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ソフトウェア部品に関するリスクを管理するためのOSS管理&SBOM管理ツール。 豊富な解析機能と圧倒的な情報量でSBOMおよびレポート(通知ファイル)の生成などお客様の脆弱性対策を強力にサポートいたします。
公開日:2025年7月31日
ソフトウェアを取り巻くサイバーリスクが急速に拡大する今、世界各国で「SBOM(ソフトウェア部品表)」の義務化が進んでいます。脆弱性の見逃しを防ぎ、サプライチェーンの透明性を確保するために、企業が今まさに取り組むべき対応とは。その背景と実務対応を徹底解説します。
注目ソリューション
業界標準ともいえるBlack Duck SCAの強力な機能で、お客様のSBOM生成やOSSの脆弱性対策をサポートします。
昨今、グローバルに広がるソフトウェアのサプライチェーンは、目に見えない脆弱性によって深刻なセキュリティリスクに晒されています。攻撃者は中間の部品や依存ライブラリを狙い、企業や国家インフラまで波及するサイバー攻撃を展開しています。その対策として、SBOM義務化の動きが急速に進んでいます。
ソフトウェア開発は無数のOSS・サードパーティ依存コンポーネントで構成されており、それらは外部ベンダーにまたがる複雑な構造を形成しています。この「見えない構成情報」は、重大な攻撃の隠れ蓑になり得ます。
• Log4Shell(CVE 2021 44228):Java汎用ライブラリApache Log4jに潜む脆弱性。世界中で数億台のサーバに影響を及ぼし、パッチが容易ではないため、SBOMがなければ検出不能なレベルに達していました。
• SolarWinds事件:更新署名されたOrion管理ソフトに攻撃コードが混入。18,000以上の顧客に展開され、米国政府も被害を受けました。SBOMがあれば被害範囲が可視化でき、対策が迅速に行えた可能性があります。
これらの事例は、「情報がない=安全ではない」ことの象徴です。SBOMは、ソフトウェアを“材料リスト”化し、未知の攻撃にも耐えうる透明性を提供します。
OSS活用の拡大により、ライセンス遵守(GPL、MIT、Apacheなど)や既知・未知の脆弱性(CVE)を把握・管理する必要性が高まっています。SBOMは、構成要素ごとのライセンス情報やバージョン、依存関係を明示し、法的リスクとセキュリティリスクを同時に可視化できる唯一の手段です。欧米政府や企業がSBOM導入を義務化し始めている背景には、「OSS依存=無秩序」という常識を変え、セキュアで法的にも安全な開発環境を実現したいとの強い意向があります。
このように、サプライチェーンの複雑化と世界的な攻撃事例、OSS利用による二重リスクにより、SBOMの導入は待ったなしの状況です。特に欧米でのSBOM義務化・調達要件化は急速に進んでおり、日本企業にとっても経営・調達・法務・開発を跨ぐ対応が求められています。
主要国ではSBOM義務化に向けた動きが加速しており、米国、EU、日本それぞれで異なる法的枠組みと実務要件が進行中です。本節では、各国の現状と今後の展開を整理し、自社製品の輸出・調達に備えるために注視すべきポイントを解説します。
2021年5月、バイデン大統領による大統領令EO 14028が発出され、連邦政府向けソフトウェア供給者にSBOMの提供が義務化されました。同年7月、NTIA(米国商務省電気通信情報局)は最低要素セットを策定し、米国政府のソフトウェア調達におけるSBOM要件を明確化しました。これにより、SBOMは政府調達市場において実質的な「入口条件」となり、民間ベンダーにも波及しており、2023年秋以降は連邦政府案件での提出が標準になっています。
EUでは、2024年12月にCRAが施行され、2027年12月以降「デジタル要素を持つ製品」をEU市場で販売する際、SBOM生成と保持が義務化されます。CRAは技術文書の一部としてSBOM提出を求め、市場監視当局への供与も定めています 。特にIoTや組み込み機器など、digital products with digital elements(PDEs)を扱う企業は早急な対応が必要です。
日本では経済産業省が2023年に「ソフトウェア管理に向けたSBOM(Software Bill of Materials)の導入に関する手引ver1.0」を公表し、2024年8月にはver2.0が公開されました。これにより、導入・活用の実践的手法や契約・取引モデルに関するガイドが整備され、SBOMをサプライチェーンで求める前提条件が整いつつあります。医療機器では薬機法改正の流れでSBOM利用が促進され、「政府調達」や「規制対応」の文脈では実質的に義務化が進んでいると評価されています。
SBOM義務化の背景を理解するには、まずSBOMそのものの本質を知る必要があります。透明性とトレーサビリティを確保する「ソフトウェアの部品表」が、なぜ今これほど重視されているのかを解説します。
SBOM義務化の波を受け、企業はソフトウェアの構成を明確に示す手段が不可欠になりました。このセクションでは、SBOMとは何か、そして製造業のBOMや食品表示にたとえながら、ソフトウェアサプライチェーン全体をどのように可視化し、依存関係を追跡するのかを解説します。
SBOMは、ソフトウェアを構成する全コンポーネントを「材料リスト」として可視化する仕組みです。製造業のBOMのように、それぞれの部品名・バージョン・供給元を明記し、食品の原材料表示のように利用者に“何が含まれているか”を見せることができます。これにより、非技術部門でも直感的に理解でき、ライセンスやセキュリティ要件の確認が可能な環境が整いました。
SBOMには、コンポーネント名、バージョン、ライセンス情報、依存関係、製造元、ハッシュ値などが含まれます。これらをCycloneDXやSPDXフォーマットで整理することで、どのOSSがどこで使われ、どのライブラリに依存しているかが一目でわかります。たとえば、特定の脆弱性CVEがWebライブラリに見つかった場合でも、SBOMによって影響範囲を即座に追跡し、パッチ適用や代替ライブラリへの切り替えを迅速に実施できます。このように、SBOMはソフトウェアの透明性を高め、トレーサビリティとセキュリティ対策を強化する要(かなめ)となります。
米国NTIAが提示する「SBOM義務化」の基本要件は、SBOMが実用的・信頼的に機能するための最小限の要素を定義しています。これらの要素が整備されることで、企業側としても、ソフトウェア資産の透明性、依存関係の可視化、脆弱性管理などが比較的容易になり、結果としてサプライチェーンリスクの低減に直結することになります。
NTIAの「Minimum Elements for an SBOM(2021)」では、以下の7つの基本データフィールドを必須としています。
これらは、SBOM を通じて「構成要素」「どこで使われているか」「誰がいつ作ったか」を正確に把握するために不可欠なものです。
さらに、NTIAは運用面の要件も定めています
これらの要件は、SBOMをただのリスト要約ではなく、運用可能なサイバーセキュリティ資産として機能させるために設計されています。
SBOM義務化に対応し、コンプライアンス遵守、セキュリティ強化、コスト低減、海外調達の要件対応など、難しい課題に同時に対処していくためには、最低限の7要素+運用ルールを整備し、自動生成→継続更新の仕組みを開発フローに組み込む必要があります。
自社の状況に応じたSBOM義務化に対応する上で、どのフォーマットがどのような特徴を備えているかを把握することが非常に重要です。主要な3種類のフォーマットにも、それぞれ異なる強みと用途があります。
SPDXはLinux Foundation主導のオープン標準で、ISO/IEC 5962規格にも準拠しています。バージョン3.0では、ライセンス、著作権、脆弱性参照など詳細なメタデータを豊富に格納可能です。ライセンス管理や法令遵守が重要な製造業・医療機器開発企業には最適です。
OWASP(Open Web Application Security Project)が支援するフォーマットで、JSON/XML形式の軽量設計が特徴です。脆弱性スキャンや依存関係解析に強く、セキュリティ対策やCI/CDパイプラインへの組込に適しています 。
ISO/IEC標準のSWIDタグは、ソフトウェア資産の識別と管理に特化したフォーマットで、バージョンやライセンス、製造元情報などを含みます。インストール済みソフトウェアの構成可視化やコンプライアンスには有用ですが、依存関係やライセンス詳細は含まず、完全なSBOMには不向きです。
複数の目的をカバーする場合は、SPDXとCycloneDXを併用し、必要に応じてSWIDを補完的に使う戦略が効果的です。
ただし、フォーマット間の変換では情報の欠損リスクがあります。例えばCycloneDXに含まれるPURL(Package URL)がSPDXに正確にマッピングされず、ハッシュ値等が失われることがあります。これを防ぐには、Protobomのような中間表現を用いたツール導入が有用です。Protobomを使うと異なるフォーマット間での変換でデータ欠落を最小限に抑えることができます。
SBOM義務化の流れに応じて、SBOMを導入することで企業はサイバーセキュリティ強化・法務リスク回避・開発効率向上の三位一体のメリットを享受できます。
SBOM(ソフトウェア部品表)の義務化は、単なる法規制への対応ではなく、企業のサイバーセキュリティ戦略において重要な武器となります。とりわけ、脆弱性の早期発見と迅速な修正対応によるリスクの最小化は、全てのソフトウェア提供者・利用者にとっての優先課題です。SBOMを適切に活用することで、製品に含まれるすべてのソフトウェアコンポーネントを可視化し、新たな脆弱性が発覚した際の影響範囲の迅速な特定と、対応の加速が可能になります。
Apache Log4jやSolarWinds事件のようなインシデントでは、対象コンポーネントが自社製品に含まれているかどうかを即時に判断できないことが、対応の遅れと被害拡大を招きました。SBOMを整備していれば、脆弱性データベース(例:NVD、CVE)と照合することで、該当コンポーネントを含む製品を即時に把握できます。
日本の経済産業省が実施した医療機器業界でのSBOM活用実証では、80以上のOSSを含む製品において、脆弱性対応の調査・管理工数が手動比で約70%削減されたと報告されています*1。
※1 経済産業省におけるサイバーセキュリティ施策の取組状況について
SBOM義務化の流れを受け、企業はただのセキュリティ強化ではなく、法的・規制対応の効率化にもSBOMを活用し、ブランド信頼を守る必要があります。
GPLをはじめとするOSSライセンスは法的拘束力があり、違反が訴訟や賠償金につながることもあります。たとえば、CiscoがGPL違反で数百万ドルの賠償金を支払った事例や、D-LinkやTomTomが訴訟対象となりました。SBOMは、使用中のコンポーネントのライセンスを網羅的かつ機械可読に管理し、「知らなかった」では済まされない法的リスクを低減します。
医療機器業界では、FDA(Food and Drug Administration)が2023年10月以降、SBOMを含まないプレマーケット申請を拒否可能と明記しています。CRA(EUサイバーレジリエンス法)でもSBOMは製品安全・セキュリティガイダンスの中心であり、2027年以降、SBOMに対応していないデジタル製品は、ECでは販売できなくなりますが、SBOMを適切に整備することで、監査時の説明責任を果たし、承認遅延や罰則リスクを防ぎ、法務・コンプライアンス部門の負荷を軽減することができます。
SBOM義務化の圧力が高まる中、SBOMは単なるコンプライアンス対応ではなく、開発と製品品質の両面で価値を提供します。以下、具体的な効果を解説します。
開発初期にSBOMをパイプラインに組み込むことで、採用予定のソフトウェアコンポーネントが既知の脆弱性やライセンス違反を含むかどうかを自動判定できます。これにより、問題が潜在化する前に選定を行い、後からの手戻りやリスクによる開発遅延を未然に防ぎます。
SBOMにより、ソースコードからバイナリに至る全構成要素が明確化されるため、不具合発生時の原因特定やパフォーマンス劣化の要因分析がスピーディになります。さらに、スプリントごとにSBOM生成・検証を組み込むことで、全体的な品質向上と効率的なサイクル改善を実現します。
このようにSBOMは、義務化への対応としてだけでなく、開発生産性の向上と製品品質の強化に直結する戦略的資産です。SDLCの各段階に組み込み、自動化することでコスト削減と競争力強化を両立できます。
SBOM義務化に備えるには、目的の明確化から運用体制の構築、ツールの選定・CI/CD連携まで一連のステップが不可欠です。ここでは、その実践的アプローチを解説します。
SBOM義務化が加速する中、単にツールを導入するだけでは十分な対応とは言えません。まず取り組むべきは、自社の製品開発や調達プロセスにおける「なぜSBOMが必要か」、「どこまでを対象とするか」を明確にする戦略的な準備です。目的や適用範囲を定めずにSBOMを導入すると、必要な情報が網羅されなかったり、不要な工数が発生したりする恐れがあります。この段階での丁寧な設計が、後の運用効率とコンプライアンス達成に直結します。
SBOM導入の第一歩は、「何を目的に導入するのか」を明確にすることです。たとえば、サイバー攻撃に備えて脆弱性管理を強化したいのか、OSSのライセンス管理の不備による訴訟リスクを回避したいのか、あるいはソフトウェア構成の可視化によって開発効率や品質を向上させたいのか。それぞれの目的に応じて、SBOMに含めるべき構成要素やメタデータ、必要な精度も変わります。NTIAやOWASPのガイドラインに準拠しつつ、目的別に最適なSBOMフォーマット(SPDX、CycloneDX、SWID)を選定することが肝要です。
SBOMの適用範囲を定義するには、まず自社製品のソフトウェア構成を細かく把握することが不可欠です。使用しているOSSやミドルウェア、サードパーティ製ライブラリ、独自開発コードの比率を明らかにし、それぞれの由来やバージョン情報、依存関係を整理しましょう。さらに、開発委託や共同開発など、外部との契約形態によってはSBOM情報の共有や提供義務が発生する場合もあります。脆弱性通知や修正の責任範囲も契約により異なるため、5W1H(誰が・何を・いつ・どこで・なぜ・どうやって)を軸にSBOMのカバー範囲を定義することが、導入後のトラブル回避につながります。
SBOM義務化に備えるには、単なるツール導入ではなく、解析から可視化、自動生成までを見据えた戦略的運用が不可欠です。有償・無償を問わず自社の目的—脆弱性対応、ライセンス監査、品質可視化—に応じた機能や性能、UI・日本語対応、他ツール連携、コストなど多角的に比較し、最適なSBOM生成環境を整備します。
SBOMツール選定では、CycloneDXやSPDXフォーマット対応の有無、誤検出率、OSSのコンポーネント解析精度が重要です。NITAやNISTの手引に準拠した構成要素のインベントリ生成が可能か、OSSライセンス監査機能が搭載されているかも要点になります。UIや日本語対応なども国内のみで使う場合は重要になります。また、提供形態(SaaS/オンプレ)やサポート体制、他のセキュリティ対策ツールとの連携状況も重視しましょう。
ビルドのたびにSBOMを生成するには、GitHub Actions、Jenkins、GitLab CI/CDなどへの統合が鍵になります。例えば、GitHub Actionsにcdxgen-actionを導入すれば、毎回のビルドでSBOMを自動生成・SPDX形式でコミット可能です。JenkinsではSBOMプラグインで依存関係をスキャンし、ビルド後レポートをアーティファクトとして保存、さらにはpipeline内でアラートを出す実装も可能です。こうした自動化により、ソフトウェア資産管理が手動から自動化され、開発者の負荷を軽減しつつ、生成・フォーマットの一貫性と品質が担保されます。
SBOMは一度作成すれば終わりではありません。Build SBOMとRuntime SBOMの活用、コンポーネント解析の精査、継続的な更新と保管、納品時対応など、実用フェーズにおける管理体制の整備が不可欠です。継続的運用に必要な視点と対策を総合的に解説します。
SBOM義務化への対応では、Build SBOMとRuntime SBOMの両方を組み合わせた構成把握が不可欠です。Build SBOMは、ビルド時に使用されたOSSの依存関係を静的に記録するもので、CycloneDXやSPDXなどのフォーマットで出力可能です。一方Runtime SBOMは、実際の実行環境で読み込まれたミドルウェアや動的リンクライブラリなどを含み、運用時のソフトウェアコンポーネントを正確に反映します。両者を補完的に運用することで、サプライチェーン全体の可視化精度が向上し、SolarWinds型のサイバー攻撃に対する脆弱性検知も強化されます。
SBOMツールは、自動化されたコンポーネント解析により依存ライブラリやバージョンを検出しますが、ハッシュ値の不一致やシンボリックリンク、ネストされたOSSモジュールなどにより、誤検出・検出漏れが生じることもあります。これを補うには、ログの手動確認や解析対象の再スキャンが有効です。また特定できなかった要素は「既知の未知」として管理台帳に明示し、後続のリスク評価やコンプライアンス対応に活用します。
ソフトウェアのライフサイクル全体にわたりSBOMを管理するには、変更があるたびに再生成し、過去バージョンとの変更履歴を追跡できる仕組みが必要です。NTIAやCISAの手引では、SBOMは製品提供期間中、最低でもサポート期間中は保管すべきとされています。保管にはソフトウェア資産管理システムやインベントリツールを活用し、問い合わせや監査対応に備えましょう。
欧州のCRAや米国大統領令(EO 14028)により、取引先からSBOMの提出を要求される機会が増えています。この際には、あらかじめ共有範囲やフォーマット(SPDX、CycloneDX、 SWID)を明確化し、必要に応じて機密情報のマスキングや対象モジュールの限定など柔軟な対応が求められます。事前の運用プロセス策定とコンプライアンス部門と連携しておくことでスムーズな提出ができる環境を整えておきましょう。
SBOM(Software Bill of Materials)の義務化が進む今、企業間取引において「SBOMを誰がどのように作成・提供するか」は深刻な課題となっています。特に問題なのが、SBOMの作成や更新にかかる工数やコストはサプライヤー側が負担する一方、得られる便益——つまり脆弱性対応の迅速化やセキュリティ対策の強化——はバイヤー側に集中するという“コストと便益の非対称性”です。このギャップを埋めなければ、SBOMは継続的に運用されず、制度としても形骸化しかねません。
この非対称性を是正し、健全なサプライチェーンを維持するためには、SBOM提供に関する明確な契約条項が必要です。具体的には、提供頻度やフォーマット(SPDX、CycloneDXなど)、責任分担、更新のタイミング、対価の有無などを文書化することが重要です。
経済産業省が改訂したガイドでも、「SBOMに関する要件、責任、コスト負担、権利などを契約で規定することが重要」であると示されていますが、その一方でIPAやJEITAの標準契約書のような従来型の契約書では、SBOMに触れられておらず、契約条項にSBOMの要求や提供義務が含まれないのが現状です。
つまり、従来モデルにSBOM条項を補完的に追加し、サプライチェーン全体で透明性とリスク対応を強化すべきです。
具体的には以下を契約に明記します。
こうしたSBOM取引モデルの導入により、ソフトウェア供給者はコスト対効果を明示し、利用者は自社のセキュリティ・コンプライアンス強化を確保できます。結果として、サプライチェーン全体にわたる透明性が高まり、SBOM義務化の波をビジネス機会として活かす姿勢が企業のDX推進や信頼構築にも寄与するでしょう。
続いて委託側の視点で考えてみましょう。
企業間のSBOM義務化が進む中、経済産業省の「SBOM取引モデル」に依拠し、委託開発契約や発注仕様に明記すべき要点を以下で整理します。では、SBOMの品質保証から法務・コスト面での責任分担まで、サプライチェーン全体での透明性とリスク管理を担保する重要項目を整理します。
このように、SBOM義務化に備えた契約書の条項整備は、コンプライアンス強化とリスク低減に直結します。法務、品質保証、開発、調達部門が協働し、契約文書に落とし込むことで、実効性あるサプライチェーンセキュリティを構築していきます。
SBOM義務化の流れが加速するなか、現場主導での導入だけでは限界があります。鍵を握るのは経営層の理解と支援です。SBOMは単なるITコストではなく、サプライチェーン全体の透明性を高め、サイバー攻撃による経営リスクを低減し、製品の信頼性やブランド価値を守る“戦略投資”であることを強調し、理解を得ていきましょう。
そのためには、まずSBOMの導入が企業にもたらす定量的なメリットを整理することが重要です。たとえば、既知の脆弱性を早期に検知・修正することで、脆弱性対応工数が減少することを定量的にしめすことで具体的なROIを示すことができると思います。また、ライセンス違反リスクを可視化することで訴訟回避に貢献したケースを提示すると、説得力が高まります。
また、SBOMの提出が政府調達や海外規制(米国大統領令、EU CRA)に対応する必須要件である点にも触れましょう。これにより、事業継続性と海外展開の両立に必要な施策であることを示せます。さらに、SBOM自動生成と脆弱性監視の仕組みをCI/CDに統合することで、開発工数の抑制にもつながる点は、開発現場との連携提案としても有効です。
生成AIがソフトウェア開発に組み込まれる現在、SBOM(ソフトウェア部品表)の役割と定義も大きく進化しています。従来はOSSやミドルウェアなどのコンポーネント構成の可視化が主目的でしたが、生成AIの活用が進むことで、新たな「不可視の構成要素」— たとえばAIモデル、学習データ、プロンプト設計など — を明示的に管理する必要が出てきました。SBOM義務化の動きが各国で進行する中、AI時代に対応したSBOMの再設計、AI-BOM化は避けて通れない課題です。
“AI−BOM”の視点で考えると、生成AI搭載ソフトウェアにおいては、モデルの種類(例:GPT、Stable Diffusion)、学習アルゴリズム、バージョン、使用ライブラリ、プロンプト制御、出力フィルタリング、推論時の設定といった詳細情報を「構成要素」として記録すべきでしょう。特に学習データの出所や使用許諾状況は、著作権や倫理の観点からSBOMにおいて極めて重要です。CycloneDXなどのSBOMフォーマットでは、こうしたAI関連情報を記述するための拡張としてAI-BOMが議論されており、AI搭載製品の可視化とリスク管理を両立させる動きが加速しています。これは米国大統領令(EO14028)やEU CRAなどの法規制にも準拠しうる基盤となります。
AI TRiSM(AI Trust, Risk and Security Management)は、生成AIの透明性・説明責任を確保し、リスクを一元管理するガバナンスの枠組みです。SBOMはその実践を支える鍵であり、AIモデルの開発経緯や学習内容、挙動の記録を通じて「説明可能性(Explainability)」や「コンプライアンス強化」を支える基盤となると思われます。
たとえば、生成物の著作権侵害や倫理的バイアスの存在、AI利用に伴うライセンス違反といったリスクは、SBOMによる構成情報の追跡と記録があってこそ防止が可能になります。SBOM義務化の流れの中で、こうしたAI特有の情報を記録できる体制は、製品の信頼性向上のみならず、サプライチェーン全体の「トラスト構築」にも寄与します。
「SBOMを整備したいけれど、どこから手を付けてよいかわからない」「ツールの選定や運用体制の構築に自信がない」—そんな不安をお持ちではありませんか?
富士ソフトでは、「EO14028」や「EU サイバーレジリエンス法」といった国際的な法規制への対応を見据えたSBOM/OSS管理支援サービスを展開しています。SBOMの自動生成やCI/CDパイプラインとの連携といった実装面の支援から、社内体制構築・法務対応のアドバイスまで、幅広く対応可能です。貴社の製品と開発現場に即した導入戦略をご提案します。
とりあえず質問だけでも結構です。お気軽にご相談ください。
SBOM義務化は、もはや一部の先進企業だけの話ではなく、製品を海外に展開する多くの企業にとって喫緊の課題です。欧米を中心に進む法規制や政府調達要件の変化は、すでに民間にも影響を及ぼしており、「見える化されたソフトウェア資産」の整備が当たり前になりつつあります。
SBOMの導入は、脆弱性リスクやライセンス違反の未然防止に加え、開発効率や品質保証の向上にも寄与する戦略的施策です。本記事で紹介した各章の内容を踏まえ、自社にとっての最適なSBOM対応を設計し、まずは小さくとも確実な一歩を踏み出すことが重要です。義務化の波を「危機」ではなく「チャンス」と捉え、将来の安心と競争力につなげましょう。
“見積もりがほしい”、”こんなことはできるのか?”、”詳しい実績がしりたい”、”この技術は対応できるのか?” そんな時は、質問だけでも結構です。お急ぎの場合も迅速に対応させて頂きますのでお気軽にお問い合わせ下さい。
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