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公開日:2025年6月1日
ソフトウェアテストの基本をおさえる
ソフトウェアテストの目的・種類・工程・最新動向まで徹底解説。 ビジネスの価値を高めるソフトウェアテストの本質を理解しよう。
ソフトウェアテスト技法とは、テストケースを作成・選定するための体系的な手法です。日本におけるソフトウェアテスト技術者資格認定の運営組織であるJSTQBでは、その技法をブラックボックステスト技法、ホワイトボックステスト技法、経験ベースのテスト技法の3つに分類しています。
ソフトウェア開発の現場では、ソフトウェア品質の向上、効率化、リスク管理が常に求められ、その複雑さも加速度的に増しています。ソフトウェア品質を支える最後の工程ともいえるテスト工程において、これらの課題に効率的に対応していくために、ソフトウェアテスト技法を適切に活用することが必須になってきています。
本記事では、このソフトウェアテスト技法に関して、基礎知識から実践的なステップまでを網羅的に紹介します。
ソフトウェアテスト技法とは、テスト条件、テストケース、テストデータを効果的に決定するための体系的な手法です。前述のようにJSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)では、これらを「テスト設計技法」と定義し、ブラックボックス、ホワイトボックス、経験ベースの3つのカテゴリに分類しています。
ブラックボックステスト技法は、ソフトウェアの内部構造を考慮せず、入力と出力に着目してテストを行う手法です。代表的な技法には、同値分割法、境界値分析、デシジョンテーブルテストなどがあります。これらの技法は、仕様書や要件定義書を基にテストケースを設計する際に有効です。
ホワイトボックステスト技法は、ソフトウェアの内部構造や処理の流れに着目してテストを行う手法です。制御フローテストやデータフローテストなどがあり、コードの網羅性を高めることができます。これにより、内部構造の不具合やロジックの誤りを検出することが可能です。
経験ベースのテスト技法は、テスト担当者の経験や直感を活用してテストケースを設計する手法です。エラー推測や探索的テストなどが含まれ、過去の不具合や類似システムの知見を活かすことで、効率的に欠陥を発見することができます。ただし、担当者のスキルに依存するため、一定の経験と知識が求められます。
以下、ソフトウェアテスト技法のメリットとそれぞれの技法の詳細についてご説明していきます。
開発現場では、限られたリソースの中で高いソフトウェア品質を維持しながら、短納期にも対応しなければならないという課題に常に直面しています。一方で、複雑さや規模が加速度的に増す現在のソフトウェア開発の現場では、すべてのテストケースを網羅的に実施するのは現実的ではなく、重要な部分を効率的に検証する必要があります。こうした状況で頼りになるのが「ソフトウェアテスト技法」です。
ソフトウェアテスト技法は、テスト条件やテストケースを体系的に整理し、現場の混乱や見落としを防ぐ役割を果たします。これらの技法は、開発チームが「どこまでテストすべきか」「何を優先するべきか」といった疑問に対して、理論的かつ実践的な指針を与えます。さらに、リソースの制約を緩和しながら、なるべく少ないテストケースで最大の効果を得るための手法として機能します。
特に、仕様が複雑なプロジェクトでは、技法を活用することで、複雑な条件やロジックを体系的に捉え、テスト漏れや重複を最小限に抑えることができます。こうした理由で、ソフトウェアテスト技法は、ソフトウェア品質向上とリスク管理を同時に支える重要なツールとなり、エンジニアの負荷を軽減する心強いパートナーになるのです。
ソフトウェアテスト技法は、テストの効率性と網羅性を高めるための体系的な手法群であり、ソフトウェアテストに関する国際標準規格であるISO/IEC/IEEE 29119-4やJSTQBでは、3つの主要カテゴリに分類されています。
以下、それぞれの詳細と、各種類に含まれる具体的なテスト技法を解説します。
ブラックボックステスト技法は、ソフトウェアの内部構造や実装を考慮せず、外部から見た仕様や要件、入力と出力、振る舞いに着目してテストを行う手法です。このアプローチでは、主にユーザーの視点からソフトウェアの動作を検証し、仕様の解釈誤りや要件の漏れによる不具合を発見しやすいというメリットがあります。
ブラックボックステスト技法は、特に要件定義や仕様書が明確である場合に効果的であり、開発者とは異なる視点からの検証が可能です。これにより、開発者が見落としがちな問題点を洗い出すことができます。
以下、ブラックボックステストとして使われる具体的なテスト技法をご説明します。
同値分割法は、入力データを同じ動作を引き起こすと予想される値を同値クラス(同値パーテーション)に分割し、各同値クラスから代表値を選択してテストを行う手法で、テストケースの数を減らしつつ、効果的なテストが可能となります。例えば、年齢入力フィールドで18歳以上を有効とする場合、以下のように同値分割できます。
その上で、各クラスから1つずつ値を選び、テストケースを作成します。この手法は、入力範囲が広い場合に特に有効です。
境界値分析は、同値クラスの入力値の境界付近でエラーが発生しやすいという観察に基づき、境界値とその周辺の値を重点的にテストする手法です。例えば、1から100までの有効範囲がある場合、以下の値をテストします。
この手法は、同値分割法と組み合わせて使用されることが多く、特に数値入力の検証に効果的です。
デシジョンテーブルテストは、複数の入力条件とその組み合わせによる出力動作をデシジョンテーブルという表形式で整理し、網羅的なテストケースを導出する手法です。例えば、ログイン機能で「ユーザー名の有無」と「パスワードの有無」によって異なる動作をする場合、以下のようなテーブルを作成します。
デシジョンテーブルは、ビジネスルールが複雑なシステムのテストに適しています。
組み合わせテストは、複数の入力パラメータの組み合わせを効率的にテストする手法です。特にペアワイズ法は、複数のパラメータの組み合わせによる不具合を効率的に検出するために、要因の値を2つずつ組み合わせたテストケースを作成する手法です。ペアワイズ法を使うことで、テストケースの数を大幅に削減しつつ、効果的なバグ検出が可能です。例えば、ブラウザ、OS、言語の組み合わせをテストする場合、全組み合わせをテストするのは非現実的ですが、ペアワイズ法を用いることで、主要な組み合わせを効率的にカバーできます。
状態遷移テストは、システムが異なる状態を持ち、特定のイベントや入力によって状態が変化する場合に適用する手法です。システムの状態や遷移する条件を「状態遷移図」や「状態遷移表」の形で整理します。例えば、ATMの操作において、「カード挿入」→「暗証番号入力」→「取引選択」→「取引完了」といった状態遷移をテストします。この手法は、状態間の遷移や無効な遷移を検証するのに有効で、特にワークフローやUIのテストに適しています。
原因結果グラフ法は、デシジョンテーブルテストのように条件(原因)と出力結果(効果)の関係テストする技法ですが、原因結果グラフ法の場合、その名の通り、グラフで表現し、論理的な組み合わせを明確にする手法です。複雑な条件の組み合わせを体系的に整理し、効率的なテストケースの設計が可能となります。例えば、フォーム入力において、「氏名が入力されている」「メールアドレスが有効である」「パスワードが一致している」といった条件がすべて満たされた場合にのみ、登録が成功するようなシナリオで有効です。
ユースケーステストは、ユーザーの操作シナリオやビジネスプロセスに基づいてテストケースを設計する手法です。例えば、「オンラインショッピングでAという商品を買いにきた」というケースを想定し、オンラインショッピングサイトでの「商品検索」→「カートに追加」→「購入手続き」→「注文完了」といった一連の操作をテストします。この手法は、実際のユーザーの視点からシステムを検証するのに適しており、システムレベルや受け入れテストで広く使用されます。
クラシフィケーションツリー法は、テスト対象の入力条件や出力条件を「分類(クラシフィケーション)」し、それぞれの値をツリー構造に展開する手法です。クラシフィケーションツリー法は、条件同士の組み合わせを視覚的に整理できるため、複雑な仕様に対しても体系的なテストケース設計が可能です。
ホワイトボックステストは、ソフトウェアの内部構造やロジックに基づいてテストケースを設計する手法であり、コードの品質を定量に評価するために不可欠なテストです。したがってホワイトボックステストは、単体テストなど個別のブログラムの動作を検証するのによく使われるテスト技法です。以下のホワイトボックステストの代表的な技法を紹介します。
制御フローテストは、プログラムの制御構造(例:if文、ループなど)に着目し、実行可能な経路(パス)を網羅的にテストする手法です。
制御フローテストを実施する大まかな手順は以下の通りです。
データフローテストとは、プログラム内の変数のライフサイクル(定義、使用、消滅)に着目し、データの流れに関する不具合を検出する手法です。
データフローテストにより、以下のような不具合を検出できます。
この手法は、制御フローテストでは検出が難しいデータの不整合やロジックエラーを明らかにし、ソフトウェアの信頼性を高めるのに有効です。
以上のように、ホワイトボックステストは、アプリケーションの内部構造に着目し、それらがブログラマーの意図した通りに動作しているかを確認するテスト技法です。
経験ベーステスト技法は、テスト担当者が過去の経験や直感を頼りに、仕様書に書かれていない潜在的なリスクを探索する柔軟なアプローチです。形式的な手順に縛られないため、実際のユーザーの使い方や、運用中に現れがちな問題にも気づきやすいのが特長です。特に、変化の激しい開発現場や、仕様が不完全なプロジェクトでその真価を発揮します。
エラー推測は、テスト担当者が「ここに不具合がありそうだ」と感じるポイントを狙い撃ちする技法です。過去の類似プロジェクトでの不具合や、ソフトウェアの設計上ありがちな弱点を基に、想定外のバグを突き止めます。例えば、ユーザー入力の競合や、エラーハンドリング不足といった場面に注目することで、設計書に載っていないトラブルも検出可能です。
探索的テストは、テスト設計と実行、学習を同時に行うアジャイルなテストアプローチです。仕様書に書かれていない要素や動作の「グレーゾーン」を探りながら、テストの方向性を柔軟に修正します。例えば、新機能のテストで「何が起こるか分からない」ときに、探索的テストを取り入れることで、ユーザー視点での想定外の問題を見つけることができます。アジャイル開発現場では、短いスプリントの中で探索的テストが迅速な品質評価の要として機能しています。
アドホックテストは、事前の計画やドキュメントなしで、その場の思いつきや疑問に基づいて即興的に行うテストです。最も自由度が高い技法で、探索的テストの一部として用いられることもあります。例えば、複雑な画面遷移や、直感的に「ここがおかしいかも」と感じる部分をすぐに確認できるため、網羅性は保証されないものの、偶発的なバグの発見に繋がるケースもあります。
チェックリストベースドテストは、過去の不具合やテスト観点をリスト化し、テスト漏れを防ぐために使われる技法です。例えば「ログイン画面では必ずエラーメッセージを表示するか確認する」「データの保存処理後にエラーが出ないか確認する」など、組織や担当者の知見を活かした項目で構成されます。これにより、担当者による作業のバラツキを抑え、安定した品質検証が可能です。
柔軟で現場適応力に優れた経験ベーステスト技法ですが、担当者のスキルや経験に強く依存するため、網羅性や客観性の確保には工夫が求められます。例えば、探索的テストの結果を記録するチャータ(簡易テストメモ)を残す、チェックリストを継続的に更新するなど、体系的な技法と併用しながら属人化のリスクを抑える必要があります。これにより、見えないリスクを的確に捉えながらも、再現性のある品質保証につなげられます。
ソフトウェアテスト技法の習得は、属人化を防ぎ、再現性のある品質保証を実現する鍵です。まずは基本技法の原理と目的を理解し、網羅性と効率のバランスを意識した学習が重要です。演習問題や資格取得を通じて知識を体系化し、実践力を高めましょう。さらにチーム単位での教育やケース共有を通じ、組織全体の品質力向上を目指すことが、現場での成功につながります。
ソフトウェアテスト技法を現場で活かすには、感覚に頼らず体系的に学ぶことが重要です。まずは同値分割法や境界値分析といった基本的なソフトウェアテスト技法からスタートし、テスト設計の「型」を身につけましょう。次に、デシジョンテーブル、状態遷移、組み合わせテストなど応用的な技法へと進むことで、複雑な仕様にも対応できる設計力が身についていくでしょう。
ソフトウェアテスト技法を実務に活かすためには、概念理解だけでなく、実践的なトレーニングを通じたスキル定着が不可欠です。特にブラックボックステストやホワイトボックステストといった各技法は、対象システムや仕様の特性に応じて柔軟に適用されるべきものであり、手を動かしての演習を通じた判断力の強化が求められます。市販されている演習問題集や練習帳(例:JSTQB対応の実践書籍など)は、テスト条件の洗い出しや網羅性の確認といった設計力を磨くのに有効です。また、実務シナリオを想定した課題に取り組むことで、属人的でない、標準的な設計プロセスの理解が進みます。単なる手法の暗記にとどまらず、「なぜこの技法を選ぶのか」「どのように応用するか」といった設計判断まで含めて訓練することが、現場で通用するテストエンジニアの育成には重要です。
ソフトウェアテスト技法を個人のスキルとして習得するだけでなく、チーム全体で共有・実践していけば、チーム全体でテスト品質と開発効率の両方を向上させていくことが可能になります。特に開発エンジニアも含めて共通の理解を持つことで、仕様レビューやテスト設計の初期段階から品質を意識したコミュニケーションが可能となり、バグの早期発見や工数の削減につながります。JSTQBや社内勉強会、ペアレビューなどを通じて、テスト技法をチーム単位で学ぶ文化を醸成することが望まれます。属人化を避けるためにも、体系的な知識と実践の場を提供することが重要です。また、教育コンテンツを標準化することで、新人育成や技術継承にも役立ちます。
テスト技法支援ツールは、テストケースの設計や管理を効率化するものです。以下に代表的なツールを紹介します。
GIHOZは、ベリサーブ社が提供するクラウド型のテスト技法支援ツールです。デシジョンテーブル、ペアワイズテスト、状態遷移テスト、境界値分析など、複数のテスト技法に対応しており、直感的な操作でテストケースを作成できます。また、生成AIを活用してテストケースをスピーディーに作成する機能も備えています。
QualityForwardは、テストケースの管理やテスト結果の記録・分析を支援するクラウド型のツールです。テストケースの再利用や再テスト機能、差分確認・レビュー機能、バグトラッキングシステム(BTS)との連携機能など、多彩な機能を備えています。
QualityTrackerは、バルテス社が提供するクラウド型のテスト管理ツールです。テスト実施時の進捗管理とテストケースの管理を一元化でき、EVM(Earned Value Management)を採用して正確な進捗管理を実現します。
CATは、SHIFT社が提供するテスト管理ツールで、Excelライクな操作性が特徴です。テストケースの編集や進捗管理、インシデント管理など、テスト工程全体を効率的に管理できます。
ソフトウェアテスト技法とは、限られたリソースで高品質なテストを行うために、「どこを」「どのように」テストすべきかを体系的に導き出す方法論です。例えば、「同値分割法」や「境界値分析」「状態遷移テスト」などは、無駄な重複を避けつつバグの発生しやすい領域を効果的にカバーできます。こうした技法を用いて導出されたテストケースは、高い網羅性と明確な意図を持っており、自動化対象として非常に適しています。
テスト自動化では、テストスクリプトの作成・保守にコストがかかるため、どのテストを自動化すべきかを見極めることが重要です。ここで、技法に基づいて設計されたテストケースを活用すれば、テスト対象の振る舞いを的確にとらえたシナリオを、無駄なく抽出できます。例えば、境界値分析により「エッジケース(バグが出やすい端の値)」に注目した自動テストを構成すれば、少ないケース数でバグ検出率を最大化できます。
ソフトウェアテスト技法は、品質向上・開発効率化・リスク低減の三本柱を支える基盤スキルです。属人性の排除や網羅性の担保といった現場の課題を解決し、再現性と信頼性の高いテストを実現する鍵でもあります。基本的な技法から応用・実践へのステップを体系的に踏むことで、プロジェクトの品質は着実に底上げされます。また、チーム全体で技法を共有・活用することで、品質文化の醸成にもつながります。テストは単なる作業ではなく、製品価値を支える重要な工学的活動です。技法の学びを日々の開発現場に根付かせ、品質エンジニアリングを次のレベルへ引き上げましょう。
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