OSS/SBOM管理ツール Black Duck SCA

ソフトウェア部品に関するリスクを管理するためのOSS管理&SBOM管理ツール。
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SBOMによる脆弱性管理:サプライチェーンセキュリティ強化の鍵

SBOMによる脆弱性管理 公開日:2025年7月31日

グローバル市場での競争力と信頼性を維持するために、サイバーリスクへの備えは経営課題となりつつあります。特に既知の脆弱性を突いたサプライチェーン攻撃が深刻化する今、SBOM(ソフトウェア部品表)はリスク管理と法規制対応の両面で不可欠な戦略資産になっています。本稿では、SBOMを活用した実効性ある脆弱性対策と、その経営的意義を解説します。

目次

【SBOM脆弱性管理の背景】ソフトウェアサプライチェーンの現状と高まるセキュリティリスク

現代のソフトウェア開発は、OSSやサードパーティ製ライブラリを多層的に組み合わせることで迅速な機能提供を実現しています。しかしその複雑性ゆえ、様々な形でのサプライチェーン攻撃が深刻化しており、グローバルなインフラやIoT機器、製造業に広範な影響を与えています。

こうしたリスクに対応すべく、アメリカやEUではSBOM含む技術文書の添付を義務化する動きが進んでいます。特にEUでは、CRA(サイバーレジリエンス法)がすでに成立しており、2027年までに、SBOM対応を含む定められた脆弱性対策を行わないと、EU内でデジタル製品をリリースできなくなります。

日本国内も同様に、政府や関連団体によるガイドライン整備が進んでおり、グローバル対応の必要性が高まっています。

これらの背景から、SBOMを活用した脆弱性対策は、特に海外でビジネスを展開する企業にとって、生き残りをかけた必須の対応になっています。ここでは、サプライチェーンリスクの実態、そして最新の法規制動向を整理し、なぜ今SBOM脆弱性管理が企業にとって急務なのかを明らかにします。

複雑化するソフトウェア依存とサプライチェーン攻撃の脅威

現代のソフトウェアは、70~90%がOSS(オープンソースソフトウェア)やサードパーティ部品で構成され、これが迅速な開発を支えていますが、逆に「脆弱な部品」が攻撃対象になりやすくなっています。この依存構造の薄氷の上を歩くような状況が、サプライチェーン攻撃の土壌となっています。

既知の脆弱性が狙われる実態

既知の脆弱性を悪用した攻撃は、現在のサイバー脅威の主戦場です。Indusfaceによると、2024年第3四半期には既知の脆弱性をターゲットにした攻撃が前年から124%増加し、調査した企業の54%が未修正脆弱性を悪用されたと報告されています。

*1 https://www.indusface.com/blog/key-cybersecurity-statistics/

こうした攻撃は、ゼロデイではなく、「パッチが存在するにもかかわらず修正されていない脆弱性」を狙ったものが大半です。実際、Astraの調査では、2021年にあった脆弱性を狙った攻撃のうち、18%が2013年の時点で指摘されていたものであり、企業の84%が“高リスク脆弱性”を抱えており、その多くは「単純なアップデート」で解消可能とされています。この背景には、脆弱性情報の把握・優先順位付け・適用に時間を要する現場構造があると思われます。

*2. https://www.getastra.com/blog/security-audit/cyber-security-vulnerability-statistics/

ここでSBOMを活用した脆弱性管理の有効性が浮かび上がります。SBOMがあれば、どの製品・リリースにどのコンポーネントが含まれているかを可視化でき、NVDなどの脆弱性データベースと連携して、自動的かつ即時に未修正脆弱性の存在を検知できます。これは攻撃に対する最初の防衛ラインであり、属人的な調査や遅延による被害拡大を未然に防ぐ「高速パッチ戦略」の基礎となります。

「Log4Shell」に学ぶソフトウェア部品の可視化の重要性

OSSの脆弱性問題を深く意識させるきっかけとなったものの一つが、2021年末に発覚したApache Log4jの深刻な脆弱性「Log4Shell(CVE-2021-44228)」です。近年最も広範かつ深刻なサプライチェーン攻撃のひとつとされ、Javaベースの多くのアプリケーションやサービスがこのライブラリを内部的に利用しており、その影響は全世界の金融、製造、通信、政府機関にまで及びました。

この事例で企業が直面した最大の課題は、「自社の製品・サービスにLog4jが使われているか即座に把握できなかったこと」です。依存関係が深く複雑な現代のソフトウェア構造では、脆弱性が報告された時点で、どの製品がどのバージョンのライブラリに依存しているのかを把握することが困難だったのです。

ここで重要な役割を果たしたのがSBOM(ソフトウェア部品表)です。SBOMは、ソフトウェアに含まれる全てのコンポーネントとそのバージョン、依存関係を明示的に記述した情報であり、「ソフトウェアの食品成分表」とも例えられています。Apache Log4Shellの際には、あらかじめSBOMを整備していた企業が、脆弱性報告から数時間以内に影響範囲を特定し、パッチ対応を優先付けすることができました。一方、SBOMのない組織では、調査と対応に数日から数週間を要し、結果として顧客やパートナーへの影響を最小化できなかったケースが多発しました。

*3 https://anchore.com/blog/software-supply-chain-hierarchy-of-needs-sboms-as-the-foundation/

このように、SBOMは単なるドキュメントではなく、「脆弱性対応のスピードと精度を決定づける戦略的資産」であることがわかります。今後はより一層、ゼロデイ脆弱性や既知脆弱性に迅速対応するには、SBOMを軸にしたソフトウェア可視化と継続的運用が不可欠になってくるでしょう。

国内外で加速する法規制とガイドラインの動向

ソフトウェアサプライチェーンの脆弱性リスクが顕在化する中、米国・EUを中心とした法規制の整備が急速に進行しています。これらの動きは、企業にとってSBOMによる脆弱性の可視化を単なるベストプラクティスから必須対応へと変える、重大な転機となっています。

米国・EUにおける必須化の動き(EO 14028, EU CRA)

米国では、2021年の大統領令 EO 14028がSBOM提出を義務化。NTIA(米国商務省下)が「最小要素」ガイドを公開し、連邦政府向けソフトウェア提供者は2023年9月までにSBOMを提出する必要があると規定されています。

2022年にはCISAもより詳細なSBOM運用指針を策定し、医療機器(FDA)ではプリマーケットでSBOMを含む脆弱性情報の提出が必須になりました

EUでは、2023年に可決されたCyber Resilience Act(CRA)が2027年末までに施行され、デジタル製品にSBOMの添付を義務化。これにより、製品のライフサイクル全体で構成要素を透明化し、脆弱性管理の追跡可能性を強化します。

日本政府・業界団体による取り組み

日本でも経済産業省(METI)が2023年7月に「SBOM導入ガイドver1.0」、2024年夏には改訂版ver2.0を公表しました。ガイドでは、「SBOMを用いた脆弱性管理の具体的プロセス」や「契約書への記載例」などを明示し、企業間でのSBOM利活用を強く後押ししています。また、QUAD(日米豪印)、国際標準化機構ISO/IEC 5230もSBOM活用ガイダンスの整備を推進中です。

脆弱性管理に必要なSBOM(ソフトウェア部品表)の基本理解

SBOM(Software Bill of Materials)は、ソフトウェアに含まれるOSSやサードパーティ部品の構成を可視化する「成分表」です。本章ではその定義・役割・記載要素、主要なフォーマットまでを整理し、「SBOM 脆弱性」管理の基盤となる基本知識を解説します。

SBOMとは?その役割と構成要素

SBOM(Software Bill of Materials:ソフトウェア部品表)は、ソフトウェアに含まれるすべてのコンポーネントを明示的に記述した情報です。製品に含まれるOSS(オープンソースソフトウェア)やサードパーティライブラリを一覧化することで、構成の透明性を確保し、「SBOM 脆弱性」管理の要となります。SBOMはセキュリティ、ライセンスコンプライアンス、サプライチェーンリスク対応の各面で不可欠な存在です。

ソフトウェアの「食品成分表」としてのSBOM

SBOMはよく「食品の成分表示」にたとえられます。例えば加工食品のパッケージには原材料やアレルゲンが明記されていますが、ソフトウェアも同様に、中身を構成するコンポーネントを明示することで、利用者や管理者がリスクを把握しやすくなります。これにより、自社製品に含まれるライブラリに脆弱性が見つかった際、即座に影響範囲を把握し、優先的なパッチ適用が可能になります。これは、2021年末の「Log4Shell」対応でもSBOMを導入していた企業が迅速な影響調査を実現したことからも証明されています。

必須となる7つの「最小要素」

米国NTIA(National Telecommunications and Information Administration)は、SBOMに記載すべき「7つの最小要素」を定義しています。これらは以下のとおりです。

1. コンポーネント名
2. バージョン情報
3. サプライヤー名
4. 一意な識別子
5. 依存関係情報
6. 作成者情報
7. タイムスタンプ

これらの情報を標準化された形式で記述することで、SBOMは単なる構成リストではなく、脆弱性検知やライセンス監査など多様な用途に活用できます。現在、SPDX、CycloneDX、SWIDといったフォーマットが存在し、目的や対象に応じて使い分けられています。

主要なSBOMフォーマットの比較

SBOM(ソフトウェア部品表)を活用して脆弱性を正確に特定・管理するためには、適切なフォーマット選定が重要です。現在、主に利用されている国際標準フォーマットは「SPDX」「CycloneDX」「SWIDタグ」の3つ。それぞれ設計目的や得意分野が異なり、用途に応じた使い分けが求められます。

SPDX

Linux Foundationが中心となって策定し、ISO/IEC 5962:2021として国際標準化されています。ライセンス情報や著作権、コンプライアンス要素に強く、ソフトウェア構成の法務的側面を重視した記述に向いています。NISTや欧州のサプライチェーンガイドラインでも推奨されており、製造業や大規模プロジェクトに適しています。

CycloneDX

OWASPが開発し、特にDevSecOpsやCI/CDとの統合を意識した設計が特長です。依存関係や脆弱性、署名情報、ソフトウェア識別子など、サイバーセキュリティ対策に特化した構成が可能です。JSON/XML形式に対応しており、自動スキャンツールとの連携性も高いため、SaaS事業者やIoT製品開発者によく選ばれます。実際、「SBOM 脆弱性」検出を高速化したい組織ではCycloneDXの採用が進んでいます。

SWIDタグ

ISO/IEC 19770-2で標準化されており、主にソフトウェアのインストールや構成管理を目的としたメタデータ記述に使われます。インベントリやパッチ管理の現場で重宝されますが、依存関係の記述には向かず、脆弱性管理との連携は限定的です。政府機関やエンタープライズITでの採用が多いフォーマットです。

フォーマット選定のポイント

フォーマット 特徴 適した用途
SPDX 法務・ライセンス情報に強い 製造業、長期製品開発
CycloneDX 弱性・セキュリティ対応に最適 SaaS、DevSecOps環境
SWIDタグ 資産管理・構成管理に有効 政府系IT、ITAM分野

NTIAやCISAも3つのフォーマットをSBOM基準として明記しており、どれが“正解”というよりも、活用目的と運用環境に応じた適材適所の選択が求められます。

SBOMを活用した効果的な脆弱性管理の実践

脆弱性管理プロセスにおけるSBOMの活用

SBOMは、「SBOM 脆弱性」対策において単なるドキュメント以上の価値を提供します。以下の各フェーズで活用することで、脆弱性対応を自動化・効率化しつつ、組織全体のリスク低減とコンプライアンス強化に寄与します。

脆弱性特定・監視の自動化と迅速化

SBOMに含まれるコンポーネント名・バージョン・識別子(PURL, CPEなど)を、NVD(米国国立脆弱性データベース)、JVN(Japan Vulnerability Notes)、OSV(Open Source Vulnerabilities)などと自動照合することで、既知の「SBOM 脆弱性」の特定がリアルタイムで可能になります。

優先度付けとトリアージの最適化

発見された複数の脆弱性を優先対応するには、CVSS(Common Vulnerability Scoring System)に加え、EPSS(Exploit Prediction Scoring System)やSSVC(Stakeholder-Specific Vulnerability Categorization)などの評価指標を組み込む運用が効果的です。SBOMを基にコンポーネント依存や使用頻度、脆弱性の深刻度・悪用可能性を総合的に評価することで、「SBOM 脆弱性管理」の優先順位を論理的に決定できます。

影響範囲の正確な特定とインシデント対応の効率化

脆弱性が発見された際、SBOMで明示された依存関係情報により、自社製品やアプリケーションのどのバージョン/リリースが影響を受けるかを即座に把握できます。特にApache Log4Shellのような広域インシデントでは、SBOM整備済みの企業では数時間以内に影響範囲が特定され、迅速なパッチ適用が可能だったと報告されています。この自動化されたインシデント対応フローは、被害拡大の抑制とインシデント対応コストの削減につながります。

脆弱性診断との連携と役割分担

SBOMによる脆弱性管理は、あくまでソフトウェア内部の構成情報に基づく静的な把握手法です。一方、外部からのアプローチである脆弱性診断(スキャン)は、攻撃者の視点に立ってソフトウェアやシステムのセキュリティホールを検出する動的手法です。これら2つのアプローチは相互に補完し合う関係にあり、組み合わせることでセキュリティ対策の信頼性と網羅性を大きく向上させることができます。

内部視点(SBOM)と外部視点(診断)の組み合わせ

SBOMは、Open Source Software(OSS)や外部ライブラリなど、ソフトウェア開発時に導入したあらゆるソフトウェアコンポーネントを明示的に記録するものであり、依存関係やバージョン、ライセンス情報までを網羅します。この情報をNVD(National Vulnerability Database)などの脆弱性データベースと照合することで、既知の脆弱性の早期発見が可能になります。
しかし、SBOMだけでは、構成に含まれないゼロデイ脆弱性や、設定ファイルの誤り、想定外の挙動など、攻撃者の視点でしか明らかにできないセキュリティリスクをカバーしきれません。そこで重要となるのが、DAST(Dynamic Application Security Testing)やペネトレーションテストといった動的な脆弱性診断との併用です。SBOMが内部の透明性を、診断が外部からの脅威視点を提供することで、両者は強固なセキュリティ体制の両輪を構成します。

運用フェーズにおける継続的監視と定期診断の重要性

ソフトウェア開発後も、脆弱性は日々発見され続けています。したがって、SBOMは一度作成して終わりではなく、継続的に更新し、新たに公表された脆弱性情報と常に照合される必要があります。これにより、構成変更のない運用中のアプリケーションであっても、関連コンポーネントに新たな深刻脆弱性(CVE)が登録された場合に即座に検出・対応が可能になります。

加えて、運用フェーズにおける定期的な脆弱性診断も不可欠です。例えば、年に一度のペネトレーションテストや、CI/CDに組み込んだ自動スキャンの活用などが挙げられます。これにより、既知だけでなく未知の脆弱性に対する備えができ、SBOMの静的監視では検出できない運用上の問題(不要ポート開放、誤設定、認証回避など)も発見できます。

このように、SBOMと脆弱性診断を組み合わせることで、サイバー攻撃者の侵入経路を多面的に遮断し、インシデント対応の迅速化とセキュリティリスクの最小限化を実現できます。セキュア・バイ・デザインが求められる現代において、両者の連携はもはや必須の対策です。

ライセンス管理とコンプライアンスへの寄与

SBOMは、脆弱性管理だけでなくライセンス管理においても重要な役割を果たします。OSS(オープンソースソフトウェア)には多様なライセンスが存在し、使用条件を誤るとコンプライアンス違反につながるリスクがあります。SBOMを活用すれば、ソフトウェアコンポーネントごとのライセンス情報を可視化でき、使用制限や再配布条件の違反を未然に防止可能です。例えば、SPDXCycloneDXなどのSBOMフォーマットはライセンス識別子の標準化を支援し、社内での構成管理や法務対応の効率化にも寄与します。

法規制が強化される現状を踏まえると、SBOMによるライセンス面での透明性確保も、製品開発におけるセキュア・バイ・デザインの実践に不可欠となっています。

脆弱性管理のためのSBOM導入・運用における課題と解決策

SBOMデータ管理の複雑性(表記揺れ、網羅性、データ量)

SBOM(Software Bill of Materials)は、ソフトウェア製品に含まれるOSSやサードパーティライブラリなどの部品情報を可視化し、 サプライチェーン全体のセキュリティ対策や脆弱性対応を可能にする重要な構成管理手段です。しかしその一方で、実運用においては「データの肥大化」や「表記揺れ」、「情報の網羅性・冗長性」といった複雑性が課題として浮き彫りになっています。

異なるツール・サプライヤー間のデータ一貫性確保

SBOMはSPDX、CycloneDX、SWIDといった複数の標準フォーマットが存在するものの、SBOMを生成するツールやサプライヤーごとに同一ライブラリの記述が異なることが多く、社内システムやセキュリティチームによる一貫した管理を困難にしています。例えば、同じOSSの情報がフォーマットや命名ルールの違いにより複数記述されてしまうと、誤検出や見落としの原因となります。これに対しては、CI/CDパイプライン上でSBOMを正規化(ノーマライズ)する変換処理や、社内ガイドラインによるフォーマット統一が有効です。

情報過多への対応と必要な情報の絞り込み

SBOMは構成情報、バージョン、ライセンス、識別子、チェックサム、開発者、関係性など多様なデータを含むため、すべてを等しく扱うとオーバーヘッドが大きくなります。特に脆弱性管理の文脈では、CVE番号やCVSSスコア、EPSS(Exploit Prediction Scoring System)などの脅威関連情報を抽出・優先分析すべきです。これにより、PSIRTやセキュリティチームは自社製品にとって本当に「対応が必要な脆弱性」の特定と対処を迅速化でき、修正のリードタイムの短縮とサプライチェーン全体のリスク低減が実現します。

既存システム・開発プロセスとの統合課題

SBOM導入がもたらす最大の課題は、既存の構成管理や開発プロセスで生じる負荷と混乱です。特に、SCM(ソース管理)やCI/CDパイプラインと連携できないと、SBOMは単なる“後付けのドキュメント”に留まり、脆弱性対策として機能しません。本章では、その統合ポイントと解決策を提示します。

構成管理とのシームレスな連携

• CI/CDでのSBOM自動生成
TrivyやSyftなどのツールは、ビルド時にSBOMを自動生成し、CIパイプラインに組み込むことで、人手の介在を排除し、開発者の手を煩わせずに「SBOM 脆弱性」検出を継続できます。

• ビルド成果物とSBOMの一元管理
成果物(バイナリ、コンテナ、アプリ)とSBOMを同じリポジトリ/ストレージに保持することで、バージョン毎に「どのコンポーネントが使われたか」を正確に追跡でき、構成管理とセキュリティが統合されます。

• Policy-as-Codeとの組み合わせ
SBOMをPolicy-as-Codeツール(例:Anchore Enforce)と連携し、脆弱性やライセンス違反の有無をCIパイプラインに組み込みます。これにより「脆弱性/ライセンスNGならビルド失敗」という自動阻止が可能になり、DevSecOpsワークフローの効率化が期待できます。

• 開発者の意識改革
「SBOMと脆弱性は開発のスプリントに含まれるべきもの」という認識を共有し、開発者への教育・セミナーを通じて、ワークフローの一部として定着させる必要があります。

知識・人材不足と専門サポートの必要性

SBOMを活用した脆弱性管理は、サプライチェーン全体の透明性とセキュリティを高める手段として注目されていますが、その導入・運用には専門的な知識と継続的な対応体制が欠かせません。

特に、SPDXやCycloneDXなど複数のSBOMフォーマットの理解、脆弱性データベース(例:NVD、EPSS)との連携、既知脆弱性の特定と優先度付けなど、高度なスキルが求められます。人材やリソースが不足する企業では、PSIRT支援やSBOM生成・解析を代行する外部ベンダーの活用が効果的です。

例えば、Black Duck SCAやCycloneDX対応ツールを提供するベンダーでは、SBOMと脆弱性情報の自動突合やレポーティング機能を提供し、効率的な脆弱性対応を支援しています。

SBOM導入を成功させるためのロードマップと実践的ポイント

導入ステップ:体制構築から継続的運用まで

SBOM(Software Bill of Materials)の導入は、単にツールを導入するだけでは効果を発揮しません。SBOMを脆弱性管理やコンプライアンス対応に活用するには、戦略的なフェーズ分けと組織全体の体制構築が不可欠です。以下では、導入から定着・運用までのステップを順に解説します。

適用範囲の明確化と社内体制の構築

最初のステップは、SBOMを適用する製品や開発プロジェクトの範囲を明確にすることです。例えば、自社製IoTデバイス、クラウドサービス基盤、OSSを多用する製品群など、リスクが高い部分から優先的に導入するのが効果的です。次に、開発部門・セキュリティ・法務・情報システム・PSIRTなど関係部署によるクロスファンクショナルな体制を構築していきます。RACIチャートを使ってSBOM生成、レビュー、配布、更新などの役割を明文化し、属人化を防ぐことも有効です。

ツール選定と導入(PoCの活用)

SBOMツールの選定では、CycloneDXやSPDXなどのフォーマット対応、CI/CDとの統合性、OSS脆弱性データベース(例:NVD, OSV, EPSS)との連携可否、差分検出や自動通知などの機能性を確認しましょう。PoC(概念実証)では、実際に社内のOSSを用いたSBOM生成・脆弱性解析を試行し、出力精度や運用のしやすさ、レポート形式の柔軟性などを評価することで、自社環境に合った選定が可能です。

SBOMの作成・共有・継続的更新プロセス

SBOMは一度作って終わりではなく、製品のリリースごと、ライブラリ更新ごとに継続的にアップデートされるべきものです。生成はCI/CD上で自動化し、出力は標準フォーマットで統一。サプライヤーとのSBOM交換や社内監査、顧客への提出にも備えましょう。また、CISAやOWASPも推奨するように、SBOMをVEX(脆弱性の悪用可能性に関する情報)と組み合わせることで、リスクの誤認を防ぐ高度な活用も視野に入れるべきです。

導入の仕方で悩んでいる方は富士ソフトにご相談ください。

SBOMの運用は一度作成して終わりではなく、OSSライブラリや依存関係のバージョン更新、脆弱性情報の変化などに応じて、継続的に更新・共有していく体制が不可欠です。しかし、多くの企業では「どこまで対応すればよいかわからない」「脆弱性情報の精査に工数がかかる」「ツールの導入効果が見えづらい」といった悩みを抱えています。

そうした課題に直面している方は、ぜひ富士ソフトにご相談ください。

当社では、Black Duck SCAをはじめとするOSS/SBOM管理ツールの導入支援やCI/CDとの連携構築、国際規制(米国大統領令、EU CRA)への対応、SBOMの自動生成・活用プロセスの整備までをトータルでご支援しています。OSSやSBOMの実務的な課題に精通したエンジニアが、お客様の状況に合わせて最適なソリューションをご提案します。

SBOMツール選定の重要基準

SBOM(ソフトウェア部品表)を実効的なセキュリティ対策として活用するには、ツール選びが成否を分けます。ここではSBOMによる脆弱性評価の観点も含め、自社に最適なツールを選ぶ3つの重要基準を紹介します。

自社要件に合致する機能と検出スコープ

脆弱性スキャンやライセンスチェッカー、レポート生成など、必要な機能を明確に洗い出すことが重要です。SBOMはOSレイヤーからアプリケーションライブラリに至るまで広範囲な検出が可能であるべきです。

既存環境との連携性・拡張性

SBOMツールはCI/CDパイプライン、ソースコード管理、ビルドツールとの統合が無いと運用負荷が高くなります。GitLabはCycloneDX採用のうえ、CIからSBOM生成・統合・スキャンまでを連携させることで可視性と自動化を実現しており、有効なベストプラクティスとされています。

サポート体制とUI/UX

長期運用では、日本語サポートやSLA(Service Level Agreement)、直感的なUI/UXが継続性と定着化に不可欠です。実際、導入後の利用率はこの点で大きく差が開くといわれており、操作性が低いと「SBOMの形骸化」につながるとの指摘があります。

これらの基準を踏まえ、ツール導入前にPoCを行い、自社の開発/運用環境や組織文化との整合性を検証しましょう。適切なツールの選定は、明快な導入成果につながり、SBOMを活用した脆弱性管理や法令対応(大統領令・CRAなど)で競争優位を築く第一歩になります。

ソフトウェアベンダーとしてのSBOM提供の責務

SBOM(Software Bill of Materials)の整備と提供は、もはや製品品質の一部といえます。OSSや外部ライブラリを含むソフトウェア製品において、脆弱性の発見と迅速な対応はセキュリティ上の最優先課題であり、顧客・パートナー企業からの信頼を得る上でもSBOMは不可欠です。

特に近年、米国大統領令(EO 14028)やEUのCRA(サイバーレジリエンス法)により、ソフトウェアサプライチェーンの透明性を担保する手段として、SBOMの提供が義務づけられる潮流が進行中です。ベンダーはSBOMを単なる内部管理資料にとどめず、信頼できる形で第三者と共有できる体制を整える必要があります。これは、サイバー攻撃や既知の脆弱性の悪用リスクを最小限に抑えるための実践的なセキュリティ対策でもあります。

「Secure by Design Pledge」にみるSBOMと製品識別子の重要性

2024年にCISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)が打ち出した「Secure by Design Pledge」では、グローバルな主要ソフトウェアベンダーが、セキュリティを製品開発の初期段階から組み込むことを提唱しています。その中でもSBOMの提供は必須項目の一つに挙げられており、さらに「CPE(Common Platform Enumeration)」などの製品識別子をSBOMに明示することで、ユーザーが該当製品・バージョンにおける脆弱性を迅速に特定しやすくなります。これは、SBOMを受け取ったユーザーが脆弱性スキャンツールや脅威インテリジェンスデータベース(例:NVD、EPSS)と照合する際の精度を高める上で極めて重要です。識別子を欠いたSBOMは、誤検出や調査遅延を招き、かえってインシデント対応の妨げとなり得るため、ベンダーには「識別可能な部品表」の提供責任が求められます。

VEXによる情報共有の高度化

SBOMには「どんな部品が入っているか」を示す機能がありますが、それだけでは「どの脆弱性が本当に影響するのか」までは判断できません。そこで注目されているのがVEX(Vulnerability Exploitability eXchange)です。VEXは、SBOMと連携する形で「この脆弱性は該当バージョンでは実際には悪用不可能である」など、影響範囲の有無をベンダー自身が宣言する仕組みです。これにより、ユーザー側のトリアージ作業が効率化され、本当に対応が必要なインシデントだけに注力できます。特にSBOMに含まれるコンポーネント数が多いIoT機器や産業用システムにおいて、VEXは情報過多による混乱を回避し、セキュリティ対応の最適化に寄与します。CISAが発行したVEX実装ガイドでは、そのユースケースと実装方針が詳述されており、SBOMとVEXを併用することが、今後のセキュアな製品開発と供給の“標準”になると期待されています。

まとめ:SBOMが拓く未来のソフトウェアセキュリティ

セキュリティと事業成長を両立するSBOMの可能性

SBOM(Software Bill of Materials)は、もはや単なる脆弱性管理や法規制対応のツールではありません。SBOMの整備と運用は、ソフトウェア開発の信頼性を高め、透明性ある製品供給体制を築くことで、事業の競争力強化にも寄与します。例えば、SBOMがあることで顧客やパートナー企業は自社製品のセキュリティリスクを明確に把握でき、信頼性の高い取引が可能になります。また、DevSecOpsのようなシフトレフト開発プロセスにおいても、SBOMはOSSライブラリやサードパーティ製コンポーネントの事前確認や検出、リスク評価に不可欠な存在です。2024年以降、米国政府やEUによるSBOM義務化の流れ(例:EO 14028、EU CRA)はさらに加速しており、今やSBOMの活用は「攻めのセキュリティ戦略」として位置づけられつつあります。

今すぐ始めるべきSBOM活用への第一歩

多くの企業が「SBOMを作成すること」にとどまり、その後の活用・運用にまで踏み込めていないのが実情です。しかし、SBOMは作成して終わりではなく、脆弱性データベース(例:NVD、EPSS)やVEXとの連携、パッチ適用の優先度決定、影響範囲の特定、インシデント対応までを含む「継続的なセキュリティ対策の基盤」です。特にIoTや産業機器などの分野では、1つのSBOMが数百におよぶコンポーネント情報を含むため、SBOMを起点とした情報管理の自動化は、開発生産性の向上にも直結します。まずは、自社のソフトウェアライフサイクルにおけるどのフェーズでSBOMを生成・活用するかを整理し、小規模なPoC(概念実証)から始めてみるのが有効です。SBOMは、セキュアな製品開発とともに、企業のサプライチェーン全体の信頼性を高める「未来への投資」といえるでしょう。

富士ソフトが始めの一歩をお手伝いします

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