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ソフトウェア部品に関するリスクを管理するためのOSS管理&SBOM管理ツール。 豊富な解析機能と圧倒的な情報量でSBOMおよびレポート(通知ファイル)の生成などお客様の脆弱性対策を強力にサポートいたします。
公開日:2025年6月1日
注目ソリューション
開発から製造まで一貫した工程におけるDMS/EMS(設計・製造受託)を提供します
近年、ソフトウェアのサプライチェーンは急速に複雑化しています。特にオープンソースソフトウェア(OSS)の利用が一般化し、その多くがサードパーティのコンポーネントやライブラリを含んでいることから、全体のセキュリティリスクが増大しています。これに伴い、ソフトウェアの脆弱性や依存関係の問題がサプライチェーン全体に影響を及ぼすケースが増えています。
例えば、2021年に発生したApache Log4jの脆弱性(CVE-2021-44228)はその典型例です。Apache Log4jは多くの企業が使用するJavaベースのOSSライブラリであり、その脆弱性が公開されると、世界中で数千万台のシステムが影響を受ける事態となりました。こうした重大なセキュリティインシデントは、企業が自社製品に含まれるコンポーネントの正確な把握と管理の必要性を強く認識させました。
サプライチェーン攻撃は、攻撃者がソフトウェアの開発や配布の過程に介入し、正規のコンポーネントに悪意のあるコードを混入させる手法です。代表的な事例としては、2020年のSolarWinds社のハッキング事件があります。この事件では、SolarWinds社のIT管理ソフトウェア「Orion」に悪意のあるコードが組み込まれ、18,000以上の顧客に影響を及ぼしました。この攻撃は、米国政府機関や大手企業に対する大規模なサイバー攻撃として世界に衝撃を与えました。
また、日本においてもIPA(情報処理推進機構)が発表する「10大脅威」にはサプライチェーン攻撃が常に上位にランクインしています。これらの攻撃がもたらすリスクは極めて高く、被害の範囲が広範囲にわたることから、各国でサプライチェーンセキュリティの強化が急務とされています。
世界ではSBOMの導入が急速に進んでおり、特に米国がその先導役となっています。2021年にバイデン大統領が署名した大統領令(Executive Order 14028)では、SBOMの利用が重要な要件として明記されました。さらに、NTIA(National Telecommunications and Information Administration)は、SBOMの基本要素として「ソフトウェアコンポーネント名」「バージョン」「サプライヤー」などの最小要素を定義し、その公開を推進しています。
一方、日本においても経済産業省が「SBOM普及ガイドライン」を策定し、国内企業のSBOM導入を支援しています。このような世界的な動きから、SBOMの導入は単なる選択肢ではなく、セキュリティ強化のための必須要件として位置づけられるようになっています。
SBOMとは、Software Bill of Materialsの略で、ソフトウェア製品に含まれる全てのコンポーネントやライブラリ、モジュールの一覧を示すリストです。これは、ソフトウェアの「原材料表示」に例えられ、各コンポーネントの構成要素を明確に把握するための重要な手段です。SBOMは、セキュリティリスクの管理、ライセンスコンプライアンスの確認、脆弱性の迅速な特定に役立ち、サプライチェーン全体の透明性とセキュリティを向上させる役割を果たします。
SBOMには以下のような主要な情報が含まれます。
これらの情報は、脆弱性の特定やライセンス管理において不可欠な要素であり、サイバー攻撃に対する防御やコンプライアンス管理に大きく貢献します。
製品のSBOMが形成されます。これは、車や電子機器の製造における部品表と同様の考え方です。例えば、自動車の場合、エンジンや電子制御ユニット(ECU)、インフォテインメントシステムなど、個別の部品リストが組み合わさって最終的な製品全体の構成が決定されます。
ソフトウェアの場合も同様で、各コンポーネントのSBOMを統合することで、製品全体の脆弱性やライセンス情報を把握することが可能です。これにより、セキュリティインシデントが発生した際にも、迅速かつ正確な対応が可能となります。
SBOMを導入する最大のメリットの一つは、セキュリティリスクの早期発見と迅速な対応が可能になる点です。SBOMは各コンポーネントの情報を詳細に記載しているため、既知の脆弱性情報(CVE:Common Vulnerabilities and Exposures)との照合が容易です。2021年に発生した前述のApache Log4j脆弱性(CVE-2021-44228)のように、多くのソフトウェアで利用されるコンポーネントに重大な脆弱性が発見された場合、SBOMがあればどの製品に問題が波及するか迅速に把握できます。これにより、インシデント対応の工数やコストを大幅に削減できます。
SBOMはソフトウェアの構成要素や依存関係を明確に記録するため、サプライチェーン全体の透明性が向上します。直接的な依存関係だけでなく、間接的な依存関係も把握できるため、セキュリティリスクの全体像を正確に評価できます。これはサプライチェーン攻撃や脆弱性が発見された際、その影響範囲を迅速に特定するために極めて重要です。例えば、SolarWinds社のサプライチェーン攻撃のような広範囲に及ぶセキュリティインシデントに対しても、被害を最小限に抑えるための基盤となります。
SBOMは、各コンポーネントのライセンス情報も記録するため、OSS(オープンソースソフトウェア)の使用に関するコンプライアンス管理が効率化されます。例えば、GPLやMITライセンスなど使用条件が異なるライセンスを持つコンポーネントが混在する場合でも、事前にリスクを把握して適切な対応が可能です。
SBOMを活用することで、各コンポーネントの再利用が促進され、開発効率が向上します。また、問題が発生した際の原因特定が迅速になるため、トラブルシューティングの効率も大幅に向上し、開発サイクルの短縮やコスト削減が実現できます。
SBOMは、セキュリティインシデントが発生した際の影響範囲を迅速に特定する手段としても重要です。例えば、ゼロデイ攻撃や未知の脆弱性が発見された場合でも、SBOMがあれば影響範囲を正確に把握し、迅速に対応することが可能です。結果として、事業継続性を高めるとともに、顧客やパートナーからの信頼性も向上します。
SBOM(ソフトウェア部品表)には、様々な形式が存在しますが、特に一般的に使用される3つの主要な標準フォーマットがあります。これらは、ソフトウェアのコンポーネント情報を正確に記録し、共有するために重要な役割を果たしています。
SPDXは、Linux Foundationが主導するオープンソースの標準フォーマットで、特にOSS(オープンソースソフトウェア)のライセンス管理に広く利用されています。ISO/IEC 5962:2021として国際標準規格に認定されており、以下の特徴があります。
CycloneDXは、OWASP(Open Web Application Security Project)が推進するフォーマットで、特にセキュリティ分野での利用が増えています。サイバーセキュリティや脆弱性管理に強みがあり、包括的な依存関係解析が可能です。
SWIDタグは、ISO/IEC 19770-2に基づく標準フォーマットで、特にエンタープライズ環境でのソフトウェア資産管理に利用されます。ハードウェアとソフトウェアの構成管理に強みがあり、商用ソフトウェアでも広く使用されています。
これらのフォーマットは、それぞれ異なる目的や用途に合わせて設計されており、ソフトウェアの構成管理やセキュリティリスクの可視化に欠かせない要素です。特に、OSSの利用が一般化している現代において、適切なフォーマット選定はセキュリティ対策とコンプライアンス遵守の要となります。
SBOM導入に際して、最も一般的な課題の一つがツール間での出力フォーマットの差異です。たとえば、SPDX、CycloneDX、SWIDタグなど、主要なSBOMフォーマットが存在しますが、それぞれのフォーマットには対応形式(JSON、XML、Protobufなど)や記載項目が異なります。このため、異なるツールから生成されたSBOMが完全に互換性を持たない場合があり、統合管理やデータの一貫性確保が難しくなります。さらに、これらのフォーマット間での標準化が進んでいない場合、サプライヤーや顧客間での情報共有に支障をきたす可能性があります。
SBOM生成ツールの精度も重要な課題です。これらのツールは、ソースコード解析、バイナリ解析、依存関係スキャンなどを通じてコンポーネント情報を収集しますが、完全な精度を保証することは困難です。特に、コードベースが複雑なプロジェクトや、混在するOSSと独自コードの区別が難しい場合、誤検出(False Positive)や検出漏れ(False Negative)が発生しやすくなります。バイナリファイルの解析は特に困難で、リバースエンジニアリングが必要になるケースもあるため、追加の工数が発生する可能性があります。
SBOMの有効性は、その情報が常に最新であることに依存します。ソフトウェアのバージョンアップやライブラリの更新が頻繁に発生する現代において、手動でのSBOM管理は非現実的です。適切な自動化ツールやワークフローの整備が不可欠であり、これにより情報の正確性と再現性が確保されます。特に、セキュリティインシデント時に正確なコンポーネント情報が求められる場面では、この問題が顕著に現れます。
SBOM導入には、ツールの導入費用に加えて、教育、体制構築、継続的なメンテナンスにかかるコストも考慮する必要があります。また、SBOMの生成と管理には多くの工数がかかるため、これらを効率化するための自動化ツールやプロセスの導入が求められます。特に大規模な組織では、これらのコストが大幅に膨らむ可能性があるため、導入前に十分なコスト評価が必要です。
SBOM導入には計画的な準備と段階的な実施が求められます。特に、経済産業省が示す手引きでも推奨される「環境構築・体制整備」「作成・共有」「運用・管理」の3つのフェーズに基づくアプローチが効果的です。
SBOM導入の第一歩は、どの範囲に適用するかを明確にすることです。対象とするソフトウェアやシステムの選定には、5W1H(Who, What, When, Where, Why, How)の視点が役立ちます。具体的には以下の要素を考慮する必要があります。
これにより、適用範囲が明確になり、今後のツール選定や運用計画が立てやすくなります。
SBOM導入は、単にセキュリティ部門や開発チームだけでなく、組織全体で取り組むべき課題となるため、以下のような体制構築が求められます。
SBOMツールの選定は、導入の成否を大きく左右する重要なステップです。以下の要素を基準にツールを評価します。
無料ツール(Dependency-Track、Syftなど)と有料ツール(Black Duck、FOSSAなど)の違いや、トライアルによる実証も重要な選定ポイントです。
SBOMの作成は、コンポーネント解析から始まります。このプロセスはソースコードやバイナリファイルからソフトウェアに含まれる全てのコンポーネントを特定するものであり、その精度がSBOMの品質を大きく左右します。一般的なSBOM生成ツールは、以下の手法を組み合わせて解析を行います。
ただし、これらの手法には限界があり、以下のような課題も存在します。
そのため、SBOMの品質を確保するためには、生成された結果を人間が精査することが重要です。
SBOMは、その内容が正確であっても、適切に共有されなければ意味がありません。以下は、一般的なSBOMの共有方法です。
SBOMを適切に共有するためには、データの完全性と信頼性を保証する仕組みも重要です。特に、改ざん防止や認証のために電子署名や暗号化を導入することが推奨されます。
SBOMの運用段階においては、脆弱性管理が重要な役割を果たします。作成されたSBOMは、脆弱性データベース(CVE、NVDなど)との照合により、潜在的なセキュリティリスクを迅速に特定するための基盤となります。具体的なステップは以下の通りです。
特に、SBOMの導入により脆弱性が多数検出される可能性があるため、適切なトリアージが重要です。
SBOMは、単に脆弱性管理だけでなく、ライセンスコンプライアンスにも大きく貢献します。以下のような要素が含まれます。
これにより、ライセンスに関する法的リスクの軽減と、コンプライアンス遵守が可能になります。
SBOM情報は一度作成しただけでは効果が限定的であり、継続的な管理が求められるため以下のポイントが重要です。
これらの取り組みにより、SBOM情報の信頼性と有効性が維持されます。
SBOM(ソフトウェア部品表)は、セキュリティ強化やサプライチェーン管理において重要な役割を果たしますが、その導入に関しては多くの誤解が存在します。ここでは、一般的な誤解とその実態について解説します。
SBOMが公開されると、攻撃者にとってソフトウェアの脆弱性を特定する手がかりになると考えられることがありますが、これは一面的な見方です。実際には、SBOMを活用することで、セキュリティチームが脆弱性を迅速に特定し、修正する能力が向上するため、結果として全体のセキュリティが強化されます。また、SBOM自体に機密情報を含む必要はなく、適切なアクセス制御や暗号化により、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることが可能です。
NTIA(National Telecommunications and Information Administration)の定義する「最小構成要素」だけで十分と考えるのは誤りです。実際には、各ソフトウェアのリスクに応じて、より詳細な情報(依存関係、ハッシュ値、タイムスタンプなど)を含めることが推奨されます。これにより、脆弱性の影響範囲を正確に評価し、迅速な対応が可能となります。
SBOMは一度作成して終わりではなく、継続的な更新が求められます。ソフトウェアは頻繁にアップデートされ、新しい脆弱性が発見される可能性があるため、SBOMも定期的に見直して更新する必要があります。これにより、常に最新のセキュリティ状況に対応できるようになります。
SBOMは大規模企業だけでなく、中小企業やスタートアップにも有用です。むしろ、リソースが限られた小規模な組織ほどセキュリティインシデントの影響が大きいため、SBOMによる可視化とリスク管理が特に重要です。
これらの誤解を解消することで、より効果的なSBOM導入が可能となり、ソフトウェアセキュリティの強化が実現します。
SBOM(ソフトウェア部品表)は、セキュリティ強化やサプライチェーン管理における重要な要素として、今後さらに進化が期待される分野です。ここでは、今後の規制強化や技術的な進展について解説します。
現在、米国ではExecutive Order 14028により、連邦政府が使用するソフトウェアに対するSBOMの提出が義務化されております。この動きは他国にも広がりつつあり、日本でも経済産業省がSBOMの重要性を強調しているため、将来的にはSBOMの義務化が検討される可能性があります。特に、IoTや自動車産業など、セキュリティが重要視される分野での導入が進むことが予想されます。
今後、SBOMの管理は単なる静的なリストではなく、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の一部としてリアルタイムに自動生成・更新される方向に進むと考えられます。これにより、開発プロセス全体でのセキュリティ可視化が可能となり、脆弱性管理がより迅速かつ効率的に行えるようになります。具体的には、以下のような取り組みが期待されます。
AI技術の進展により、SBOMの自動解析や異常検知がさらに高度化することが予想されます。AIを活用することで、以下のような改善が期待できます。
これにより、セキュリティ対策の迅速化とコスト削減が実現されるでしょう。
今後もSBOMは、規制強化や技術進化を背景に、その役割がさらに拡大し、より多くの企業にとって欠かせない要素となることが期待されます。
CRA対策などで、SBOM管理の重要性が増すことを理解しつつも、社内的なリソースやノウハウの欠如などで、思うように進められないなど、お悩みではないですか? そのような場合は、是非富士ソフトにご相談ください。富士ソフトは、日本最大級の独立系開発会社として50年を超える歴史を持ち、自動車や家電、スマートフォンなどの製品の制御システムや金融系システム、Webアプリなど、多岐にわたるシステム開発を担うことで、日本の発展を影で支えてきました。その過程で、SBOMによる資産管理やセキュリティに関する高度な技術を蓄積してきました。
その知見を踏まえつつ、富士ソフトはBlack Duck社とマクニカ社との3社パートナーシップで、お客様の製品・サービス自体のSBOM導入から運用サポートまで一括してご支援するOSS管理/SBOM管理ソリューションをご提供しております。
SBOM(ソフトウェア部品表)は、現代のソフトウェア開発において欠かせない要素となりつつあります。その役割は、セキュリティリスクの早期発見、サプライチェーンの可視化、ライセンスコンプライアンスの効率化など、多岐にわたります。本記事では、以下の主要なポイントについて解説してきました。
これらの要素を正しく理解し、適切に活用することで、セキュアで効率的なソフトウェア開発と運用が実現できます。今後のセキュリティ強化やリスク管理において、SBOMはさらに重要な役割を果たしていくことでしょう。
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