SMARCとは
SMARC(スマーク)とは、Smart Mobility ARChitectureの略で、組み込み技術の標準化団体SGeT(Standardization Group for Embedded Technologies)が策定した、コンピューターオンモジュール(CoM/SoM)の規格です。省スペースと低消費電力が求められる用途に最適化されており、CPU・メモリ・ストレージ・各種インターフェースを1枚の小型基板に集約しています。
SMARCモジュールは単体では動作せず、用途に応じて設計したキャリアボード(ベースボード)に装着して使用します。難易度の高いプロセッサ周りの設計をモジュールに任せられるため、開発期間とコストを抑えながら、自社製品独自のI/O設計に集中できます。標準化されたフォームファクタとインターフェース仕様により、異なるベンダー間・世代間での互換性が確保され、スケーラブルな設計が可能です。
フォームファクタ(物理サイズ)
SMARCには、用途に応じた2つのサイズが規定されています。
Short(82×50mm):省スペースを最優先する小型機器向け。
Full(82×80mm):より多くのI/Oや機能を搭載する用途向け。
いずれも314ピンのエッジコネクタ(MXM形状)でキャリアボードと接続します。
主なインターフェース
PCIe、USB、Gigabit Ethernet、HDMI/DisplayPort、LVDS、MIPI-DSI(ディスプレイ)、MIPI-CSI(カメラ)など、多様なインターフェースに対応します。カメラ入力や高速ネットワークを必要とする、ビジョン・AI・通信系の用途にも適しています。
対応アーキテクチャ
ARM系プロセッサを中心としつつ、SMARC 2.0以降ではx86アーキテクチャもサポートし、要件に応じてプロセッサを選択できます。低消費電力のARMはバッテリ駆動・長時間稼働の機器に、x86は既存のソフトウェア資産やWindowsアプリの活用に適しています。
SMARC規格のバージョンの変遷
SMARCはこれまでに複数のバージョンがリリースされ、上位バージョンは原則として下位互換性が確保されています。
SMARC 1.0
最初のバージョン。ARMアーキテクチャを中心に、低消費電力・小型のモジュール設計を標準化しました。
SMARC 2.0
ARMに加えx86をサポート。PCIe・USB・HDMI・LVDS・MIPI-DSI・DisplayPort・Gigabit Ethernetなど多様なインターフェースを備え、82×50mm/82×80mmの小型フォームファクタを規定しました。
SMARC 2.1
AI・ロボティクス・エッジコンピューティング向けに機能を拡充。最大4つのMIPI-CSIカメラ入力や2ポートのGigabit Ethernetに対応し、ビジョンアプリケーションや高速通信を強化しました。2.0とのピン互換性を維持しています。
SMARC 2.1.1
2.1のマイナーアップデート。SerDes信号の実装ガイドやUSB Type-C対応の強化(USB 3.2 Gen1/DisplayPort Alt Mode)、ディスプレイインターフェースの拡充、電源シーケンスや高周波信号の設計推奨事項が追加されました。
SMARC 2.2
新たにSoundWireインターフェース(オーディオ)に対応し、PCIe Gen4による高速データ転送を実現。ピン配置・信号記述の改善や不具合修正により、信頼性と設計のしやすさが向上しました。
SMARCのメリット
小型・軽量
82×50mm/82×80mmの超小型サイズで、省スペース設計が可能。モバイル機器やウェアラブルデバイスにも適します。
低消費電力
ARM系プロセッサの採用により、x86比で消費電力を抑制。効率的な電源管理でバッテリ駆動機器の長時間稼働を実現します。
高性能
最新のARM系プロセッサやGPUにより、マルチメディア処理やAI推論にも対応します。
豊富なインターフェース
Ethernet・USB・HDMI・MIPI-CSI/DSI・PCIeなど多彩なI/Oで拡張性が高く、さまざまな周辺機器と接続できます。
長期供給
産業用途向けに、最大で10年以上の長期供給が保証され、製品のライフサイクル管理が容易です。
SMARCの主な用途
SMARCは、省スペース・低消費電力という特性に加え、近年はAIやビジョン処理への対応が強化され、幅広い分野で採用されています。代表的な用途は次のとおりです。
産業用組み込みシステム
工場自動化機器、計測・制御機器、産業用ロボットなど。長期供給と耐環境性を活かし、FA現場での組み込み制御に利用されます。
AI・エッジコンピューティング
エッジAI機器、AIカメラ、画像認識装置など。MIPI-CSIカメラ入力やAI推論性能を活かし、現場でのリアルタイム処理を実現します。
IoT・ゲートウェイ
IoTゲートウェイ、データ収集端末、エッジノードなど。低消費電力と豊富なネットワークI/Oで、現場データの収集・一次処理を担います。
医療機器
ポータブル医療機器、ウェアラブルヘルスモニタ、医療用ゲートウェイなど。小型・低消費電力に加え、長期供給と信頼性が求められる用途に適します。
モバイル・ポータブル機器
ウェアラブルデバイス、ポータブル計測器、ハンドヘルド端末など。バッテリ駆動の小型機器に最適です。
HMI・ディスプレイ機器
操作パネル、デジタルサイネージ、高性能ディスプレイコントローラなど。MIPI-DSIやLVDSなどの表示インターフェースを活かします。