。ODMと重なる部分はありますが、「製造受託型の提案営業」として注目が高まっています。

製造業OEMが活用される業界と具体的な製品事例

電子機器におけるOEM製造

電子機器分野はOEM製造が盛んな業界の一つです。スマートフォンやPC、プリンター、ネットワーク機器など多岐にわたる製品で、ブランド企業が設計や仕様を定め、製造を外部のOEMメーカーに委託しています。台湾のFoxconnなど、技術力と大量生産体制を持つパートナーと連携することで短期間での市場投入やグローバル展開を可能にしています。一方で、高度な品質管理や知財保護が求められるため、委託元は契約段階でのリスク管理が不可欠です。電子機器におけるOEM製造は、急速な進化と多様化を支える分業体制の核となっています。

自動車業界におけるOEM製造

自動車業界では、部品単位から完成車レベルまで、ほとんどの自動車メーカーで幅広くOEM製造が行われています。電装部品やセンサー、エンジン制御モジュールなどを外部の製造業者が受託し、自社ブランド車両に組み込む形です。設備投資の抑制や生産設備の稼働率向上、生産能力の柔軟性確保が背景にあります。「委託元主導型OEM」と「受託先提案型OEM」の両者が存在し、いずれも生産技術・品質管理体制が重要です。業界特有の長期供給責任や安全規格への対応には、自動車メーカーとOEMメーカーとの高度な信頼関係が不可欠です。

化粧品・ヘルスケア分野のOEM

化粧品やヘルスケア製品では、小ロットの試作から大量生産まで柔軟に対応できるOEM製造が盛んです。大手の化粧品メーカーでもOEM,ODM事業を行っています。PB商品の拡充や越境EC対応において、迅速な商品化とコスト面での優位性をOEMが支えています。製造メーカーには品質管理や薬機法への準拠など、高度な生産技術とノウハウが求められます。委託元は企画力と販売チャネルに専念でき、分業による効率的リソース配分が可能です。OEMは競合との差別化戦略としても活用されています。

アパレル・食品・家電のOEM

アパレル、食品、家電といった生活密着型分野でもOEM製造が普及し、多くのナショナルブランドやPB(プライベートブランド)商品がOEMによって支えられています。流通大手が製造を外部の製造者に委託し、独自ブランドとして展開する例も典型です。大手のアパレルメーカー、食品メーカー、家電メーカーでも、生産設備や人員の余力を活かして増産に対応し、稼働率を高めつつ安定収益を実現しています。委託元は設備投資などの製造リスクを抑えながら、オリジナリティーある商品形態の展開が可能になり、市場変化に柔軟に対応できます。特に食品業界では、衛生管理やトレーサビリティを含めた品質要求が高まっており、高い製造技術力がOEMメーカーにも求められます。

コンビニエンスストアにおけるOEM製造

コンビニエンスストア業界では、おにぎり・惣菜・スイーツ・飲料など多くの商品がOEMによって製造されています。各チェーンはプライベートブランドとして商品を展開し、製造は専門メーカーが担います。コンビニエンスストア業界におけるOEMの特徴は「短期間での新商品投入」と「全国での品質統一」です。複数のOEM工場が地域ごとに連携し、統一レシピ・検査基準のもとで製造を行うことで、どの店舗でも同じ品質を実現しています。近年は健康志向・環境配慮型商品も増え、OEMが市場変化に迅速対応する共創モデルとして発展しています。

製造業OEMのメリット

委託元企業(ブランドを持つ側)が享受するメリット

生産コストと初期投資の大幅削減

OEM委託の大きな魅力の一つは、製造設備や人員に対する初期投資を抑えられる点です。新製品の開発や市場投入を検討する際、自社での生産体制を整えるには多額の資金と時間を要します。しかしOEMを活用すれば、既に製造設備を持つパートナーに生産を任せることができ、コスト面でのハードルを大幅に下げられます。加えて、設備保守や技術者の採用・教育といったランニングコストも回避できるため、限られた経営資源を製品企画やマーケティングに集中できるメリットがあります。

コア業務への集中と製品ラインナップの拡充

OEM製造を活用することで、企画・開発などの自社のコア業務に専念できる点は大きなメリットです。製造や在庫管理といった生産業務を外部に委託することで、限られた人員とリソースをブランド戦略や市場ニーズの分析といった高付加価値業務に集中させられます。また、OEMメーカーの技術力や既存設備を活用すれば、自社だけでは難しいカテゴリへの新製品投入や製品ラインナップの多様化も実現できます。特に多品種小ロットへの対応やスピード感ある展開が求められる市場では、OEMによる分業体制が強力な武器になります。

在庫リスクの低減と生産量の柔軟な調整

OEM製造の最大の利点の一つは、在庫リスクの大幅な軽減です。販売見込みが不確実な新商品や季節変動の大きい製品でも、生産量の調整がしやすく、小ロットでの生産委託が可能なため、余剰在庫や倉庫コストを抑えることができます。また、生産設備や人員の確保に悩むことなく、需要の変動に応じてOEMメーカーの生産能力を柔軟に活用できるのも強みです。自社工場を持たない企業にとって、外部リソースを活用することによる、生産量や納期の最適化を図れる点は事業リスクの軽減にも直結します。近年では需要予測と連動したOEM体制の構築も進み、より高度な供給戦略が可能となっています。

自社では困難な製品開発への参入

OEM製造は、限られたリソースしか持たない企業にとって、自社単独では参入が難しい製品分野に挑戦する有効な手段です。たとえば、生産設備や技術人員を新たに整える必要がある高機能機器や医療機器分野では、設備投資のリスクや技術流出の懸念が壁となります。こうした場面でOEMメーカーの生産技術やノウハウを活用することで、オリジナル商品としての競争力を保ちつつ、市場参入のハードルを大きく下げることが可能です。特にODM型に近いOEMでは、設計段階から受託メーカーの提案が得られるため、短期間での製品化や差別化にも貢献します。

受託先企業(製造を請け負う側)が得られるメリット

生産設備の稼働率向上と安定した収益確保

OEM製造の受託企業にとってのメリットの一つは、生産設備の稼働率向上です。自社ブランドだけでは稼働が不安定な製造ラインも、OEM製造の受託によって安定的に稼働でき、生産量の底上げと固定費の回収が可能になります。さらに、長期契約や定期ロットによる製造依頼があれば、収益の見通しも立てやすくなり、投資計画や人員配置の最適化にもつながります。特に精密機器や化粧品、電子機器業界などではOEM需要が安定しており、QCD(品質・コスト・納期)の管理体制が整った企業であれば高い競争力を維持できます。

新規技術やノウハウの蓄積と競争力強化

OEM製造の受託は、単なる製造請負にとどまらず、新規技術や設計ノウハウを吸収する機会でもあります。特に自動車業界や電子機器分野では、委託元が持つ高度な設計仕様や生産技術に触れることで、自社の技術力向上や生産プロセス改善につながります。また多様な製造形態や商品形態に対応する中で、業界ごとの品質管理基準や市場ニーズのノウハウも蓄積され、将来的な自社ブランド商品の開発にも活用可能です。こうした経験の積み重ねは、メーカーとしてのオリジナリティーと差別化要素を育て、競合他社との差を広げる大きな武器になります。

在庫管理負担からの解放

OEM製造の受託により、製造スケジュールや在庫管理は委託元のニーズに基づいて調整されるため、安定した生産量を維持することができ、受託先は在庫の過剰・不足リスクを最小限に抑えることができます。特に消費財や医療機器のように需要変動が大きい分野では、適切な在庫水準の維持が企業収益に直結します。OEM契約の多くでは、JIT(ジャストインタイム)生産や納品スケジュールの共有が行われ、受託先は計画的な部材調達と生産が可能です。在庫回転率の改善はキャッシュフローの健全化にもつながり、経営の安定性を高める効果があります。

製造業OEMのデメリットとリスク管理

委託元企業(ブランドを持つ側)の課題と対策

自社技術力・生産ノウハウの成長停滞リスク

OEM委託は製造を外部化する反面、自社内での技術蓄積や製造ノウハウの進化が停滞するリスクを伴います。特にODMに近いかたちで設計・試作工程をOEMメーカーに任せる場合、社内の技術者が製品構造や工程管理の知見を深める機会を失い、長期的には競争力の源泉となる技術力が弱体化する恐れがあります。こうした課題への対策としては、要所での共同設計や品質管理体制の確立、ナレッジ共有の仕組みづくりが不可欠です。OEMに依存しすぎず、自社の強みを育てる視点が求められます。

品質・納期に関するコントロールの難しさ

OEM委託では、製造工程が自社外で行われるため、品質や納期の管理において直接的なコントロールが難しくなります。特に複数の製造形態や部材供給が絡む場合、わずかな遅延や品質ばらつきが最終製品に波及するリスクもあります。これによりブランド価値が損なわれる可能性があるため、仕様書の明確化や品質管理ルールの徹底、定期的な監査などが重要です。また、受託先との密なコミュニケーション体制の構築も、安定供給と信頼性確保には欠かせません。

受託先の将来的な競合化とその回避策

OEM委託では、受託先に技術仕様や設計情報を共有するため、将来的な競合化リスクが避けられません。委託製品の逆設計による類似品展開や、委託による品質劣化の懸念も生じます。また、委託元の技術に依存しながら、自社ブランド化へ転換を図るケースも散見されます。これらを防ぐには、秘密保持契約(NDA)だけでなく、再委託の制限条項や知的財産権の帰属明記を含む契約の厳密化が重要です。さらに設計データの分割提供や仕様のブラックボックス化も効果的とされています。

【参考】JETRO『海外事業展開における秘密漏えい防止のための対策』
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2020/41c51279a01d72d7/1.pdf

原材料高騰による利益率低下の可能性

OEM委託では原材料価格の高騰が収益を圧迫しやすく、委託元が利益率を維持できなくなるリスクがあります。特に部品コスト上昇分を価格転嫁できず、メーカー依存の構造では「利益を確保できない状況」が現実化するケースも見られます。複数の製造メーカーとの分散契約、さらにはDesign to Cost(原価設計)などの方法論によって製品価格を初期設計から抑制する戦略が重要です。

受託先企業(製造を請け負う側)の課題と対策

生産量の不安定化と収益変動リスク

OEM製造において受託先が直面する最大の課題の一つが、生産量の変動による収益の不安定化です。ブランド側の販売計画や市場動向に左右されやすく、突然の増産要求や受注縮小に柔軟に対応する体制が求められます。特に近年は、原材料価格の高騰や為替変動などがコスト構造を圧迫しつつあるにもかかわらず、価格転嫁が進まないケースもいまだ存在しています。安定した生産量と収益の確保には、複数の取引先との契約バランスや、コスト見直し・契約見直しといった中長期的な視点が不可欠です。

自社ブランド育成の制約と技術流出のリスク

OEM製造では、受託先が自社ブランドを育てる機会が制限される点が課題です。製品は委託元ブランド名で市場に流通するため、製造者としての認知度や販売チャネルが広がらず、企業の独自価値が蓄積しにくい構造です。また、委託元から提供された設計情報や製造ノウハウのやり取りの中で、技術情報が社外に流出するリスクも存在します。特にODM的な関係性では、設計・開発に深く関わるため、知的財産管理や守秘義務契約(NDA)の不備が大きな損失を生む可能性もあります。OEMの形態を問わず、知財管理の徹底と契約書の整備は、製造側のリスクマネジメントの要です。

守秘義務契約と知的財産権の重要性

OEM製造においては、製品設計や製造プロセスに関わる技術情報の管理が極めて重要です。委託元との間で交わされる守秘義務契約(NDA)は、開示情報の範囲や保持期間、第三者への開示禁止などを明確に規定し、技術流出や不正利用のリスクを防ぎます。また、設計や開発に受託先が関与するODM型の場合は、知的財産権(特許・意匠・商標等)の帰属や使用条件についても詳細な契約が不可欠です。曖昧な取り決めは、後の係争や事業展開の障害となりかねません。OEM取引を長期的な戦略関係に育てるには、契約段階から法務的視点を組み込んだリスク管理が不可欠です。

失敗しないOEMメーカー選定と契約のポイント

OEMメーカーを見つける方法

信頼できるOEMメーカーを探すには、オンラインのマッチングサービスや製造業向け展示会の活用が効果的です。自社の企画や試作ニーズに合致する製造者を、ロット数・設備・製品形態などの条件で検索できます。特に、オリジナル商品を生産できる余力やノウハウのある企業を見極めるには、分業体制や品質管理の視点でもチェックしましょう。小売店・流通業との関係性や在庫供給体制も確認ポイントです。外部委託による設備投資の回避や、コスト面での優位性を得るには、早期段階からOEMメーカーと協議を重ね、主導権と情報の非対称性を見極めたうえで、最適なマッチングを図りましょう。

信頼できるパートナーを見極める重要視点

希望製品の製造可否と開発実績

OEMメーカーを選ぶ際は、自社が求める製品を実際に製造できるかどうかを明確に確認することが出発点です。設備や生産能力、対応可能なロット数、過去の開発実績をチェックすることで、試作から量産までの一貫対応が可能か判断できます。特に医療機器や自動車部品のように品質基準が厳しい分野では、ISO認証や他社委託での実績が信頼性の裏付けとなります。また、過去に手掛けたオリジナル商品や委託案件の蓄積は、その企業の技術力や市場適応力を示す材料です。単にコストの低さだけでなく、希望製品に近い開発事例を持つかを確認することが、最適なパートナー選定の鍵となります。

ロット数・納期対応力と生産キャパシティ

OEM製造を委託する際は、想定されるロット数に応じた生産体制と納期対応力を確認することが重要です。特に少量多品種や短納期が求められる業界では、生産設備の余力や人員体制がQCD全体に直結します。小ロット試作に柔軟なメーカーは、市場投入の迅速化に寄与しやすく、将来的な増産にも対応しやすいのが特長です。また、繁忙期における納期遵守や生産能力の可視化が可能かどうかも、信頼性を見極める基準となります。製造業における分業構造のなかで、ロットと納期に柔軟なOEMメーカーを選ぶことが、安定した供給と利益確保につながります。

品質管理体制と充実したサポート

OEM製造において品質トラブルは委託元ブランドの信頼を直撃するため、受託先の品質管理体制は最重要視されます。生産設備の清潔さや検査工程の有無に加え、トレーサビリティや不良時の対応力も評価軸です。また、試作段階から納品後までのサポート体制が整っていれば、設計変更や仕様調整にも柔軟に対応できます。海外OEM企業とのやり取りでは、言語や時差の壁を越えた対応力や人員体制もカギとなります。製造業者としての責任を果たすパートナーであるか、設備投資の姿勢や品質維持へのリソース投入からも見極めましょう。

費用感とビジネス計画への合致

OEM製造では、初期投資を抑えられる一方で、委託条件によっては生産コストや単価が割高になるケースもあります。ロット数・納期・品質基準などによって価格が変動するため、あらかじめ自社のビジネス計画とすり合わせ、想定利益と合致するかを確認することが重要です。また、将来的な増産や仕様変更の可能性も見越し、柔軟な対応が可能な製造業者を選ぶことがコスト最適化につながります。設備や人員体制の余力を持つOEMメーカーであれば、長期的な成長にも耐えうる「戦略的外部リソース」となり得るのです。

製造業におけるOEM契約で特に注意すべき時刻

技術仕様の明確化と責任範囲の規定

OEM製造においてトラブル回避の要は、仕様と責任範囲の明確化です。設計データ・材質・寸法・検査基準など、製造に関する技術仕様は可能な限り詳細に文書化し、両者が同意のうえで共有することが重要です。また、不具合が発生した場合の再製造や保証対応の責任所在も明確にしておく必要があります。仕様が曖昧だと、納品後に「設計意図の解釈違い」や「品質基準の相違」が発生しやすく、委託元と受託先の信頼関係を損なう結果になりかねません。OEM委託契約では、設計主導権や所有権の所在も含めた包括的な取り決めが求められます。

機密保持契約(NDA)と知的財産権の取り扱い

OEM製造では、設計図・材料選定・製造ノウハウなど機密性の高い情報が共有されます。これらの技術情報や生産ノウハウの漏洩を防ぐには、事前の機密保持契約(NDA)締結が不可欠です。特に、ODM的な関係や受託先からの設計提案がある場合、情報の帰属や知的財産権の扱いを曖昧にしておくと、製品販売後のトラブルにつながるおそれがあります。契約時には、開発した成果物の所有権・使用権の範囲を明確にし、どちらが権利を握るかを合意しておくことが重要です。信頼性の高いパートナーとの間でも、形式を整えた法的取り決めが安全な協業の礎となります。

製造業におけるOEMプロジェクトのロードマップ

OEM開発・製造の具体的なステップ

企画・打ち合わせからサンプル制作まで

OEM製造を成功させる第一歩は、受託先との緻密な打ち合わせです。委託元は、自社のブランド方針や企画意図、必要な機能や品質水準、ロット規模などを具体的に提示することが重要です。一方、受託先はそれに応じた設計案や生産技術のフィードバックを行い、双方の合意形成を図ります。仕様が固まったら、試作に進みますが、この段階では生産設備の適合性やコスト感の擦り合わせも不可欠です。試作品を通じて、生産技術や品質管理体制の実力を見極め、信頼できるパートナーかを見定めましょう。OEM製造の成否は、この初期フェーズでの情報共有と仕様明確化にかかっています。

製造・品質検査・納品までのプロセス

OEM製造における本格的な量産フェーズでは、製造スケジュールと生産能力の最適化が鍵となります。製造開始後は、委託元の仕様に沿った品質管理体制がどれだけ確立されているかが、ブランド価値にも直結します。受託先はロット単位での品質チェックや納品前検査を行い、不具合やリスクを最小化。特に電子機器や医療機器分野では、納品後のトレーサビリティ対応も重要です。また、納品形態(在庫型・直送型)や梱包仕様、輸送手段も事前に合意しておくことで、無駄なコストや納期遅延を回避できます。OEM委託では、品質・納品・物流すべての流れを一貫して設計することが成功の要です。

プロジェクトを円滑に進めるためのポイント

OEM製造の成功には、進行管理と連携体制の工夫が欠かせません。複雑化する調達・試作・量産の各フェーズを、いかに精度高く進めるかが「成功と失敗」を分けます。本章では、部材調達、小ロットから量産移行、そしてコミュニケーションと進捗管理の3点にフォーカスして、実務レベルでの対策とノウハウを紹介します。

部材調達におけるリードタイムの考慮

OEM製造では、部材調達のリードタイムを意識することが重要です。自社が意図する納期から逆算して必要部材を発注することが、欠品防止や納期遅延回避に直結します。特に調達リードタイムには発注から納品までの時間に加え、受入検査が含まれる点に注意が必要です。

調達部門と設計・製造部門の連携不足による滞留在庫や効率低下も注意が必要です。部門間の情報共有や連携強化が、QCD全体の最適化につながります。また、主要サプライヤーとの信頼関係構築やVMI(供給業者在庫管理)などの施策により、調達リードタイムの短縮と安定供給が期待できます。

小ロット・試作からの量産移行戦略

初期段階では小ロット試作を軸にテストマーケティングを行い、製品採用を慎重に進めることがOEM製造の定石です。これは在庫リスクを抑え、効率的に利益改善を図る手法として各業界で有効です。

試作から量産へ移行する際は、生産ラインバランス調整や製造工程の標準化、品質保証体制の確立といった制度化が不可欠です。また、デジタルツールを活用した試作データ管理やフィードバックループの構築は、品質改善だけでなく移行スピードの向上にも役立ちます。

契約前にMOQ(最低発注量)、ロット単位のコストや納期(リードタイム)、生産キャパシティを明確に確認し、書面で合意することで、トラブルを未然に防ぐ構えが重要です。

コミュニケーションと進捗管理の最適化

OEM製造では、進捗の見える化とリアルタイムな情報連携も重要です。製造メーカーとの定期的なミーティングや進捗報告、品質レビューの設定は、「仕様共有」「納期遵守」「トラブル対応」の基盤を築きます。

さらに、進捗管理のデジタル化(例:プロジェクト管理ツール)を導入することで、納期遅延リスクや認識ギャップを低減できます。コミュニケーション不足はOEMにおける失敗の大きな要因ですが、こうした対策によってトラブルの早期検知と解決が可能となります。

製造業OEMを“外注”ではなく成長パートナーとして捉える時代へ

OEMは単なるコストダウンの手段にとどまりません。自社のマーケティング・企画力と、外部の製造・技術力を融合させることで、新たな市場価値を創出する“成長戦略の核”として位置づける企業が増えています。特に製造設備を持たない企業や、小ロット・試作段階からスピーディに市場投入を目指す企業にとって、OEMはリスクを抑えながら柔軟な事業展開を実現する強力なパートナーシップとなります。

近年では、電機・精密機器・医療機器・自動車部品など多様な分野で、OEMは単なる製造委託から、開発・設計支援、品質保証、調達連携までを含む包括的サービスへと進化しています。今後、製造業におけるOEMの役割は、単なる“生産請負”から、サプライチェーン全体を支える“共創パートナー”へと変わっていくでしょう。

事業成長を加速させるためには、信頼できるOEMメーカーの選定が極めて重要です。技術力・対応力・品質管理体制はもちろん、将来の製品ロードマップや開発スタイルに柔軟に対応できるパートナーこそが、企業の競争力を根本から支えます。

富士ソフトのOEMサービスは、単なる委託製造を超えた「共創型支援」です

富士ソフトは、製造業向けのOEM支援において、設計支援・組込みソフトウェア開発・部材調達・量産立ち上げ・品質管理までをワンストップで提供できる体制を構築しています。FA機器や産業機器や一般医療機器、IoTデバイスなどの高信頼性分野において、様々な開発・製造ノウハウを有しており、多くの製造業様からOEMメーカーとして選ばれています。

また、国内の製造ネットワークやエンジニアリングリソースとの連携により、試作段階からの柔軟な対応、小ロット対応、将来的な増産スケーラビリティにも対応可能です。技術情報の機密保持や知財管理にも万全を期しており、安心して開発をお任せいただけます。

OEM受託先を「外注先」ではなく「事業共創パートナー」として選びたいとお考えであれば、ぜひ富士ソフトのOEMサービスをご検討ください。開発の早さ・品質・拡張性を兼ね備えた体制で、貴社の製品開発と市場展開を全力でご支援いたします。

製造業OEMにおけるFAQ

Q1. OEMとは何ですか?

A1.
OEMは “Original Equipment Manufacturing(相手先ブランド製造)” の略称であり、製造業において一般的には「販売者(委託元)がブランドとして企画・設計・販売を主導し、その製造工程を製造者(受託先)に外部委託する」分業型のビジネスモデルを指します。
この仕組みによって、販売者側は設備投資や生産ライン運営などの負担を軽減でき、製造者側は設備稼働率・収益機会を高めることができます。

Q2. OEMとよく混同される用語には何がありますか?どう違うのですか?

A2.
製造業においてOEMと似て使われる用語には、主に ODM、EMS、PB(プライベートブランド)などがあります。

ODM(Original Design Manufacturing):受託先が製品の設計から製造まで一貫して担うモデル。委託元はブランド/販売に専念する場合が多い。OEMとは「設計の主導権」が異なります。

EMS(Electronics Manufacturing Service):電子機器を中心とした製造受託サービス。顧客からの設計図・仕様書をもとに、実装・組立・検査・量産までを受託するもの。OEM/ODMとは対象領域・受託範囲が少し異なります。

PB(プライベートブランド):流通業者・小売業者などが自社ブランドで販売する商品を、OEMメーカーに製造委託する形。OEMの典型的な活用形態のひとつです。

Q3. 製造業においてOEMを活用するメリットは何ですか?

A3.
OEMを活用することで、委託元企業・受託先企業双方にメリットがあります。主なものを整理します。

委託元(ブランド側)のメリット:

  • 設備投資・人員採用・技術設備にかかる初期コストを抑えられる。
  • 自社のコア業務(企画・開発・販売・マーケティング)にリソースを集中できる。
  • 製品ラインナップの拡充、小ロット・短納期対応・多品種展開がしやすくなる。
  • 在庫リスクの軽減。需要変動や季節変動の大きい製品でも生産量を柔軟に調整可能。
  • 自社だけでは参入が難しい製品分野(高機能機器・医療・精密機器など)への展開機会を得やすい。

受託先(製造側)のメリット:

  • 自社設備の稼働率が上がり、固定費の回収がしやすくなる。
  • 長期契約・定期ロット受注によって収益の予見性が高まる。
  • 委託元の設計/仕様を通じて技術ノウハウが蓄積され、自社ブランドや次の製品開発力の強化につながる。
  • 在庫管理負担が軽くなる(受託する側として安定した生産スケジュールが組みやすい)。

Q4. 製造業におけるOEMにはどんなリスク・デメリットがありますか?

A4.
OEMには多くのメリットがありますが、同時にリスクや注意すべき点も存在します。以下が主なものです。

委託元側のリスク:

  • 製造を外部委託することで、自社内での技術力・製造ノウハウの蓄積が進まない可能性。これにより長期的な競争力が落ちる恐れがあります。
  • 製造工程が外部にあるため、品質・納期の管理コントロールが難しくなる。ブランドへの信頼損失につながる可能性あり。
  • 受託先が将来的に自社ブランド化・競合化するリスク。設計情報・仕様の流出リスクも。
  • 原材料高騰、為替変動などによるコスト上昇を価格に転嫁できないと、利益率低下の可能性。

受託先側のリスク:

  • 受注量の変動による収益の不安定性。委託元の販売動向に大きく左右される。
  • 自社ブランドを育てにくい構造。ブランド認知や販売チャネル構築が難しい。
  • 技術流出・知財管理の漏れ。特に委託元から設計情報を受ける場合、守秘義務契約(NDA)や知財帰属の確認が必須。

Q5. OEMパートナー(受託先)の選定・契約時に押さえるべきポイントは?

A5.
OEMを成功させるためには「信頼できる製造パートナーの選定」「契約の明確化」が重要です。主なチェックポイントを整理します。

  • 受託先が「希望製品の製造が可能な設備・能力・実績を持っているか」など、ロット数、品質水準、過去の開発実績を確認。
  • 受託先の「納期・生産キャパシティ・短納期・多品種対応力」。特に少量多品種/短納期を求めるなら、柔軟性のあるメーカーを選ぶべき。
  • ブランド毀損リスクを低減するため、受託先の品質管理体制・検査工程・トレーサビリティ・不良対応力を確認。
  • 契約時に「技術仕様・責任範囲」を明確にすること。設計図・材料・検査基準・不具合対応・納期遅延時の対応などを文書化する。
  • 「守秘義務契約(NDA)」「知財の帰属・使用権」の取り決め:設計/製造情報の流出防止、後の係争防止。
  • コスト・利益構造の確認:MOQ(最低発注数)、単価、将来的な増産の見込み、コスト変動リスク(原材料高騰等)も想定に入れておく。

Q6. OEMプロジェクトを進める際の典型的なロードマップ(ステップ)は?

A6.
OEMでの製品化をスムーズに行うためには、段階的にプロジェクトを進めるのが一般的です。代表的なステップは次の通りです。

  • 企画・打ち合わせ/仕様決定:委託元がブランド方針・機能・品質水準・ロット数・納期などを整理し、受託先と打ち合わせ。仕様を明確化。
  • 試作フェーズ:小ロット・試作品を使って設計・生産適合性を確認。設備・コスト・生産技術の合意もこの段階で行う。
  • 量産立ち上げ/製造・検査・納品:量産体制の構築、製造スケジュール確定、品質検査・トレーサビリティ・納品仕様・物流を含めて進める。
  • 運用・改善フェーズ:納品後のトラブル対応、仕様変更、リードタイム短縮・コスト低減・安定供給体制の構築。部材調達リードタイム・生産ラインの最適化も含む。
  • パートナーシップ深化:製造を単なる委託から「成長パートナー」へと位置づけ、設計段階から協働・ノウハウ共有を図る。

Q7. OEMを「コスト削減のためだけの外注」ではなく、「成長パートナー」として捉えるにはどうすれば良いですか?

A7.
近年、OEMの捉え方は変化しており、単なる外注ではなく「外部リソースを活用して新たな市場価値を創出する共創パートナー」としての役割が重要になっています。
そのためには次のような視点が有効です:

  • 製造パートナーを選定する際、ただ「安く作れるか」ではなく、「技術・開発ノウハウ・短納期対応・多品種対応・将来の拡張性」なども評価する。
  • 製造パートナーと早期から設計・量産・品質管理・調達・物流までの連携を図り、“設計から製造・出荷”までを一体化して進める。
  • 自社の製品ロードマップに対して、製造パートナーがどう貢献できるか、将来的なスケールアップや新分野への展開を見据えた関係構築をする。
  • 製造パートナーから得られる技術/生産ノウハウを自社に還元し、自社の競争力も強化していく。
  • 契約・運用面でも「受託先⇔委託元」の上下関係ではなく、「共創関係」「Win-Win関係」を前提としたガバナンス体制を整える。

Q8. OEM活用が特に有効な業界・製品にはどのようなものがありますか?

A8.
製造業OEMは幅広い分野で活用されていますが、特に以下のような業界・製品でメリットが出やすいです:

電子機器分野:スマートフォン・PC・プリンター・ネットワーク機器など。設計を委託元が行い、受託先(OEM/EMS)が量産を担う形。短納期・多品種・グローバル展開を支える体制として普及しています。
自動車部品・完成車:部品単位から完成車レベルまで、外部パートナーによる製造が多く存在。電装部品・センサー・制御モジュールなど。高品質・長期供給責任が求められるため、OEMパートナーとの信頼関係が重要です。
化粧品・ヘルスケア:小ロット試作からの製造、PB(プライベートブランド)展開、越境EC対応などで、製造委託(OEM)活用が拡大しています。薬機法対応・衛生管理なども製造者に求められることが多いです。
アパレル・食品・家電:生活者向けの分野において、委託元が製造設備を持たずにOEM委託する例も多く、製造コスト・設備稼働率の観点から効率化が図られています。
コンビニエンスストア:コンビニエンス業界では、おにぎり・惣菜・スイーツ・飲料など多くの商品がOEMによって製造されています。特徴は「短期間での新商品投入」と「全国での品質統一」です。複数のOEM工場が地域ごとに連携し、統一レシピ・検査基準のもとで製造されています。

Q9. OEM契約で特に注意すべき技術・知財・品質・納期に関する事項は?

A9.
OEM契約では、下記のような技術・知財・品質・納期に関する事項を特に慎重に取り決めることが重要です。

技術/仕様の明確化:設計図・材質・寸法・検査基準・生産条件など、製造に関わる技術仕様を詳細に文書化し、双方で合意。仕様が曖昧だとトラブルの温床になります。
守秘義務(NDA)・知財の帰属:設計情報・ノウハウ・技術データの流出を防ぐため、NDAを締結。さらに、設計開発に受託先が関与する場合(ODM寄りの場合)、特許・意匠・商標など知財の帰属・使用条件も明確に。
品質管理・トレーサビリティ:製造工程・検査工程・不良品対応・出荷後の追跡可能性(トレーサビリティ)など、品質維持の仕組みを契約段階で確認。OEMでは委託元の信用が受託先に依存することも多いため重要。
納期・量産移行・部材調達リードタイム:部材調達から生産・検査・出荷までのリードタイムを逆算して計画する。特に少量多品種・短納期・変動需要のある製品では、納期遅延が大きなリスク。
コスト変動/原材料高騰対策:原材料価格の上昇・為替変動などが利益率を圧迫する可能性があるため、生産コストの変動性を契約や事前設計(Design to Cost)で織り込むことが推奨されます。

Q10. 少量多品種・短納期・グローバル展開など、近年の製造業OEMにおけるトレンドはありますか?

A10.
はい。近年の製造業OEMには、次のようなトレンドが見られます:

  • 製造を「単なる外注」ではなく、「共創パートナー」として位置づけ、設計から製造・品質・調達・物流までを一貫して連携する体制が求められています。
  • 小ロット・多品種対応や短期投入(試作フェーズから市場投入までのスピード化)が重視されており、設備を持たないファブレス企業とOEM/EMSメーカーとの連携が活発です。
  • 海外製造・グローバル調達・越境EC向け対応など、サプライチェーン境界を越えた製造委託の枠組みも広がっています。品質・知財・物流・関税・為替リスクなどが併せて議論されています。
  • 製造パートナーが設計支援・試作支援・増産スケーラビリティまでカバーする「DMS/EMS(Design & Manufacturing Service/Electronics Manufacturing Service)」型のモデルが台頭してきています。

Q11. OEMをスタートする際、どのようなチェックリストを使えば良いですか?

A11.
OEMを検討・開始するにあたって、以下チェックリストを参考にするとよいでしょう:

  • 自社の「ブランド方針」「製品企画」「ターゲット市場」「販売戦略」が明確か
  • 想定する「ロット数」「納期」「価格帯」「品質水準」が整理されているか
  • 製造候補先の「設備/実績/ロット対応力/品質管理体制/対応可能領域」が確認済みか
  • 契約時に「設計仕様・材質・寸法・検査基準・納期」「NDA」「知財帰属」「再委託禁止・技術流出防止」「責任・保証/不具合時対応」が盛り込まれているか
  • 部材調達・納期リードタイム・量産体制移行の計画が立っているか
  • 少量/試作→量産への移行スケジュールと生産ラインの整備が検討されているか
  • コスト構造・利益構造が計算されており、原材料高騰・為替変動などのリスクも想定されているか
  • 製造パートナーとのコミュニケーション/進捗管理/品質レビュー体制が設計されているか
  • 製造パートナーを「外注」ではなく「共創パートナー」として育てる仕組みが検討されているか

Q12. OEMを活用する際、どんな企業にとって特に有効ですか?

A12.
OEM活用が特に有効な企業の特徴としては以下のようなものがあります:

  • 自社に製造設備がない、または設備投資を抑制したい委託元企業
  • 製品ラインや品種を拡大したい、短納期で新製品を市場投入したい委託元企業
  • 技術やブランドを持っていて、製造を外部に委託することでリスクを抑えたい委託元企業
  • ファブレス/設計・企画に集中したい企業で、製造をパートナーに任せたいと考える委託元企業
  • 製造リソースに余力があり、稼働率を上げたい受託先企業

Q13. OEMをやめて自社製造(OBM:Original Brand Manufacturing)に移行するケースはありますか?

 A13.
はい。OEMを受託していた製造者が、ある段階で自社ブランド製造・販売を行う「OBM(Original Brand Manufacturing)」に移行するケースがあります。
OBMは、設計・製造・販売までを自社で担う形態であり、価格決定力や顧客接点を自ら握れるため、粗利・LTV(顧客生涯価値)向上・事業資産化に有利です。一方で、ブランド構築・販路開拓・アフターサービスといった運営負荷も伴います。自社の技術・市場・ブランドポジションが明確である企業にとって有効な成長戦略です。

Q14. 製造業OEMを成功させるための「勝ちパターン」はありますか?

A14.
成功するOEM活用には、以下のようなパターン・ポイントがあります:

  • 製造パートナーを「製造だけの外部委託先」ではなく、「設計・品質・生産・調達・物流を共に考えるパートナー」として早期から連携する。
  • 自社の強み(ブランド力・企画力・マーケティング力)を明確にし、それを補ってくれる製造パートナーの選定を行う。
  • 初期段階(試作・少量生産)を重視し、量産移行までのプロセスを丁寧に設計。小ロット・短納期を武器にして展開。
  • 品質・納期・コスト(QCD)を確保できる体制を構築。特に品質やトレーサビリティが求められる分野(医療機器・自動車部品など)では、この体制が事業の生命線。
  • 契約・技術・知財・リスク管理を事前にきちんと設計。仕様ズレ・納期遅延・コスト上昇リスクを事前に想定。
  • 製造パートナーとの信頼関係を継続的に育て、将来的な増産・新製品展開・技術共有を見据えた関係構築をおこなう。

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